京都大学防災研究所は1951年の創設以来、地震、火山噴火、台風、豪雨、洪水、高潮、津波、地すべり等、多種多様な自然災害に対して、自然科学から人文・社会科学にわたる災害学理の追求と、防災学の構築に関する総合的研究・教育に取り組んでいます。この間、1996年に、阪神・淡路大震災を機に危機管理など減災のための社会システム研究の重要性を鑑み、ミッションを「災害に関する学理の研究および防災に関する総合研究」に再定義しました。2005年からは総合防災/地震・火山/地盤/大気・水の4グループに大別される5研究部門・6研究センターの体制で、自然災害およびその防災・減災に関する研究を推進しています。2010年に「自然災害に関する総合防災学の共同利用・共同研究拠点」として認定を受け、日本全国の隔地観測・実験施設と京都大学宇治キャンパスにある実験設備を活用しています。2001年に自然災害研究協議会(NDRC)、2015年に世界防災研究所連合(GADRI)を発足し、国内・国外ともに防災研究のネットワーク拠点として活動中です。
「自然災害に関する総合防災学の共同利用・共同研究拠点」として、「巨大地震災害」、「極端気象災害」、「火山災害」、「防災実践科学」の4テーマ、および「国際展開」を重点的に取り組む課題と設定し、研究を推進しています。令和5年度には内閣府・ムーンショット型研究開発制度・目標8コア研究「ゲリラ豪雨・線状対流系豪雨と共に生きる気象制御」や文部科学省・気候変動予測先端研究プログラム:領域課題4「ハザード統合予測モデルの開発」を開始するとともに継続プロジェクトを実施しました。また、2024年1月1日に能登半島北部を震源として発生した能登半島地震について、多様なハザード(地震・津波だけでなく、液状化、地すべり等の地盤災害など)、および、人間・社会にもたらされた多様な被害(建物被害、火災、孤立、災害関連死など)に関する専門家を要する当研究所の特性を生かし、学際的かつ多角的な調査を開始しました。国際展開では引き続きSATREPS等の研究プロジェクトを推進するほか、世界防災研究所連合(GADRI)の事務局として212機関の研究機関とともに活発に研究交流活動を進めています。
地域および世界に開かれた研究所として、地域社会や国際社会との連携そして知の伝達に力を入れています。
災害発生時には、発生直後から現地調査にあたった研究者による調査速報を研究所のウェブサイト等に掲載し、いちはやく情報を公開することに努めています。令和6年能登半島地震については、発災翌日からYouTubeなどに研究者の災害調査報告を掲載し、広く一般に公開した形での報告会「令和6年能登半島地震災害を理解する」を対面およびオンライン形式で実施しました。
また、公開講座(京都と他地域で隔年開催)、京都大学宇治キャンパス公開、研究発表講演会といったイベント(それぞれ年1回開催)では、一般の方々に向けて防災研究の成果をお伝えしています。これらの講演のうち一部についてはYouTubeで講演映像を公開しています。
全国にある隔地施設においても、宇治川オープンラボラトリー(京都市伏見区)では、水害・土砂災害に関連する大規模実験施設を消防・警察関係者による災害救助実習に利用いただいています。阿武山観測所(大阪府高槻市)では、観測所を地震観測に関するサイエンスミュージアムとして整備し、教職員やボランティアガイドによる親しみやすい案内のもとで見学会を月数回実施しています。
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