地震研究所は、1925年に設立されて以来、地震・火山現象の科学的解明とそれらに起因する災害を軽減するための研究を使命としています。プレートの沈み込み帯に位置する日本は、地震・火山活動が世界的に見ても非常に活発な地域です。地震・火山噴火の解明には、その根源としての地球内部ダイナミクスまでを含めた包括的な理解が必要です。私たちは、固体地球科学の諸課題を対象として、観測・実験・理論的アプローチに基づく先端的研究を行っています。また、全国の大学や研究所、行政機関が参画する「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」(第2次)などの大型研究プロジェクトを企画・推進しています。海外の大学等と共同で大型観測研究を実施し、外国人研究者の長期・短期招聘を行うなど、国際共同研究も進めています。2023年2月6日のトルコ南部で発生した地震に関しては、科研費特別研究促進費により「2023年トルコ南部の地震と災害に関する総合調査」を国内16機関(33名)との協働により進め、トルコの研究者と連携して衛星測位による災害把握、地震災害発生メカニズムの解明、建物やインフラ被害調査、災害対策マネジメントや防災情報の発信などの総合調査を行いました。
2021年8月13日に小笠原諸島・福徳岡ノ場で発生した噴火による一連の火山現象の推移を、衛星観測データ、インフラサウンド(空振)データ、地質・物質データ、噴煙モデリングにもとづき分析しました。2021年噴火による噴煙は海面を突き抜け、水に富む噴煙が高度16 kmに達したことが分かりました。気象衛星ひまわり8号は噴火の早い段階から浮遊軽石が湧き出す様子を捉えています(図の右上)。衛星および父島での観測データから、噴火最盛期の8月13日12時から20時頃まで持続的な傘型噴煙および空振の発生が分かりました(図右上中央の青いバー)。また、この間に火砕密度流の発生が確認されています。噴火最盛期は、図右下に示すような海水とマグマとの相互作用のプロセスが考えられます。マグマの噴出源付近で大量の火砕物が集積したことで、漂流軽石の発生や海が埋め立てられ新島の成長が急速に進んだのです。地形変化と漂流軽石の分布域から、噴出量は0.03–0.1 km3と推定しました。海水と大気に大きな物性コントラストがあることが、噴煙による熱物質の輸送過程に大きな影響を及ぼしたと考えられます。今回の噴火現象の総合分析により、海域火山噴火に伴う多量の軽石噴出という新たなハザードの生成メカニズムが明らかになりました。
地震研究所の研究・教育活動に関する情報をウェブサイト・パンフレット・広報誌(図1)等を通じて紹介しています。パンフレット・広報誌はウェブサイトからもダウンロードできます。重要な調査観測や研究成果については、ウェブサイトに掲載するほか、プレスリリースを行うなど一般の方へ広く伝わるように情報発信しています。また、地震・火山に関する研究を理解してもらうための動画を作成してYouTubeで公開しています(図2)。取材や一般からの問い合わせへの対応も広報アウトリーチ室で行っています。行政機関の地震・火山防災の担当者や報道関係者に研究の動向等を紹介するとともに、報道関係者との意思疎通の促進を図るため、記者との日常的な交流を進めています。令和4年度は広報誌で取り上げた内容を紹介する「懇談の場」を2回と、地震・火山噴火予知研究に携わる大学や研究所、行政機関が参画する協議会の企画による「地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ」を4回開催しました。
研究の最先端やその魅力を伝えるため、公開講義や施設の一般公開、見学会を開催しています。また、自治体や教育機関等からの講演依頼・見学 ・ 研修についても随時対応しています。国内外の学会にブースを出展し、地震研究所の研究活動を研究者や学生の皆さんに紹介しています。令和4年度は、新型コロナ感染拡大に配慮し、一般公開の内容のライブ配信や、360度カメラを用いた施設見学(バーチャル地震研)を実施しました。小中高生や一般を対象とする所内見学・講義は、感染対策をした上で対面でも実施し、延べ741名の参加がありました。
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