ヒトレトロウイルス学共同研究センターは、熊本大学エイズ学研究センターと鹿児島大学難治ウイルス病態制御研究センターを再編・統合し、5部門11専任分野の新センターとして2019年4月1日に設置されました。国立大学の枠を越えた共同研究センターの設置は全国初の試みであり、両大学の資源を有効活用し、ウイルス感染病態の基礎研究に基づいた新たな感染予防・治療法の開発を目指しています。特にコントロールの難しい慢性感染を引き起こすHIV-1/AIDS、HTLV-1/ATL/HAM、HBV/Hepatitis Bに加えて、SARS-CoV-2/COVID-19を主な研究対象としています。また、感染症の制圧には、世界的な研究者・臨床医のレベルアップが必須であることから、感染症に係る人材の育成を推進しています。
令和4年度は、抗ウイルス療法研究分野の教授および准教授が選出されて全ての専任教員選考が終わり、設置以来努力してきたウイルス感染症研究拠点としての研究体制が整いました。また、文部科学省の支援によりBSL3動物モデル実験施設を改修・整備し、HIV・ HTLV-1に加えSARS-CoV-2の動物モデル作成が可能となりました。
研究成果としては、当センターの2名のウイルス研究者が、研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」のメンバーとして参画し、SARS-CoV-2に関する多くのインパクトの高い論文を発表しました(Cell Host Microbe 30:1540-1555, 2022、Cell 185:2103-2115, 2022、Cell 185:3992-4007, 2022、Nature 602:300-306, 2022(図)、Nature 603:700-705, 2022、Nature 603:706-714, 2022)。また、その他のSARS-CoV-2研究として、オミクロン株に対するT細胞の抗原認識の研究(Nat Commun. 13:5440, 2022)、変異株のウイルス学的解析(J Virol. 96:e0116222, 2022)、ワクチン接種で誘導されるメモリーT細胞の研究(Nat Commun. 13:5251, 2022)等を発表しました。HTLV-1研究では、ウイルスゲノムに存在する新たな転写促進部位の発見(Nat Commun. 13:2405, 2022)や、新規治療法の研究(Ann Clin Transl Neurol. 10:237-245, 2022)等を報告しました。HIV-1研究では、IL-32によるHIV-1感染制御(J Immunol. 209:970-978, 2022)、エイズ進行遅延と関連するHLAアリルの研究(J Virol. 96:e0124822, 2022)、中和抗体の効果を高める低分子化合物の研究(J Virol. 97:e0163822, 2023)等を発表しました。
COVID-19、HIV-1、HTLV-1、HBVなどの予防・治療法の社会実装のため、様々な企業と共同研究を行っています。当センターでは、これら研究シーズの社会実装化に向けてトランスレーショナルリサーチ部門を設置し、企業等への橋渡しを行っています。また、国際シンポジウム(第23回熊本エイズセミナー)を開催し、25カ国から約130名が参加して、レトロウイルスや新型コロナウイルスに関する最先端の研究について活発な議論が行われました。
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