ヒトレトロウイルス学共同研究センターは、熊本大学エイズ学研究センターと鹿児島大学難治ウイルス病態制御研究センターを再編・統合し、5部門11分野の新組織として2019年4月に設置されました。両大学の人的・物的資源を有効活用し、ウイルス感染病態の基礎研究に基づいた新たな感染予防・治療法の開発を目指しています。特にヒトゲノムに組み込まれ、体内からの排除が困難なレトロウイルスを主な研究対象としつつ、パンデミック対応としてSARS-CoV-2/COVID-19の研究を進めています。また、感染症の制圧には世界的な視野と専門人材が必須なことから、アジア・アフリカ・イギリス・アメリカ等の研究機関と連携しながら次世代の研究者・医療人材の育成を推進しています。
本共同研究センターの主要な研究対象であるヒトレトロウイルスに関する研究では、HIVエンベロープに対する抗イディオタイプ抗体の解析(Immunology 2024)、HIV潜伏感染リザーバーの制御を可能とする薬剤開発に向けた研究(Int J Mol Sci 2024)に加えて、サブサハラアフリカ地域でのインテグラーゼ阻害剤導入の効果(PLoS ONE 2024)を報告しました。HTLV-1の研究では、感染性の強いHTLV-1を誘導するのに必要な新規宿主因子の同定(PLoS Pathog 2025)、HLA-A24がHAMの発症リスクであること(Int J Mol Sci 2025)、ATLと腸内細菌の関連性(Heliyon 2024)、潜伏感染を指向する新たなメカニズムの発見(Nature Microbiol 2025)を報告しました。COVID-19についてはパンデミックの終息が宣言されましたが、引き続きコロナウイルスに関する研究を継続しています。具体的には、SARS-CoV-2変異体の新たな検出システムの開発(Commun Med 2024)、サブサハラアフリカ地域の医療従事者における季節性コロナウイルスや新型コロナウイルスに対する交差中和抗体応答の解析(Sci Rep 2025)に加えて、研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」の研究活動として多くの成果を報告しました(RSC Appl Interfaces 2024; Front Virol 2024; Microbiol Immunol 2024; Viruses 2024; Lancet Infect Dis 2024)。また、C型肝炎ウイルスのレプリコンを開発し(Sci Rep 2024)、治療薬候補の評価・開発を行っています。
レトロウイルス関連の疾患に関する市民講座「教えて!ATLとHAMのこと」を開催して我々の研究活動のアウトリーチを図るとともに、中・高校生を対象にした職場体験『未来を拓くキャリア教育推進事業』(鹿児島キャンパス)およびオープンラボを通じて大学生・高校生の参加者に研究紹介と細胞培養を体験できるイベント(熊本キャンパス)を実施しました。また、25年に渡って継続している第25回熊本エイズセミナーを開催し、海外招へい者を含む100名を超える参加者と国内外の最先端研究を議論するとともに、大学院生や若手研究者に研究発表を促す場を提供しました。加えて、THEアフリカ地域5位のムヒンビリ健康科学大学(タンザニア)において共同研究セミナーを実施し、共同研究の推進と人材交流を通じたキャパシティビルディングの機会を実践することで、多くの優秀な留学生の獲得につなげています。
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