フロンティア材料研究所は、2016年4月に旧応用セラミックス研究所に金属・機械系教員を新たに入れ、改組して発足いたしました。多様な元素から構成される無機材料を中心とし、金属材料・有機材料などの広範な物質・材料系との融合を通じて、革新的物性・機能を有する材料を創製します。多様な物質・材料など異分野の学理を融合することで革新材料に関する新しい学理を探求し、広範で新しい概念の材料を扱える材料科学を確立するとともに、それら材料の社会実装までをカバーすることで種々の社会問題の解決に寄与します。また、先端無機材料共同研究拠点として、無機材料と建築材料・構造という異分野でありながら深く関連している両分野をカバーする特色ある共同利用・共同研究拠点として認定されています。
マンガン酸化物は多様な結晶構造と酸化状態をもつため、エネルギー貯蔵、磁性、センサー、触媒などに使われる重要な機能性酸化物です。特にナノサイズで構造制御されたマンガン酸化物は、バルクとは異なる特異的機能を発現するため、シンプルで効率的なマンガン酸化物のナノ構造制御手法の開発が切望されています。日本で初めて発見されたトドロカイト型酸化物OMS-1は、大きな6.9×6.9 Åの一次元のトンネル構造をもつ物質であり、イオンや分子の識別に由来した様々な機能応用研究が注目されていますが、従来の多段階プロセスによる合成では表面積が小さいため、応用研究への展開が限られていました。このような研究背景の下、当研究グループは多孔質OMS-1ナノ粒子の合成手法の開発に着手し、多孔質化や微粒子化に必要な特殊な試薬を一切用いることなく、世界トップの表面積をもつOMS-1ナノ粒子触媒の合成に成功しました。また、このナノ粒子触媒を用い、溶媒や合成中間体として有用なカルボニル化合物やスルホキシドへの直接酸化反応を実現しました。今回開発した多孔質OMS-1ナノ粒子触媒は、高付加価値な化成品の合成や大気汚染の原因となる揮発性有機化合物の完全酸化除去など、幅広い触媒反応へ適用できる可能性があります。また、水の電気分解のための電極触媒、スーパーキャパシタ、リチウムイオン電池の電極材料など、触媒以外の広範な応用用途展開も期待されます。
無機材料分野では、一般社団法人 日本ファインセラミックス協会などと協力し、合同講演会、セミナーなどを開催しています。建築・構造分野では、建物の安全(耐震安全性の向上)と居住者の安心(情報の伝達・見える化)を繋ぐ新しい研究領域を開拓し,社会実装を目指しています。2017年度には3大学・14企業でコンソーシアムを設立しました。共同利用・共同研究拠点では、災害等で被災した研究者の支援を行う、2020年の新型コロナ禍では、遠隔講演制度の設置により、関連コミュニティの支援を行っています。
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