真菌医学研究センターは、昭和21年に設立された腐敗研究所を起源とし、平成9年に国内で唯一の病原真菌とそれによる感染症研究に特化した公的研究センターとして発足しました。病原真菌による感染症は、新生児、高齢者や白血病・免疫不全疾患などの免疫抵抗力の弱い患者に起こる日和見感染症や、海外からの高度病原性真菌による輸入感染症などが知られ、超高齢化・国際化が進む近年の日本において大きな社会問題になっています。当センターでは、病原真菌を中心とした病原体研究、それらによる感染症の臨床研究、宿主免疫応答研究などを行うことにより、感染症征圧を目指した研究活動を推進しています。また、共同利用・共同研究拠点「真菌感染症研究拠点」として、国内外の研究機関との共同研究を積極的に行うと共に、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「病原真核微生物」の中核機関として、国内外の関連研究の推進に貢献しています。
Aspergillus fumigatus (A. fumigatus)は、真菌(カビ)の一種で環境中に常在するため、ヒトは日常的に暴露されています。通常、健常人に病気を起こすことは稀であるものの、高齢者やがん患者など免疫機能が低下した患者に対して、生命を脅かす重度の侵襲性感染症を引き起こすことが多く、我が国の医療施設に大きな負担をかけています。しかし、A. fumigatusに対する宿主防御の機構はこれまで不明な部分が多くありました。当センターの西城准教授らの研究グループでは、マウスモデルを用いて、糖鎖を認識する分子群であるC 型レクチン受容体がどの様に真菌を認識し、その後の免疫応答を誘導し、最終的に排除するまでの機構について研究を行っています。
西城准教授とヨシカワ助教らの最新プロジェクトでは、C 型レクチン受容体ファミリー分子のデクチン1 が全身性アスペルギルス症に対する防御機構に不可欠であることを明らかにしました。まず侵襲性感染のマウスモデルを用いて、腎臓における A. fumigatus の排除はナチュラル・キラー細胞に依存していることを見いだし、その機構として、デクチン1がA. fumigatusを認識し、サイトカイン IL-15 の分泌を誘導することでナチュラル・キラー細胞の生存を支持していることを見出しました。また、デクチン1、IL-15、ナチュラル・キラー細胞を介した機構では、過剰な炎症反応を誘発せずに病原体を排除し、臓器の恒常性を維持していることも明らかとなりました。これらの結果から、真菌症に対する新たな治療法が開発されることが期待されます。 本研究の成果は、2023年にオープン アクセス ジャーナル Journal of Innate Immunity(IF: 7.111) に掲載されました。
■センター内にBSL3実験室を有し、高度病原菌や新型コロナウイルスの検査・解析にも対応可能な体制を整備しています。
■「病原真菌講習会」を年1回開催し、全国の医師や研究者に、病原真菌・放線菌の基本的な取り扱いの知識と技術を習得していただいています。
■全国の医療機関から真菌症の診断・治療に関する相談や検査の依頼を受け付け、我が国唯一の真菌症リファレンスセンターとしての役割を担っています。
■「長崎大学熱帯医学研究拠点特定領域共同研究」において、ケニアなどの熱帯地域での病原真菌・放線菌の地域特異性を解析することにより、現地の医療発展への貢献を行っています。
■「感染症研究グローバルネットワークフォーラム」を年1回開催し、国内外の感染症研究者のネットワーク形成を目指した活動を行っています。
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