フロンティア材料研究所は、2016年4月に旧応用セラミックス研究所に金属・機械系教員を新たに入れ、改組して発足いたしました。多様な元素から構成される無機材料を中心とし、金属材料・有機材料などの広範な物質・材料系との融合を通じて、革新的物性・機能を有する材料を創製します。多様な物質・材料など異分野の学理を融合することで革新材料に関する新しい学理を探求し、広範で新しい概念の材料を扱える材料科学を確立するとともに、それら材料の社会実装までをカバーすることで種々の社会問題の解決に寄与します。また、先端無機材料共同研究拠点として、無機材料と建築材料・構造という異分野でありながら深く関連している両分野をカバーする特色ある共同利用・共同研究拠点として認定されています。
有機ELはテレビやスマートフォンディスプレイなどで実用化されている一方で、駆動電圧が高く消費電力が大きいという問題を抱えています。特に赤、緑、青の光の三原色の中で最もエネルギーが大きな青色の発光を得るのが一番難しく、通常は4 V程度の電圧を印加する必要があります。当研究グループは2種類の有機分子の界面でアップコンバージョンという過程を経る独自の発光原理を用いて、超低電圧で光る青色有機ELの開発に成功しました。開発した有機ELは、462 nmの青色発光が1.26 Vから認められ、1.97 Vでディスプレイ程度の発光輝度に到達しました。写真のように乾電池1本(1.5 V)をつなぐだけで、青色の発光が得られます。このような超低電圧での青色発光は2014年ノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードでも不可能なため、有機・無機材料、双方を含めても世界最小電圧で光る青色発光素子と言えます。光の三原色の中でディスプレイの消費電力に占める割合が最も大きい青色の有機ELの駆動電圧を大幅に低減できる新技術を発明したことは、テレビやスマートフォンなど有機ELを使ったディスプレイ機器の消費電力を削減する上での大きな一歩となります。
無機材料分野では、一般社団法人 日本ファインセラミックス協会などと協力し、合同講演会、セミナーなどを開催しています。建築・構造分野では、建物の安全(耐震安全性の向上)と居住者の安心(情報の伝達・見える化)を繋ぐ新しい研究領域を開拓し,社会実装を目指しています。2017年度には3大学・14企業でコンソーシアムを設立しました。共同利用・共同研究拠点では、災害等で被災した研究者の支援を行う、2020年の新型コロナ禍では、遠隔講演制度の設置により、関連コミュニティの支援を行っています。
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