研究所・研究センター一覧

北海道大学電子科学研究所

Research Institute for Electronic Science, Hokkaido University
  • 第1部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
太田 裕道
Ohta, Hiromichi
キーワード
光・物質・生命・数理に跨る複合領域科学、物質科学、光科学、生命科学、数学・数理科学
住所
〒001-0020
北海道札幌市北区北20条西10丁目
新たな学際領域の開拓を目指しています

電子科学研究所(電子研)は「光」「物質」「生命」の3つの研究部門に加え、「附属グリーンナノテクノロジー研究センター」および「附属社会創造数学研究センター」からなる研究体制のもと、積極的な異分野融合により「新たな学際領域の開拓」を目指しています。2010年度からは、東北大多元研、東工大(現・科学大)化生研、阪大産研、九大先導研と連携し、ネットワーク型「物質・デバイス領域共同研究拠点」として認定されました。最先端のナノテク関連設備群の共用化や人材育成を通じて、研究所横断的な共同研究を推進し、異分野融合を加速することでマテリアルイノベーションの実現を目指します。

令和6年度の研究活動内容及び成果


ありふれた材料で超高性能熱スイッチを実現 —熱制御デバイス実用化に向けた開発を加速—

近年、熱制御技術の一つとして、熱流の流れやすさを電気的に切替える熱トランジスタ(=熱スイッチ)が注目されています。電子や光と同様に、熱を操ることができるようになれば、環境問題の一つである「使われずに捨てられている排熱」を、例えば熱のコントラストで情報を表示する「熱ディスプレイ」のような、新しい技術に利用できます。本研究所の太田裕道教授らの研究グループは、2023年2月に世界初の全固体熱スイッチを発表し、2024年7月にはより高性能な全固体熱スイッチを実現しましたが、リチウムイオン電池材料として使用され、枯渇が懸念されているコバルトやニッケルなどの金属を主成分とする材料を用いる必要がありました。本研究では、比較的資源が豊富で、ガラスの磨き粉として市販されている酸化セリウムを活性層とすることで、熱伝導率切替幅が従来比2倍以上の超高性能熱スイッチを実現しました。熱制御デバイスの実用化に向けた開発を加速する成果です。
“High-performance solid-state electrochemical thermal switches with earth-abundant cerium oxide”, Science Advances
DOI: 10.1126/sciadv.ads6137

熱スイッチの動作イメージ。電気化学的に、高熱伝導率(12.5 W/mK)のON状態(左)から、低熱伝導率(2.2 W/mK)のOFF状態(右)に切替える。

熱スイッチの動作イメージ。電気化学的に、高熱伝導率(12.5 W/mK)のON状態(左)から、低熱伝導率(2.2 W/mK)のOFF状態(右)に切替える。

 

化学反応速度式と観測周期の関係を解明! —⽣体⾼分⼦の機能発現などの⾮平衡過程解明に期待—

本研究所の⼩松崎⺠樹教授と兵庫県⽴⼤学⼤学院情報科学研究科の⼾⽥幹⼈客員研究員らの研究グループは、多様な異性化反応をする単分⼦の、反応速度式の粗視化と観測周期の関係を、時定数を維持したまま定式化することに成功し、第⼀原理計算と反応経路探索法で求めた異性化反応ネットワークに応⽤しました。本成果は、従来の平衡分布を⽤いた近似理論を刷新し、あらゆる観測周期に対して理論的に保証された粗視化を提⽰する包括的な解析法です。将来的には、計算の⼤規模化や既存の近似理論と合わせることで、タンパク質等の巨⼤な分⼦における動的機能の時間階層的な理解を可能にし、複数の実験で得られた観測結果と理論・計算のスムーズな橋渡しが期待されます。
“An Encompassed Representation of Timescale Hierarchies in First-order Reaction Network”, Proceeding of National Academy Science United States of America (PNAS)
DOI: 10.1073/pnas.2317781121

観測周期(シャッタースピード)が⻑くなるにつれて、分⼦の形の頻繁な変化が区別できなくなり、よりすくない分⼦の状態のあいだを⾏き来するように観測される。背景の円はカメラのレンズをイメージ。

観測周期(シャッタースピード)が⻑くなるにつれて、分⼦の形の頻繁な変化が区別できなくなり、よりすくない分⼦の状態のあいだを⾏き来するように観測される。背景の円はカメラのレンズをイメージ。

超高速の光パターン照明手法を開発 —次世代光産業、光科学の基盤的手法として期待—

本研究所の渋川敦史准教授、三上秀治教授、岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)の須藤雄気教授、韓国科学技術院生物・脳工学科のムサク・ジャング助教授らの研究グループは、超高速の光パターン照明手法の開発に成功しました。空間光変調器(SLM)は、複雑なパターンの照明を可能とする電子デバイスで、例えばプロジェクタの表示デバイスとして、世界中で普及しています。しかしながら、SLMのパターン切り替え速度は最短でも50マイクロ秒程度にとどまるため、その性能はこれまで十分に生かされていませんでした。そこで、本研究では、SLMの構成を根本的に見直し、独自開発の1次元SLMと、照明パターンを拡張する「すりガラス」を組み合わせることで、市販のSLMの約1,500倍高速な、0.03マイクロ秒の切り替え速度を持つ超高速の光パターン照明手法を開発しました。この超高速の光パターン照明手法は、例えば従来のSLMでは不可能な生命機能の光計測や光操作(光遺伝学)の高速化・大規模化や金属3Dプリンタなどの光加工の生産効率向上など、様々な分野での応用が期待されます。
“Large-volume focus control at 10 MHz refresh rate via fast line-scanning amplitude-encoded scattering-assisted holography”, Nature Communications
DOI: 10.1038/s41467-024-47009-w

開発した光パターン照明手法。

開発した光パターン照明手法。

社会との連携


電子科学研究所 一般公開「光・物質・生き物・数理・環境のふしぎを体験しよう!」

本研究所では、同大学の8つの研究所・センター等と合同で、北大祭開催中に一般公開を実施します。一般市民の方々に向けて、普段は立ち入ることのできない実験施設の見学ツアーや、研究者によるサイエンストーク、工作や実験体験などを通じて、最先端科学に触れる機会を提供しています。また、自転車タクシーの無料運行や、北大グッズがもらえるシールラリーもあり、子どもから大人まで一日中楽しめる地域の人気イベントとなっています。

アンケートでは9割以上が「一般公開をとても楽しめた・楽しめた」「科学の面白さをとても感じられた・まあまあ感じられた」と回答し、「小さい生き物がかわいかった」、「生物、物理、化学全般の面白さや学ぶ意義がよくわかった」、「来年も楽しみにしています」といった声が聞かれた。

アンケートでは9割以上が「一般公開をとても楽しめた・楽しめた」「科学の面白さをとても感じられた・まあまあ感じられた」と回答し、「小さい生き物がかわいかった」、「生物、物理、化学全般の面白さや学ぶ意義がよくわかった」、「来年も楽しみにしています」といった声が聞かれた。

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