北極圏とその周辺域(北極域と呼びます)は、地球温暖化の影響をもっとも顕著に受ける地域の一つと言われています。事実、過去35年間で夏季の海氷面積が3分の2程度に減少する海氷後退が観察されています。こういった現象は、北極域の気候や生態系に影響を及ぼすだけではなく、水や大気の循環を通じて地球規模の変異を起こす可能性があります。一方で、資源開発の活発化や北極海の航路としての活用など、北極域の環境変動は、新たな利権を生み出す側面も持っています。したがって、北極域は、環境問題にとどまらず、政治や経済面での数多くの問題に直面している地域と言えます。
センターのビジョンは、北極域の持続可能な開発・利用・保全の推進に寄与することで、次の3つのミッションを掲げています。
①北大の特色を生かした北極域のフィールド研究の推進と国際ネットワークの拡大
②異分野連携による超学際的北極域研究の創出
③社会・産業構造変革を創造するための産学官プラットフォームの構築
世界最北の先住民集落、グリーンランド・シオラパルクはヒメウミスズメの最大の繁殖地として知られており、毎年夏になると約6,000万羽のヒメウミスズメがこの地域にやってきます。これまで、一日中太陽が沈まない白夜の環境において、彼らがどのような生活リズムを持っているのか、その生態はあまり分かっていませんでした。北海道大学北極域研究センターはオーフス大学(デンマーク)と共同で、彼らの繁殖地に長期間マイクを設置し、録音された鳴き声や羽ばたき音を解析しました。
本研究の結果、繁殖地内で録音された鳴き声や羽ばたき音など、ヒメウミスズメが発する全ての音が、日中、特に14:00から16:00に最も弱くなり、深夜2:30から3:30の時間帯に最大になるというサイクルが確認されました。この音の周期は、彼らの1日の行動パターンをよく反映しており、ヒメウミスズメは白夜であっても概日リズムに基づく生活パターンを持っていることが録音データから示されました。本研究は、日照時間に変化がない環境下での鳥類の行動を理解する上で重要な知見を提供したと同時に、遠隔地やアクセス困難な地域での野生動物の行動観察において音響モニタリングが有用であることを示しました。
北極域研究センターでは、寒冷な気候や人口の少なさなどの北極域・北方圏特有の観点からグリーントランスフォーメーション(GX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)にアプローチしています。その一環として「GXとDX at North・北方圏におけるGXとDX」イベントを2023年11月20日~22日に札幌で開催し、日本、フィンランド、デンマークから100名を超える参加者が集まりました。本イベントでは基調講演で北極海を横断する光ファイバー・ケーブル・プロジェクト、グリーン・トランスフォーメーションが北極圏の先住民族に与える人権への影響等について報告が行われました。さらに北方地域における再生可能エネルギー生産とスマートエネルギーソリューション、水素、エネルギー貯蔵、二酸化炭素回収・貯留に関する新たな取組み、北海道と北欧諸国におけるスマート農業と林業、環境的に持続可能でエネルギー効率の高いITインフラ、スマートでエネルギー効率の高い都市と建物に関してプレゼンテーションとディスカッションが行われました。
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