昭和37年に「原爆被爆者の後障害の治療並びに発症予防、及び放射線の人体への影響に関する総合的基礎研究」を目的に設置され、1990年代からチョルノービリ・カザフスタン、2011年からは福島へも活動の場を広げ、平成25年には長崎大学附置研へと改組しました。ミッションを「国内外の大学・研究機関との連携の下、放射線健康リスク管理学を中心とした被ばく医療学を推進し、人類の安全・安心を担う専門家を輩出する」と再定義し、幅広い放射線の影響と障害発生機序解明の研究を展開、被ばく者の国際的調査や医療協力も推進しています。平成28年度からは広島大学原爆放射線医科学研究所、福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センターとともに拠点ネットワーク「放射線災害・医科学研究拠点」として共同利用・共同研究拠点に認定され、令和4年度から6年間、第2期拠点事業が開始しました。
原発事故後の放射性ヨウ素の摂取による内部被ばくは甲状腺癌のリスク要因で、その低減のためのαCDの効果を、長崎大学、東京大学、熊本大学、信州大学の共同研究として行いました。小動物イメージングを用いた動物実験の結果から、αCDの経口摂取が甲状腺への放射性ヨウ素取り込みを抑制することが証明されました。αCDは食品添加物として利用されており、原発事故後の安全な放射線防護の手法として期待されます。
放射線被ばくに関連する甲状腺癌についての依頼総説が、米国内分泌学会のEndocrine Reviews誌に掲載されました。放射線治療や被爆者甲状腺癌、チョルノービリ・福島原発事故後に増多した若年者甲状腺癌について、臨床病理、疫学から分子腫瘍学的内容まで網羅した総説となっています。
福島原発事故後、いち早く現場に入り、緊急被ばく医療支援、放射線リスクコミュニケーションに努めてきました。現在の復興期では、福島県立医科大学と放射線教育・研究協力を継続しています。全村避難から帰村宣言をした川内村に拠点を置き、きめ細かな対応で帰村を支援すると共に、富岡町、大熊町、双葉町でも拠点を置いて復興支援を続けています。
「放射線を正しく怖がる」ことは大切で、住民にきめ細やかな対応をする被ばく医療学を推進するため、社会医学から基礎研究まで広範な研究分野から情報を発信しています。また、福島県立医科大学とともに災害・被ばく医療科学共同専攻大学院を立ちあげ、人材育成に取り組むとともに、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科では博士課程放射線医療科学専攻と先進予防医学共同専攻を担当しています。
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