当センターは野生動物に関する教育研究をおこない、地球社会の調和ある共存に貢献することを目的としています。その具体的な課題は、以下の3点に要約されます。第1に、絶滅の危惧される野生動物を対象とした基礎研究を通じて、その自然の生息地でのくらしを守り、飼育下での健康と長寿をはかるとともに、人間の本性について理解を深める研究をおこないます。第2に、フィールドワークとライフサイエンス等の多様な研究を統合して新たな学問領域を創成し、人間とそれ以外の生命との共生のための国際的研究を推進します。第3に、地域動物園や水族館等との協力により、実感を基盤とした環境教育を通じて、人間を含めた自然のあり方についての深い理解を次世代に伝えます。
さまざまな動物種を対象に、国内外の野外調査地で陸棲および水棲の哺乳類の生態や行動に関する研究を展開しました。また、DNAやホルモンの分析による研究、飼育下の行動認知研究等も実施しました。その結果、野生のテングザルが父系の重層社会を形成している可能性が示唆されること、DNAメチル化率を用いることで野生イルカや飼育下アジアゾウならびにツシマヤマネコなどのネコ科動物の年齢推定が可能なこと、ボノボが約25年前に別れた姉のことを覚えている可能性があることなどが明らかになり、これらの成果について論文で公表しました。さらに、霊長類のニホンザルやロリスのストレスホルモンの計測結果についても論文公表し、彼らの動物福祉の向上に寄与する研究をおこないました。
上記のほか、全国共同利用・共同研究拠点(拠点名:「絶滅の危機に瀕する野生動物(大型哺乳類等)の保全に関する研究拠点」)として、公募による大型哺乳動物を中心とした野生動物の保全に関する共同研究をおこないました。リーディング大学院「霊長類学・ワイルドサイエンス」事業において、国際性に富むリーダーの養成をおこなっています。
当センターは、国内の多くの動物園・水族館等と連携して野生動物に関する研究・教育を推進しています。動物園や水族館は一般の人が野生動物について知り、関心を持つことのできる「窓・扉」であり、当センターと連携する動物園・水族館における公開シンポジウム「動物園・水族館大学」を毎年開催することによって、一般の方々が野生動物研究の最先端に触れることのできる機会を提供しています。
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