素粒子物理国際研究センターは、初代施設長・小柴昌俊博士(2002年ノーベル物理学賞)が1974年に設立した研究組織で、以来50年にわたって日本の素粒子物理学研究の中心拠点を形成し、世界最先端の加速器施設における国際共同実験を主導してきました。具体的には、欧州合同原子核研究機構(CERN)における世界最高エネルギーの陽子・陽子衝突型加速器LHCを用いた国際共同実験ATLASを遂行し、2012年のヒッグス粒子発見に大きく貢献しました。現在は素粒子の標準理論を超えた新たな事象の発見を目指すとともに、将来の高輝度LHCプロジェクトに資する検出器のアップグレード開発を進めています。一方、スイス・ポールシェラー研究所(PSI)では世界最高強度のミュー粒子ビームと新しい素粒子測定技術を用いて、大統一理論とニュートリノ質量の謎に挑むMEG II 実験を実施しています。更に、先端戦略分野の量子AIテクノロジー研究部門では、ソフトとハードの両面で研究を推進するとともに、量子ネイティブ人材の育成も積極的に行っています。
2024年11月30日、東京大学本郷キャンパスにてセンター創立50周年を祝う記念式典、シンポジウム、交流レセプションが開催され、歴代施設長ゆかりの関係者や研究者など約150名が参加しました。記念式典では、来賓者の祝辞や、小林富雄 東京大学名誉教授による50年の研究の歩みとヒッグス粒子発見などの回顧スピーチが行われました。記念シンポジウムでは、海外からのゲスト研究者や卒業生による思い出深いトークや、若手研究者が未来ビジョンを語るパネルディスカッションが行われました。
宇宙の森羅万象の基礎となる法則を解明すべく、次の50年も素粒子物理学研究に邁進してまいります。
CERNで2022年7月に始まったLHC第3期運転(Run3)は、2026年7月まで続きます。Run3の3年目には過去最大となる約118fb⁻¹の陽子衝突データを取得し、Run3全体で約183fb⁻¹に達しました。これは前回のRun2(2015〜2018年)の総データ量を上回っており、ヒッグス対生成や電弱相互作用を介した超対称性粒子の探索など、未知の新粒子・新現象に迫る物理解析が進められています。
また、2030年稼働予定の高輝度LHC(HL-LHC)は、ルミノシティ(衝突頻度)が大幅に増強される計画で、より厳しい実験環境下で高精度なデータ取得が求められます。そのため、検出器の高性能化や革新的な計算機技術の導入といった、次世代の実験を支える研究開発も進行中です。
日本では、ATLAS実験の計算機資源として東京大学に配備された地域解析センターが、世界中に分散するWLCG(Worldwide LHC Computing Grid)の一翼を担うと共に、国内の研究者に向けて優先利用できる計算資源を提供しています。年間を通じて安定稼働を維持し、稼働率99.1%、運転効率99.9%という高い実績をあげています。
MEG II実験は、レプトンフレーバーを破るミューオン稀崩壊μ→eγ を世界最高感度で探索する国際共同研究です。2021~2022年に取得したデータを用いて、MEG実験(2008~2021年)を大きく上回る世界最高の感度でμ→eγ の探索を行い、崩壊の発生頻度に厳しい制限(7兆回に1回の頻度)を与えることができました。
MEG II 実験は2026 年まで実施し、最終的にMEG 実験の約10 倍の探索感度(17 兆に1回の頻度)を実現する予定です。ミューイーガンマ崩壊の探索・測定を通して、素粒子の大統一とニュートリノ質量の起源について研究を進めていきます。
素粒子物理への応用を目標に、量子コンピュータの量子人工知能・量子シミュレーションへの応用、制御用ミドルウェアの開発、超伝導量子ビット技術の高度化と暗黒物質探索への応用研究を進めました。東京大学が2023年5月に締結したシカゴ大学、IBM及びGoogleとのパートナーシップと、2024年1月に締結したシカゴ大学、ソウル大学校とのパートナーシップをもとに、世界をリードする共同研究体制の構築を進めています。また、JST先端国際共同研究推進事業/TOPチームのためのASPIRE(量子分野)による、若手研究者・大学院生の相互的な派遣・受入を強化し、国際頭脳循環を加速しています。
ポジトロニウムは、その単純な構造から未知の物理現象を探る鍵として注目されていますが、絶対零度近くまで冷やすのが困難でした。今回、寿命が非常に短いポジトロニウムを、急速に波長が変化するパルスレーザーで1ケルビンまで冷却することに世界で初めて成功しました。これにより、反物質の精密測定や基礎理論の検証など、物理学の新たな展開が期待されます。この成果はPhysics World誌の2024年Top 10 Breakthroughsに選ばれました。
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