数理解析研究所は、数学と数理科学の研究所として昭和38年に全国共同利用研究所として設置されました。現在では、所員による研究、共同利用事業の実施、大学院教育を3本柱として、研究分野は純粋数学から応用数学、数理物理学、コンピュータサイエンスに及び、独自の大学院教育とポスドクの育成にも力を入れています。21世紀COE(平成15~19年)、グローバルCOE(平成20~24年)の拠点に続き、平成30年11月には国際共同利用・共同研究拠点に認定されました。創立以来、数理解析研究所は数々の世界的業績を挙げてきましたが、特に、伊藤清による確率微分方程式の発見、佐藤幹夫らによる代数解析学の構築、代数多様体に対する廣中平祐理論・森重文理論などは独創的なものとして国際的に高く評価されています。また研究集会等の共同利用事業は毎年80回を越え、参加者は約4,000名,延べ約16,000名に達しており、多くは英語を公用語として、国際共同研究プロジェクトである「訪問滞在型研究」と共に多数の外国人研究者が参加しています。
令和5年度は、新型コロナウイルスの感染症の行動制限が緩和されたことに伴い、共同研究の実施形態を完全対面とする研究会が増加し、海外研究者の対面参加者数が増えつつある一方、昨年度に引き続き、新しい共同研究の形として定着しつつあるハイブリッド開催(対面+オンライン)でも実施されました。
国際共同利用・共同研究拠点事業全体で、RIMS共同研究(公開型)53件、RIMS共同研究(グループ型)16件、RIMS合宿型セミナー1件、RIMS総合研究セミナー2件を実施し、総計4,036名(オンライン参加含む。うち海外より606名)が参加しました。また、数理解析研究所における共同利用研究の成果として、講究録33冊を刊行しました。
数理解析研究所所員による活動としては、例えば、越川皓永助教による数論幾何学における様々な研究や、南出新特定助教による遠アーベル幾何学の研究が挙げられます。
越川助教は、志村多様体と呼ばれる整数論的に重要な幾何的対象について研究し、特にコホモロジーの消滅定理を証明しました。また、基礎的な不変量といえる対数的プリズマティックコホモロジーの理論の構築、K3曲面の自己積についてのTate予想や標準予想の解決などの成果も得ました。
南出特定助教の研究分野である遠アーベル幾何学は「代数多様体Xの基本群からどのくらいXの幾何学的情報を思い出せるか」ということがテーマになります。南出特定助教は遠アーベル幾何学のグロタンディーク・タイヒミューラー理論への応用(特に、副有限組紐群やその部分商の外部自己同型群の決定)や、ディオファントス幾何学への応用(特に、実効版ABC不等式の導出や、フェルマーの最終定理の別証明)を行いました。
数学はその高度な整合性を通じて自然科学や経済学など様々な分野に貢献してきました。現代の最先端の数学もまたそのような学問の拡がりが期待されています。数理解析研究所では研究の最先端にある数学の状況を広く一般の方々にも知っていただくために30年余り前から毎夏「数学入門公開講座」を開催し毎年約200名が参加しています。令和5年度は、対面とオンラインのハイブリッド形式で実施しました。
数学の魅力を発信する試みとしては、大阪公立大学数学研究所、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所、情報・システム研究機構統計数理研究所、明治大学先端数理科学インスティテュートと合同で「数学・数理科学5研究拠点合同市民講演会」を毎年実施しており、令和5年度は情報・システム研究機構統計数理研究所で開催しました。研究成果を社会に還元する試みとして、他の学術諸分野や企業との連携研究を行うために数学連携センターを設置し、数学の社会への幅広い応用を目指しています。さらに、産学連携のワークショップ等も共催しています。
またコンピュータサイエンスの研究を通じて数理解析研究所で開発された Kyoto Common LISP 等のプログラミング言語処理系や日本語入力システム Wnn は社会で広く用いられてきました。
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