研究所・研究センター一覧

大分大学グローカル感染症研究センター

Research Center for GLOBAL and LOCAL Infectious Diseases, Oita University
  • 第2部会

研究所・センターの概要


センター長
西園 晃
Nishizono, Akira
キーワード
感染症、消化器感染症、ピロリ菌、人獣共通感染症、One Health
住所
〒879-5593
大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1

グローカル感染症研究センターは、複雑かつ困難である感染症克服という課題に対し、解決のための新たなビジョンを提示し、その実現を目指しています。当センターは、「インバウンド・アウトバウンド医学」「ワンヘルス」「感染症病態」「ゲノムワイド感染症」の4つの研究部門を有し、ウイルス学、細菌学など微生物感染による病態基盤の解明や、それらのゲノム情報解析やそこから得られる知見に基づいた感染症病態の包括的解明、本学の強みである創薬(予防・治療薬開発・治験)も含めた基礎研究から臨床までの一連の領域をシームレスに連携させ、日本国内のローカルな感染症からグローバルな感染症までを見据えた総合的な感染症研究を実施しています。
また、教育面では大分大学医学系研究科や、大分県とも連携し、感染症教育・人材育成を進めています。

令和6年度の研究活動内容及び成果


センターの当面の活動目標に関して、これまでに本センターで実施してきた病原体や宿主に着目した本学の感染症研究での強み・特色となる部分を核とし、特に臨床への実装を見据えた創薬研究・前臨床試験、消化器内視鏡技術の共同利活用も念頭に置いて、「感染症×環境等」(生活・生存環境や人種、食習慣、地域性、自然災害との関係等)という新たな視点により多層的に感染症研究を展開し、「総合知」に基づく多(他)領域融合型研究を推進することを定めました。
この目標達成のために、これまでに培ってきた海外フィールド、バイオリソース、創薬研究・前臨床試験、消化器内視鏡技術のノウハウを生かし、「消化器系感染症病態研究」「ワンヘルス研究」「行政との感染症研究連携」の3つの柱を立て、多(他)領域融合型研究を推進する新たな感染症研究のプラットフォームを構築します。

「消化器系感染症病態研究」
(ヘリコバクターピロリ研究)

令和6年10月16日に国際学術誌『Nature』(インパクトファクター50.5)に掲載された「Helicobacter pylori の古代生態系」というタイトルの研究で、本学環境・予防医学講座、グローカル感染症研究センターの山岡生教授、上海免疫感染研究所(SIII)のダニエル・ファルシュ教授、スウェーデンのヨーテボリ大学のカイサ・ソレル教授が、人間とその胃の細菌との長い歴史的関係について新たに詳細を明らかにしました。本学の教員が、責任著者としてNature本誌に掲載されるのは、初めてです。
本研究では、世界中から収集した約7,000のピロリ菌を含むヘリコバクター属のゲノムを使用して、ピロリ菌が世界に拡散していく状況を調査しました。その中で、「ハーディ生態系種」と名付けられた非常に異なるピロリ菌の変種を発見し、この種は何十万年も前に発生し、我々と共に世界中に広がったと提唱しています。このピロリ菌は、主に肉や魚を食べる人々(肉食の人々)の胃に特化して生息していると考えられています。つまり、我々の胃の中にいる細菌の遺伝的多様性は、祖先が何を食べていたかについての情報を有しています。
今回の発見は、胃がんや胃潰瘍など、胃の病気の原因をさらに詳しく理解し、それに基づく新しい治療法や予防策の開発に貢献することが期待されます。

「ワンヘルス研究」

本学医学部医学科微生物学講座・グローカル感染症研究センターの西園晃教授と、同センター客員教授であり長崎大学熱帯医学研究所ケニアプロジェクト拠点の齊藤信夫准教授らの研究グループが、フィリピンでの3年間の前向き患者登録研究から得られた結果を国際学術誌「Frontiers in Microbiology」(インパクトファクター5.64)に発表しました。
本研究により、これまで不明であったヒトへの狂犬病感染の原因動物が、成犬だけではなく注意が薄れがちな子犬もその多くを占めることが示され、研究グループは全世界での子犬へのワクチン接種レジメの見直しを強く提唱しました。この成果は、狂犬病予防の方針や、動物咬傷への意識を大きく変えることに役立つものであり、今後の狂犬病予防に大きなインパクトを与える可能性があります。
本研究は、独立行政法人国際協力機構(JICA)と日本医療研究開発機構(AMED)が連携して実施する地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)(課題名:フィリピンにおける狂犬病排除に向けたワンヘルス・アプローチ予防・治療ネットワークモデル構築)で行われました。令和7年からはJICAが実施するSATREPS後継プロジェクトが開始予定です。

社会との連携


「住民コホートに基づく病原微生物や腸内細菌などの網羅的解析から、感染誘起Altered Selfによる認知症や未知の神経・精神疾患の病態解明」

神経変性疾患やがん、自己免疫性疾患などのいわゆる難病の中には、ウイルスや細菌などの感染がきっかけとなり、変容した自己に対して様々な病態が形成されることが知られています。
本センターでは一般住民コホートや症候コホートから関連が疑われる病原体(ウイルス、細菌)を探索し、イメージング機器やPET-CTを活用することで、難病と感染病態との関りに光を当てる研究プラットフォームを構築し、一気通貫的に創薬研究に繋げ国内外からの研究者が集う場とすることを、本センターの新たな研究の柱としています。

研究所・研究センター一覧

Links

文部科学省日本学術会議国立大学共同利用・共同研究拠点協議会janulogo300-80