繊維科学研究所(IFES)では、信州大学繊維学部附属高分子工業研究施設(1966年)の設立以来、約60年にわたって国内外の繊維科学研究を牽引してきました。繊維は、人類生活に欠くことのできない材料なだけでなく、様々な材料との複合化により、航空機や自動車の構造材料、二次電池のセパレータ、感染症対策、薬剤輸送システムなど、幅広い素材の機能性向上に貢献しています。IFESは、繊維の基礎材料である高分子合成から、テキスタイル・ファブリック成形、それらの機能・物性評価までを一貫実施できる知見と豊富な共通機器類を備えた、世界的にもユニークな拠点です。国内外の多様な機関との共同研究によって異分野融合を促進し、新たな高分子材料創成や繊維材料の応用展開を進めるとともに、繊維を理解し使いこなす人材育成を行います。
近年、貴金属を用いないモリブデート系材料は、エネルギーおよび環境分野における次世代機能材料として注目を集めています。しかし、従来のナノコンポジットは、高価なグラフェンやカーボンナノチューブ、大量の金属、および複雑な製造プロセスを必要とするという課題がありました。こうした背景を受け、簡便かつ低金属量・高コスト効率で環境に優しいナノ複合材料の製造方法として、貴金属を用いない二元および三元モリブデートを、ヘテロ原子でドープした中空コア構造のカーボンナノファイバーに固定化する製造プロセスを開発しました。特に、中空カーボンナノファイバーの内外両面にナノ合金を均一に固定化することに世界で初めて成功しています。この新規ナノ複合材料は、エネルギー貯蔵および環境浄化触媒の両分野において高性能を発揮しました。本研究の成果は、国際的に著名な繊維科学誌『Advanced Fiber Materials』に掲載されました。
現在、多くのセンサーはバッテリーによる電源供給に依存していますが、充電の必要性、リサイクルの課題、健康や環境への懸念といった問題から、より安全で持続可能なセルフパワー型センサーの実現が求められています。本研究では、世界で初めて、BNナノ粒子を均一に分散させた連続PVDFナノファイバーをエレクトロスピニング法により作製し、超高β相含有量(99.1%)の達成に成功しました。これを従来のサブミクロンファイバーと組み合わせることで、構造とプロセスパラメーターを最適化し、圧電効果と摩擦帯電効果の両方を活用した高性能な複合ナノファイバー材料の開発に成功しました。得られた材料は、高感度(5Nで53.5V、1.35µAの出力)、優れた耐久性(5000サイクル後でも安定した出力)、および高い電気機械変換効率を示しました。本研究の成果は、国際的に著名なエネルギー分野の学術誌『Nano Energy』に掲載されました。
当研究所では、繊維科学研究の国際的な研究交流と異分野融合を進めるため、国際シンポジウムを定期開催しています。主なものは、“East Asia Special Symposium on “Advanced Functional Materials” by Internationally Recognized Scholars”で、2025年1月21日・22日に第4回を対面開催しました。東アジアの著名な講師15名をお招きし、繊維材料・機能材料の川上から川下にわたる広範な分野の講演が行われました。国内外から研究者や学生など約80名の参加があり、有意義な研究交流の場となりました。
当研究所では、国際的に認められている多数の研究者を各国から招聘し、特別講演会を開催しています。令和6年度は、7月1日(インド)、7月16日(イギリス)、7月26日(韓国より2名)、8月29日(カナダ)、10月28日(韓国)、11月7日(モンゴル)、11月19日(パキスタン)に計8名の講師をお迎えして開催しました。毎回多くの教職員・学生の参加で教室が満席になり、講演後の質疑応答も活発になされました。
当研究所所長の金翼水教授が、公益社団法人日本工学アカデミー中部支部の正式な会員になり、企画運営委員として活躍することになりました。
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