フロンティア材料研究所は、「多様な元素から構成される無機材料を中心として、金属・有機・生体材料などの広範な物質・材料系との融合を通して革新的な物性・機能を有する材料を創製し、これらの材料に関する新しい学理を探求し、人類と社会の諸問題の解決に貢献する」ことをミッションとしています。設立当初は、無機材料・建築構造分野が中心でしたが、現在では金属・有機・生体材料分野を含み、これらを融合した広範な学問分野をカバーし、基礎研究から実用化までをも網羅する物質・材料を扱う拠点として発展してきました。フロンティア材料研究所は、文部科学省国立大学共同利用・共同研究拠点「先端無機材料共同研究拠点」に単独拠点として2009年に認定され、以来、国内外の無機材料・建築構造関連分野の研究者コミュニティのハブ拠点として、ナノメータサイズの原子・分子・デバイスからキロメータサイズの建造物にわたる12桁サイズの異なるそれぞれの先端無機材料において、新たな価値を生み出す研究を推進し、次世代の人材を育成しています。
材料科学分野では、物質の構成元素や原子配列の特徴に着目して物質をさまざまな物質群に分類することが頻繁に行われてきました。例えば金属と酸素の化合物であるシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)は酸化物という物質群にまとめられ、窒化物や硫化物などと区別して取り扱われます。また価電子構造に基づいた分類(II-VI族半導体やIII-V族半導体等)や、結晶構造に基づいた分類(岩塩型構造やペロブスカイト型構造等)が用いられることもあります。こうした分類法は材料設計においてどのような元素や結晶構造を用いるべきか議論する際に重要ですが、想定する物性や材料用途に応じて適切なものが異なるため、従来は研究者が経験的・理論的な考察に基づいて適切な分類法や有望物質群を見出してきました。そこで本研究では機械学習により、設定した物性と物質の構成元素・原子配列に基づいて自動的に物質を分類する手法を開発しました。
図(a)は1301種類の酸化物の電子系誘電率(誘電率の電子分極成分)のデータに対して提案手法を適用して分類した20の物質群のバンドギャップと電子系誘電率を示した図です。それぞれの物質群で確かに電子系誘電率の値が類似していることが分かり、また光学材料・素子等への応用上重要な比較的広いバンドギャップを持ちながら大きな電子系誘電率を持つ有望物質群も見出しました。この物質群に対して図(b)に示すように八面体型配位構造が含まれるかどうかの指標に着目して分布を比較すると、全データに対して明らかに高い値を持つ傾向が見出されました。このような解析から、この物質群の分類基準は簡略化して言えば「八面体配位した遷移金属元素が結晶構造に含まれること」であることが分かりました。実際、図(c)に示すように、この物質群はペロブスカイト型構造やその類似構造を多く含んでおり、確かに「八面体配位した遷移金属元素」を有していることが確認されました。本手法は、従来と異なる視点での物質・材料の分類や物理・化学的傾向の理解、さらには新たな材料設計指針の構築に貢献することが期待できます。
無機材料分野では、一般社団法人 日本ファインセラミックス協会などと協力し、合同講演会、セミナーなどを開催しています。建築・構造分野では、建物の安全(耐震安全性の向上)と居住者の安心(情報の伝達・見える化)を繋ぐ新しい研究領域を開拓し,社会実装を目指しています。2017年度には3大学・14企業でコンソーシアムを設立しました。共同利用・共同研究拠点では、災害等で被災した研究者の支援を行うと共に、関連コミュニティの支援を行っています。
北海道大学
帯広畜産大学
東北大学
弘前大学
筑波大学
群馬大学
千葉大学
東京大学
東京外国語大学
東京科学大学
一橋大学
新潟大学
富山大学
金沢大学
信州大学
静岡大学
名古屋大学
京都大学
大阪大学
神戸大学
鳥取大学
岡山大学
広島大学
徳島大学
愛媛大学
高知大学
九州大学
佐賀大学
長崎大学
熊本大学
琉球大学