地球の中心部に至る超高圧と高温条件を実験室に再現し、また多様な物性測定法や放射光・中性子などの量子ビームを組み合わせることにより、地球深部物質の構造と物性、更にそのダイナミクスや進化の解明を目指しています。実験が困難な圧力温度領域においては、第一原理計算を用いた数値シミュレーションを行うとともに、得られた物性パラメーターを用いた流体力学計算に基づき、より現実的な地球深部や惑星・スーパーアースの内部の動きも探っています。一方で、超高圧技術を生かした新物質の合成にも取り組んでおり、世界最硬「ヒメダイヤ」(ナノ多結晶ダイヤモンド)の合成はその一例です。これらの高度な技術や先端的な研究及び人材育成の成果を基に、本センターは平成25年に共同利用・共同研究拠点化(先進超高圧科学研究拠点:PRIUS)されています。また令和6年4月にセンター長が交代となりました。新たな体制でさらなる発展に取り組みます。
令和5年度は、昨年度に引き続き「動的地球科学」・「惑星深部科学」・「超高圧材料科学」をキーワードとした先端研究を重点的に進めました。この結果多くの高いインパクトの研究成果が得られています。「動的地球科学」に関しては、地球形成初期に進行し、酸素を主体とした現在の大気を生み出す原因となったと考えられる大酸化イベントを提案しました(Nat. Geosci.誌)。「惑星深部科学」に関しては、月のマントル底部に存在することが観測されている地震波速度異常の起源について発表しました(Earth Planet. Sci. Lett.誌)。一方、「超高圧材料科学」に関しては、学際新部門として本センターに超高圧科学部門を新設するとともに、研究支援を行う先端研究高度支援室にシニア・リサーチ・アドミニストレーター(SURA)とシニア・ラボマネージャー(SLM)を新たに配置しました。成果についても、非晶質物質の圧力誘起構造相転移に関する研究がNat. Commun.誌に発表されています。その他の著書として、アメリカ地球物理連合のAGU Monograph Seriesとして“Core-Mantle Co-Evolution: An Interdisciplinary Approach”を、本センター教員が編集委員を務め出版しました。また、本センター教員が中心となり、超高圧の科学と技術に関する国際会議の松山開催を誘致し、政府観光局の「国際会議誘致賞」を受賞しました。
共同利用・共同研究拠点に認定されている本センターでは、上記の3つの重点課題に取り組むとともに、それぞれの課題に関連した研究コミュニティーへの貢献も行っています。「動的地球科学」に関連しては、放射光施設SPring-8に新しく導入した高圧変形装置を共同利用に供した研究を進めています。また、「惑星深部科学」に関しては、全国の研究者を組織した惑星深部科学研究会を立ち上げて、定期的な研究会を行っています。更に「超高圧材料科学」の推進においては、企業との連携も重視して複数の企業との共同研究や、超高圧実験技術の指導などを行っています。また、日本地球惑星科学連合大会において、センターの研究室や研究内容の動画による紹介をVRシステムを用いて行うなど、アフターコロナへの移行に伴いアウトリーチ活動も積極的に行いました。更に研究成果のプレスリリース(6件)や、広く写真・動画等を公募したイメージコンテストの開催などを通じて、社会との連携活動を推進しました。令和5年度には、電界放出型透過電子顕微鏡(FE-TEM)やクラスター型並列計算機の高度化を行い、共同利用に供しています。
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