新潟大学脳研究所は、「脳及び脳疾患に関する学理及びその応用の研究を行うこと」を目的として設置された脳科学に関する唯一の国立大学附置研究所です。超高磁場磁気共鳴装置等を用いてヒトの高次脳機能を探る「統合脳機能研究センター」と、脳疾患リソース(脳標本・モデル動物・遺伝子データベース)を管理・研究する「生命科学リソース研究センター」が附属施設として設置されており、世界有数の膨大な脳疾患標本を所有しています。本研究所は、脳神経疾患を対象とする脳神経外科、脳神経内科の臨床2科を有することでもユニークな存在です。これらの特色を生かし、脳科学の基礎部門と臨床部門が有機的に融合した研究所として、多くの先駆的な業績を挙げています。
脳研究所では、脳機能の理解と脳疾患の克服を目指し、臨床、基礎両部門の連携のもと研究が進められています。筋萎縮性側索硬化症 (ALS)は、運動の機能を司るニューロンが進行性に変性し、体を動かすことや呼吸が困難となる難病です。本研究所では長年、ALSの臨床、病理、基礎研究を進めてきましたが、身体の局所から始まる運動障害がなぜ全身へと広がるのか、病態が進行してしまう機序は不明のままでした。本年度、臨床-基礎分野の合同研究チームは、ALSの病態が運動を司る神経回路の局所から進行していく機序を見出し、論文発表をしました(Acta Neuropathol 146:611-29, 2023)。特に、原因タンパク質の1つとされるTDP-43が、神経回路の局所に蓄積する新たなマウスモデルを開発することで、大脳皮質や脊髄の運動ニューロンから、神経回路を伝って病態が実際に進んでいくことを明らかにしました。この研究をもとに、病態の進行を抑止する方法の開発を目指していきます。
■新潟神経学脳研セミナー
共同研究拠点国際シンポジウムの開催に併せて、神経科学分野において国内外で活躍中の若手研究者にスポットを当て、「新潟神経学脳研セミナー」を開催しています。特定のテーマのもと、所内外の専門研究者による講演と討論から、最先端の高度な知識を学ぶことができます。
■共同研究拠点国際シンポジウム
毎年、わが国における脳神経疾患の病態解明と治療法開発、ヒトの高次脳機能の理解を指向する研究の発展を期して、著明な外国人講師を招いた国際シンポジウムを実施しています。また、ポスター発表の場を併設し、全国若手研究者の成果発表、外国人講師を含む参加者との討論の機会としています。
■企業との共同研究・寄附研究部門の開設
世界的に見ても有数の脳病理標本資源を活用し、多くの製薬企業との創薬に向けた共同研究を行っています。また、企業からの寄附金により脳神経疾患に関する先端的な治療法の調査・研究に向けた寄附研究部門を開設しました。
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