iPS 細胞研究所(CiRA =サイラ)は、平成22 年4 月にiPS 細胞の基礎研究から臨床研究までをシームレスに推進するために設立されました。現在、未来生命科学開拓部門、増殖分化機構研究部門、臨床応用研究部門、基盤技術研究部門、上廣倫理研究部門の5つの研究部門に分かれ、iPS 細胞技術を創薬や再生医療に応用することを目指した研究に取り組んでいます。また、iPS 細胞に関連する倫理的、社会的、法的課題の解決に向けた研究および対処法の実践を進めています。世界最高水準のiPS 細胞研究拠点として機能し、幹細胞分野をはじめとする学理の探求に貢献するとともに、若手研究者の育成にも努めます。
京都大学iPS細胞研究所は、2022年度に設立から13年目を迎えました。12年にわたり所長を務めた山中伸弥教授に代わり、髙橋淳教授が所長に就任いたしました。CiRAは「iPS細胞の医療応用」という使命のもと、以下の4つの目標を掲げ研究所一丸となって研究に取り組んでおります。
< CiRA 2030年までの目標 >
2022年度には、6人の若手研究者が主任研究者に就任し、iPS細胞を使って医療の最先端を切り拓く研究から、細胞の機能を深く探求して分子生物学の常識を書き換えるような研究まで、意欲的に研究に取り組んでいます。
主な研究成果としては、井上治久教授のグループが、国内の病院と連携し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんを対象とした医師主導の第二相治験を2022年4月に開始しました。同年10月には、第一相治験の結果を論文として発表し、ボスチニブの投与により一部の患者さんで病気の進行が停止したことを報告しました。
また、複数の研究グループが新型コロナウイルスに対する研究成果を発表しました。オルガノイド(複数の細胞が集まってできたミニ臓器)を使って、ウイルスの感染メカニズムを調べたり、創薬のプラットフォームを作ったりしました。また、新型コロナウイルスワクチンを接種した人の中で、免疫応答に個人差や年齢差があることを明らかにしました。
iPS細胞は、今後の医療に大きな影響を与え、誰もがその恩恵をうける可能性のある新しい技術です。そのため、より多くの方々に研究活動について理解していただけるように、ニュースレター、シンポジウム、サイエンス・カフェ、ウェブサイト、SNS等、各種媒体を活用したコミュニケーションに努めています。研究者に向けては、国内外から研究者を招聘し、セミナーを開き研究促進のための意見交換を積極的に行なっています。
2022年度には、例えば、11月には一般の方向けに公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団と共催シンポジウム「iPS細胞にできること ~ともにつくる医療の未来~」を、京都大学百周年時計台記念館・オンラインにて開催しました。iPS細胞を医療応用する上でCiRA及びiPS細胞研究財団の果たす役割について紹介しました。
一般の方向けシンポジウムで講演をする髙橋淳所長・教授(左)と山中伸弥教授兼京都大学iPS細胞研究財団理事長(右)
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