エネルギー理工学研究所は、1996年にエネルギーの基本要素であるエネルギーの生成・変換・利用の高度化に関する研究を行うために設立されました。エネルギーの散逸や有用物質の損失、有害物質の放出を最小限に抑え、高い環境調和性と社会受容性を持つ安全性に優れた、ソフトエネルギーからプラズマ・量子エネルギーまでの幅広いエネルギーを開発・研究することを目的にしています。このようなエネルギーを「ゼロエミッションエネルギー」と位置付け、共同利用・共同研究拠点事業「ゼロエミッションエネルギー研究拠点」の活動を展開しています。研究所には、生成・変換・利用をそれぞれ冠した3部門に属する14研究分野、研究所内外の共同研究や産官学連携を推進する附属エネルギー複合機構研究センターと二酸化炭素を機能性材料に変換する附属カーボンネガティブ・エネルギー研究センターを設置して、特色ある最先端の研究施設を活用しながら、多彩なエネルギーに関わる先端研究に取り組んでいます。カーボンニュートラル社会を支えるエネルギーを、自然の摂理や原理に立ち返って探究し、新しいエネルギーの創出と学理の構築を目指すとともに、次世代を担う研究者の育成に努めています。
2050年カーボンニュートラル社会の実現とそれに伴うグリーン成長戦略を見据えて、2022年にスタートさせた附属カーボンネガティブ・エネルギー研究センターの活動を、本格化しました。「ソフトエネルギー研究」では、これまで研究所が培ってきたナノ炭素材料、光電子デバイスや人工代謝経路の新しい原理、電気化学、バイオリファイナリー、中赤外自由電子レーザーの技術を深化させ、太陽光エネルギーを効率的に利用する革新的原理・技術の研究成果をさらに発展させました。「プラズマ・量子エネルギー研究」では、ヘリカル状の三次元磁場構造を持つプラズマ閉じ込め装置「Heliotron J」を用いて、複雑なプラズマ現象の解明と制御を中心に、高性能の核融合プラズマを実現するための基礎研究を行いました。また、それらを支える機能材料、構造材料の開発および核融合炉工学に関する先導的な研究を展開しました。
溶融塩とは、塩そのものが溶融したものであり、イオンのみからなる液体です。例えば身近な塩であるNaClを融点以上に加熱して溶かすと、Na+とCl−のみからなる液体となります。溶融塩は電気化学的に安定なため、溶融塩中からは様々な金属を電析することができます。そのため、金属製錬やめっきの分野での利用が期待されており、すでにアルミの製錬などでは実用化されています。一方で、溶融塩を用いて電気めっきを行うと、めっき膜表面に付着した塩が固化してしまい、これをきれいに除去するのが難しいことが、実用化に向けた課題の一つでした。本研究所の法川勇太郎助教と野平俊之教授らは、全く新しいコンセプトである、「塩の高い水溶性」と「高いめっき能力」の両方を兼ね備えた溶融塩を開発しました。具体的には、KF-KClおよびCsF-CsClで、それらを用いたシリコン、チタン、タングステンのめっきに成功し、平滑で緻密な膜が得られることを実証しました。これらの材料は、いずれもエネルギー分野で重要な高機能材料であり、近い将来の実用化が期待されます。また、本技術は他の金属のめっきにも応用可能であり、今後のさらなる進展が期待されます。
DNA折り紙は、幅広い応用が期待されているナノバイオマテリアルですが、その安定性の低さがさらなる応用展開の大きな妨げとなっています。これまで化学修飾や別の材料による被覆などで安定化を達成した例はありましたが、これらの方法ではDNA折り紙本来の性質を失うことになります。DNA折り紙が設計通りに機能を発揮するには、天然のDNA結合のままで構造を安定化することが重要です。本研究所、Kirankumar Krishnamurthy研究員、Arivazhagan Rajendran講師、中田栄司 准教授、森井 孝 教授らの研究グループでは、この課題を解決し、DNA折り紙をより頑強にすることができる技術の開発に成功しました。DNA折り紙中にある数百の切れ目が安定性の低さの原因と考え、ジメチルスルホキシド含有溶媒中での酵素反応や臭化試案での化学反応で、ほとんどの切れ目を天然のDNA結合でつなぐことに成功しました。これにより、高温や細胞破砕液などの様々な条件下でDNA折り紙の安定性が著しく向上しました。この技術のおかげで、DNA折り紙の活躍の場を幅広く展開でき、革新的なナノバイオマテリアルの開発も可能となると期待されます。
基礎から応用まで、多様な要素を含むエネルギー研究は、産業界や国公立研究機関との連携が欠かせません。そのため、研究所の多様な研究施設を供用することで研究の幅を広げ、社会への貢献を積極的に行っています。また、研究所活動を社会に発信する機能を高めるとともに、将来の科学技術を担う中高生に対して見学会や大学院生との交流会を行うなど、社会貢献を積極的に行っていいます。
世界各国の研究機関と交流協定(16ヶ国37機関)を結び、積極的な交流を行っています。また、毎年著名研究者を招聘した国際シンポジウムを開催し、国際的な情報発信と交流を積極的に行っています。とくにアジア地域との交流では、日本学術振興会(JSPS)の「拠点大学交流」(日韓)や「アジア研究教育拠点事業」(日中韓)による先進エネルギー科学における15年に及ぶわが国のハブとしての実績に基づく東アジア地域での国際交流を初め、日本学術振興会研究拠点形成事業や、東南アジア地区における国際共同研究プラットフォーム(JASTIP)などの活動に力を入れています。
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