当研究所は、1963年に内分泌研究所として設立され、1994年に生体調節研究所へと改組されました。内分泌・代謝学を中心に、生体を統合的に調節する系の分子機構と、その破綻によって起こる疾患の成因・病態生理の研究を行っています。主なテーマは、生体恒常性を司る細胞内シグナル伝達や細胞内物質輸送等の分子機構、膵β細胞の分泌や分化・再生、生体における代謝制御、糖尿病・肥満症をはじめとする生活習慣病の成因・病態生理、そしてゲノム・エピゲノム研究などです。最近では食事や腸内細菌と肥満との連関、そしてヒト膵臓を対象とした研究なども推進しています。2010年度から内分泌代謝学の共同利用・共同研究拠点に認定されています。
当研究所の代謝疾患医科学分野は、横浜市立大学、ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センター(アメリカ)、アルバータ大学(カナダ)等との共同研究で、脂肪で作られる物質により、体の中でインスリンを作る膵島の膵β(ベータ)細胞を増殖させ、インスリンを増やすことを明らかにしました。
研究グループは、人工的にインスリンが効きにくくなる状態(インスリン抵抗性)を作り出したときに、血液中に膵β細胞の細胞分裂を促す物質が分泌されることを明らかにしました。興味深いことに、インスリンが効きにくい状態では内臓脂肪から血液中に膵β細胞を増やす物質が出ていることも見出しました。さらに、これまで膵β細胞を増殖させるために必要であると考えられていたインスリン受容体を介した経路とは別のメカニズムによって、E2F1やCENP-Aというタンパク質が膵β細胞を増殖させるために重要な役割を果たしていることを発見しました。
今回発見された、脂肪から出る物質により膵β細胞を増殖させインスリンを増やす作用は、ヒトの膵島においても認められました。本研究によって、糖尿病患者さんの体の中で、脂肪を利用して膵β細胞を再生させインスリンを作り出す新しい糖尿病の治療法開発に貢献すると思われます。
本研究成果は、Cell Rep. 2022 Oct 4;41(1):111436.に掲載されました。
当研究所の遺伝生化学分野は、同研究所代謝シグナル解析分野との共同研究で、肥満やそれに伴って起きる糖尿病に対する、新奇治療法につながる知見を見出しました。肥満は、脂肪細胞に脂質が過剰にたまった状態で、これを効率よく分解することができれば、原因に依らない肥満治療法となる可能性があります。私たちは、これまでの研究で、脂肪細胞に高発現するALK7という受容体の機能が喪失したマウスでは、肥満状態の時のみ脂肪分解を促進し、脂肪重量を軽減させることを示してきました。今回、ALK7に対する中和抗体を、遺伝性肥満マウスあるいは高脂肪食を負荷した食餌誘導性肥満マウスに投与したところ、脂肪重量が半減し、肥満に伴う耐糖能、インスリン感受性の低下が改善することがわかりました。また、本抗体の投与により脂肪細胞のALK7の機能を抑制すると、そのリガンド(受容体に特異的に結合して活性化させる物質)である、脂肪組織マクロファージから産生されるGDF3の発現・分泌も低下することがわかり、その分子メカニズムも明らかにしました。本研究によって、肥満や糖尿病を有するヒト患者に対する抗ALK7治療法への応用につながることが期待されます。
本研究成果は、JCI Insight. 2023 Feb 22;8(4):e161229.に掲載されました。
研究内容をわかりやすくまとめた動画を作成してWEB配信をしています。敷居が高いと思われがちな最先端生命科学研究を一般の方にも親しみを持っていただけるよう工夫をしております。
群馬県内の高校を継続的に訪問し高校生を対象にした出前授業を実施しており、普段の授業では得られない科学的知見を解説しています。さらにSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校の生徒を招待して施設、実験見学や研究者のキャリアパスの紹介をし、生命科学研究に携わる若い人材育成にも力を入れております。
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