本研究所は、1982年に発足して以降、生体恒常性の維持に重要な「生体防御」を研究の柱に据え、生命現象の本質や疾患発症のメカニズムに迫る多くの優れた成果を発信して参りました。2016年からは、トランスオミクス医学研究センターをコアに国内の3つの共同利用・共同研究拠点と協力して「トランスオミクス医学研究拠点ネットワーク形成事業」に取り組み、その実践の場として、2018年にシステム免疫学統合研究センターを新設しました。このような実績をさらに発展させるべく、本研究所は2022年に高深度オミクスサイエンスセンターを創設し、ヒト生物学の理解につながる新たな生体防御研究を推進します。加えて本研究所は、2022年から6年間、共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」の認定更新を受けており、引き続き最先端の研究機器やオミクス解析技術を国内外の多くの研究者に開放・提供します。
分子医科学分野の中山敬一主幹教授らは、造血幹細胞や神経幹細胞の細胞周期停止に重要なp57遺伝子が、腸管上皮においても稀少な細胞集団に特異的に発現していることを発見した。そこでp57の系統追跡マウスを作製し、p57発現細胞の挙動を解析した結果、p57発現細胞は通常の状態では分化細胞の一種として存在するが、組織がダメージを受けると脱分化して幹細胞となり、腸管の再生に重要な役割を果たすことが判明した。さらに再生途中の腸管上皮を1細胞RNA-seq法によって解析したところ、p57発現細胞は「胎児返り」と「胃上皮様変化」という細胞アイデンティティの大規模な再構築(=時空間リプログラミング)を経て、幹細胞の状態へと逆戻りしていることが明らかとなった。このような変化は、臨床的にはがんや炎症などの病態でしばしば認められるが、これらは正常の組織に本来備わっている再生システムが、病態下で利用されたり誤作動した結果であることを示唆しており、実際に腸管腫瘍でも時空間リプログラミングが起こっていることが明らかとなった。
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