本研究所は1940年に東京商科大学東亜経済研究所として設置され、戦後1949年に一橋大学経済研究所となった。「日本および世界の経済の総合研究」との設置目的に沿って、日本の『長期経済統計』(14巻)をはじめ多くの研究成果を挙げてきた。現在は、「経済・統計理論研究部門 」「経済計測研究部門 」「比較経済・世界経済研究部門 」「経済制度・経済政策研究部門 」「新学術領域研究部門 」と「社会科学統計情報研究センター」「経済制度研究センター」「世代間問題研究機構」「経済社会リスク研究機構」の5部門・4附属研究施設体制で研究を推進している。2010年度に文部科学省の共同利用・共同研究拠点制度の下で「日本および世界経済の高度実証分析」の拠点として認定され、2021年の期末評価において最も高いS評価を受け、2022年度からの拠点として再認定された。ミクロデータやパネルデータを駆使して、内容の濃い実証研究を進めることが本研究所の最大の特徴であるが、実証研究のベースとなる理論的研究の水準も極めて高く、世界の経済学界をリードしている研究者も多い。
以下では研究所の活動のうち、2023年度の特徴あるものとして、次の3つを紹介する。
①「日本および世界経済の高度実証分析」拠点の参加型事業:本研究所は文部科学省により共同利用・共同研究拠点として認定されており、公募による共同研究プロジェクトなどの各種事業を行っている。2023年度には、政府統計やミクロデータを用いた家計・企業の実証研究等に関して、合計28件の公募共同研究プロジェクト、4件の参加型研究プロジェクト、総計32件の進行を推進した。特に強調すべき成果は、 外国人労働者に関する研究、家族政策が結婚・出産行動や経済成長に与える影響に関する研究、アフターコロナにおける観光振興、欧州新興市場の経済についての研究成果である。また、国際的な共同研究を推進、研究集会を開催、招待講演発表や論文の刊行を行うほか、物価を用いた統計分析手法を開発した。さらに、物価、資産価格、生産性、地域経済、アジア長期経済統計等を中核とするデータ・アーカイブを構築・編集し、公開に至った。
②経済社会リスク研究機構:独自の「SRI一橋大学消費者購買指数」を公表しつつ、様々な独自サーベイを行いながら、家計消費や物価等に関する多くの研究を内外の研究者と共同で行っている。SRI指数は、市場調査会社の協力を得て、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、大型小売店をカバーする日本全国4000店舗のPOSデータに基づいたもので、消費者の購買行動の変化を詳細に把握することができるものであり、毎週データを更新している。
③1950年の発刊以来、72年の長きに渡って日本語査読誌『経済研究』を岩波書店から刊行してきたが、2023年からは、研究成果発表の速報性と読者の利便性向上を目指して紙冊子の発行を中止し、電子ジャーナルに移行した。
本研究所は、中央官庁等との間で人事交流・研究連携を積極的に進めている。2023年度時点では社会科学統計情報研究センターに総務省統計局から2名、世代間問題研究機構に内閣府、独立行政法人経済産業研究所からそれぞれ1名のスタッフを受け入れたほか、日本銀行とも人事交流を行っている。さらには、経済産業研究所、国立社会保障・人口問題研究所、財務省財務総合政策研究所、内閣府経済社会総合研究所、ニッセイ基礎研究所、日本銀行金融研究所、日本経済研究センター、日本貿易振興機構アジア経済研究所とは覚書を結んで研究連携を深めている。
経済研究所スタッフは、一橋大学アカデミア、一橋大学政策フォーラム、各種シンポジウム等での一般向け講演・レクチャー、啓発的研究書出版、テレビ・新聞、雑誌等での発言等々の形で一般向けの研究成果の発信を積極的に行っている。また日本経済新聞の経済教室など主要な経済政策議論に多くのスタッフが参加し、政策議論を展開している。
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