本研究所は、1982年に発足して以降、生体恒常性の維持に重要な「生体防御」を研究の柱に据え、生命現象の本質や疾患発症のメカニズムに迫る多くの優れた成果を発信して参りました。2016年からは、トランスオミクス医学研究センターをコアに国内の3つの共同利用・共同研究拠点と協力して「トランスオミクス医学研究拠点ネットワーク形成事業」に取り組み、その実践の場として、2018年にシステム免疫学統合研究センターを新設しました。このような実績をさらに発展させるべく、本研究所は2022年に高深度オミクスサイエンスセンターを創設し、ヒト生物学の理解につながる新たな生体防御研究を推進します。加えて本研究所は、2022年から6年間、共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」の認定更新を受けており、引き続き最先端の研究機器やオミクス解析技術を国内外の多くの研究者に開放・提供します。
器官発生再生学分野の鈴木淳史教授らは、gRNAの5’末端にシトシンを付加し、その長さに応じてCRISPR-Cas9のゲノム切断活性を調節可能な方法を見出し、過剰なCas9活性を抑制することでオフターゲットや細胞毒性を最小限にできる新規ゲノム編集プラットフォームを開発した。さらに各活性領域で得られたゲノム編集データをもとに数理モデルを構築し、1塩基置換の精密編集など、様々なゲノム編集の用途について、それぞれの用途にどの程度のCas9活性が最適かなど、その全容と法則性を解き明かすことにも成功した。これにより、多様なゲノム編集実験のそれぞれの目的に応じて最適なCas9活性をシミュレーションすることができるようになり、最適な改変gRNAを用いることで、最も安全で効率的なゲノム編集を実施することが可能になると考えられる。この改変gRNAは、Cas9のみならず、CRISPRa/i (activation/interference)といったエピゲノム編集の活性調節にも適用可能なことから、様々な研究用途や産業応用への発展が期待される。
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