研究所・研究センター一覧

東京大学大気海洋研究所

Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo
  • 第2部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
兵藤 晋
Hyodo, Susumu
キーワード
海洋、大気、地球科学、気候変動、海洋生物資源、地球生命圏
住所
〒277-8564
千葉県柏市柏の葉5-1-5

大気海洋研究所は、地球表層を覆う海洋と大気の構造や変動メカニズム、および海洋に生きる生物に関する様々な基礎的研究を推進するとともに、地球環境の変動や生命の進化、海洋生物群集の変動など、人類と生命圏の存続にとって重要な課題の解決につながる研究を展開しています。また、大気海洋科学に係わる全国の研究者のための共同利用・共同研究拠点として、本所(柏キャンパス)と附属国際・地域連携研究センター地域連携研究部門大槌研究拠点(岩手県大槌町︓2022年度に国際沿岸海洋研究センターから改組、以下大槌沿岸センター)において世界最先端の研究施設・機器、充実した研究環境を提供するとともに、海洋研究開発機構の所有する2隻の学術研究船「白鳳丸」と「新青丸」および深海潜水調査船支援母船「よこすか」を用いた共同利用・共同研究を企画・運営し、世界の大気海洋科学を先導することを目指しています。さらには、大学院教育や様々なプロジェクト研究の推進などを通じて、次世代の大気海洋科学を担う若手研究者の育成にも力を入れています。

令和4年度の研究活動内容及び成果


粒子追跡手法から明らかになった北太平洋深層水の行方

南極周辺や北大西洋を起源とする深層水が、北太平洋をどのように流れてどこへ流出しているのかについて、深層水を模した粒子を追跡する計算を行って明らかにした。

ヤドカリの“宿”を作る新種のイソギンチャク!? ―深海の驚くべき共生関係

三重県熊野灘沖などで採集されたヤドカリの「宿」を作るイソギンチャクが、キンカライソギンチャク属の新種であることを突き止めた。

大気の川が引き起こした過去の南極氷床融解

「大気の川(AR: Atmospheric River)」に起因した、過去の西南極氷床の大規模融解のメカニズムをつきとめた。

「微生物ダークマター」を解き明かす ―世界最大の海洋微生物ゲノムカタログ―

膨大なメタゲノムデータから高い品質で個々の微生物のゲノムを解読する手法を新たに開発した。

成長-回遊モデルによるマサバ初期成長への環境影響の解明

マサバの成長―回遊モデルを初めて構築し、2002年から2016年におけるマサバ仔稚魚の成長の再現実験を行った。

人新世の開始時期を決定する正確なマーカーを提唱 ――第五福竜丸事件の核実験の痕跡を 別府湾堆積物と石垣島サンゴの極微量同位体から発見――

現在、議論が行われている人新世について、その開始時期を正確に決めることができる手法を発見した。

約750万年前の地球寒冷化に伴う日本海の海洋循環と化石生物の絶滅

巨大サメ“メガロドン”や絶滅哺乳類デスモスチルスが絶滅した約750万年前に、日本海で多産した放散虫固有種化石が絶滅し、北方侵略種が増加した。この原因として、全球的な寒冷化に伴う太平洋の深層水循環が弱化と冬季モンスーンの強化による日本海の深層水循環の変化と考えられる。750万年前の北太平洋の海洋環境変化は日本海の生態系に大きい影響を与えた可能性がある。

日本海溝の浅部プレート境界断層に沿った間隙水圧の異常 ――2011年東北沖地震の巨大津波を引き起こしたか――

東北沖日本海溝の「浅部プレート境界断層」(=デコルマ)の物理物性を調査した結果、デコルマに沿った間隙水圧が異常に高いことを初めて発見した。

アカエイの淡水進出を可能にする腎機能の解明 ――なぜエイ類にはサメ類よりも汽水域や淡水域に生息する種が多いのか?――

海水と淡水の両環境に適応可能なアカエイが、淡水環境において腎臓での溶質の再吸収を亢進するメカニズムを遺伝子レベルで初めて解析した。

北極海の海氷減少の真相に迫る! ――北極点、海氷直下の熱の動きを徹底的に調査――

ドイツの砕氷船を用いた国際的な北極海の観測プロジェクト「MOSAiC」に参加し、海氷直下の海氷-海洋境界層における熱の変化を徹底的に調査した。調査の結果、現在の北極海が以前よりも、夏に海氷が融けやすく、秋以降に海氷ができやすい状態にあることがわかった。

海水に含まれるDNAから外洋の小型浮魚類の分布を探る

魚類の分布密度が低い外洋域において、海水に含まれるDNAからマイワシなどの小型浮魚の分布を検出可能なことを示した。

北極海の植物プランクトンの新たな大増殖現象を発見 ――温暖化によって北極全体で起こる現象に

北極海には「陸だな」と呼ばれる水深数十mの浅い海域が拡がっている。この陸だな域では、夏に植物プランクトンの大増殖現象(ブルーム)が海の表面ではなく海底付近でも起こることが明らかとなった。

マアジの発育に伴う深い生息層への移行 ――耳石に刻まれた化学成分の変化から――

マアジの耳石に含まれる酸素安定同位体比から、東シナ海におけるマアジの近底層への生息層の移行を明らかにした。

大洋の東西で異なるマイワシの環境応答 ――耳石が示すグローバル生存戦略の鍵――

世界の温帯海域に分布するマイワシのなかで、北太平洋の東側(カリフォルニア海流域)と西側(黒潮―親潮域)に生息するマイワシでは、生後数カ月間の生息水温と、成長速度・代謝速度およびそれらの水温変動に対する応答が大きく異なることを発見した。

サンゴの白化感受性には細菌も関係する? ―共生藻の細胞表面から光保護機能を持つ色素細菌を発見―

サンゴや貝の共生藻(褐虫藻)の細胞表面から光保護機能を持つ色素細菌を発見し、この細菌の存在量を操作することで褐虫藻の強光ストレス耐性を向上することに成功した。

社会との連携


東北復興研究への取り組み

本研究所附属の大槌沿岸センター(岩手県大槌町)は、東日本大震災によって壊滅的な被害を受けましたが、2018年2月に新しい研究実験棟と宿泊棟が竣工しました。文部科学省のプロジェクト研究「東北マリンサイエンス拠点形成事業」の一拠点として、震災後の海洋生態系の変化を総合的に記録し続けると同時に、地域水産業の復興・発展に資する沿岸海洋生態系の理解に向けた学際的フィールド研究拠点としての発展を目指しています。さらに地球の未来を形作る拠点としても機能し、次世代の人材育成等を通じて三陸地域の復興・発展に貢献したいと考え、文理融合型研究教育プロジェクト「海と希望の学校in三陸」を実施しています。

国際的取り組みへの貢献

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)評価報告書の執筆に多数の教員が参加しているほか、ユネスコ政府間海洋学委員会、北太平洋海洋科学機構、Future Earthやアジア研究教育拠点事業などに参画し、国際協力が必須の大気海洋科学に関する諸問題の解決、そして国連海洋科学の10年(2021-2030)の実施に向けて取り組みを進めています。

東京大学海洋アライアンス

東京大学の13の部局、250名以上が参加し、社会から要請される海洋関連課題の解決に向けて、関係する学問分野を統合して新たな学問領域を拓いていく東京大学海洋アライアンスに中核的部局として参加し、海外インターンシップを含む学際的な海洋教育(大学院)、海洋リテラシーの普及やシンクタンク機能等を果たしています。

広く一般へ向けた研究活動の紹介

「さいえんす寿司BAR」や講演会の開催、一般向け書籍・小冊子の刊行など、大気海洋科学に親しみ研究内容について楽しみながら広く知っていただく活動を行っています。7月の海の日前後に大槌沿岸センター(岩手県大槌町)、10月に柏キャンパスで一般公開を行っており、柏キャンパスの一般公開は8,000人以上が来場する一大イベントになっています。

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