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東北大学電気通信研究所

Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University
  • 第1部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
羽生 貴弘
Hanyu, Takahiro
キーワード
情報デバイス、ブロードバンド通信、人間情報システム、システム・ソフトウェア工学、ナノエレクトロニクス・スピントロニクス、ブレインウェア
住所
〒980-8577
宮城県仙台市青葉区片平2-1-1

本研究所は、八木・宇田アンテナやマグネトロンなど、1930年前後の本学工学部電気工学科における電気通信の先駆的研究の高まりを背景に、1935年、附属電気通信研究所として設置されました。現在、20余の研究分野から構成され20年のホライズンの研究を行う4研究部門、10年のホライズンで活動する 2研究施設、5年のホライズンを特化して行う研究開発センターの3体制を整えております。本研究所は、情報通信分野唯一の共同利用・共同研究拠点として研究者コミュニティに開かれた共同研究を推進し、国内外の研究者と連携して「人間性豊かなコミュニケーションを実現する総合的科学技術」の研究を行い、先導的役割を果してまいります。

令和3年度の研究活動内容及び成果


低炭素社会に貢献する高機能スピントロニクス素子開発の推進

本研究所では、カーボンニュートラルの達成への貢献を目指し、限られた電力で高度な演算が可能な集積回路の実現に資する高機能スピントロニクス素子の研究開発を推進し,次のような成果を得ました。

・極微細高性能不揮発性スピントロニクスメモリ素子の開発
高速書き込み動作を特徴づける時定数を制御できる磁気トンネル接合(MTJ)(STT-MRAMの情報記憶素子)の構造を提案し、5ナノメートル以下の直径を有するMTJ素子で3.5ナノ秒までの高速書き込み動作を実証しました。これは、STT-MRAMが将来のオングストローム世代半導体製造技術でのSRAMや高速DRAMの代替として使えることを示す重要な成果です。本研究により、超大容量・低消費電力・高性能不揮発性メモリ・半導体集積回路の開発が加速することが期待されます。

・疑似量子計算向け確率動作スピントロニクス素子の開発
スピントロニクス技術を用いた擬似量子ビット(確率ビット:Pビット)素子を、1秒間に1億回(従来比100倍)動作させるための重要技術を開発すると共に、これまで着目されてこなかった動的磁化状態の「エントロピー」を考慮することでその物理的起源が説明されることを示しました。本成果は、確率論的コンピューターの研究開発を加速し、加えて、「ゆらぎの定理」などの非平衡熱統計物理学の新概念とスピントロニクスを繋ぐ革新的な手法の提供に繋がるものと期待されます。

(左)極微細スピントロニクスメモリ素子の電子顕微鏡写真と膜構成<br>(右)書込み動作に必要な電圧と書込み電圧パルス幅の関係の測定結果

(左)極微細スピントロニクスメモリ素子の電子顕微鏡写真と膜構成
(右)書込み動作に必要な電圧と書込み電圧パルス幅の関係の測定結果

・Wi-Fiの電波で発電するスピントロニクス技術の開発
スピントロニクスの原理を活用し、Wi-Fiの2.4 GHzの周波数の電磁波を効率的に送受信する技術を開発し、それを環境発電技術へと発展させ、2.4 GHzの電磁波を直流電圧信号に変換して発光ダイオードを光らせる原理実証実験に成功しました。本技術を発展させることで、電力源としては捨てられ続けているWi-Fiの電波から効率的に電力を抽出して情報のセンシングや処理を行う、ワイヤレス・バッテリーフリーのエッジ情報端末などの実現が期待されます。

ポストコロナを見据えた新しい電気通信技術の開拓

ポストコロナを見据え、またSociety 5.0に向けた情報環境の整備と構築を目指して、ハード・ソフト融合の脳型LSI技術、新規インターネットプロトコル構築、非言語情報を活用する豊かなコミュニケーション実現のための基礎的知見の蓄積、通信技術の研究と開発等の実績を得ました。
今後エッジコンピューティング技術はますます重要になり、そこでの省エネルギー化はシステム構築の成否に関わる重要な要素となります。電気通信研究所で培ってきた脳型LSI技術の有用性は、そのための有効性が高く将来期待される技術の1つです。また、IoTやセンサネットワークでは、多様な目的や制約に対応するために、従来のインターネットのプロトコルとは全く異なる発想で構築するものも期待され、それらを考慮した研究開発も実施しました。関連したセキュリティ研究でも成果をあげ、快適で安全な情報環境の構築に貢献するための実績を積み上げました。対象にヒトが含まれる研究としては、生体に関する基礎的研究、非言語情報を扱う研究プロジェクトなどで成果を上げました。 令和3事業年度の主な成果は次の項目です。

  • 脳型LSI実現に必須な不揮発メモリ(SOT-MRAM)チップの開発に成功
  • 量子コンピュータにも耐性を持つ次世代暗号を安全に実現する技術を開発・実証
  • 非言語情報を活用した新しいコミュニケーション技術確立に向けた研究
手を添えるだけでも視覚処理は促進される 手の周囲の無意識的注意効果とその利き手との関連に関する発見<br> (左) 鏡を解してディスプレイを観察することで、手を見えない状況で手の位置の効果を計測するための刺激<br> (右)フラッシュラグ効果と呼ばれる現象によって注意効果を測定した結果

手を添えるだけでも視覚処理は促進される 手の周囲の無意識的注意効果とその利き手との関連に関する発見
(左) 鏡を解してディスプレイを観察することで、手を見えない状況で手の位置の効果を計測するための刺激
(右)フラッシュラグ効果と呼ばれる現象によって注意効果を測定した結果

社会との連携


東北大学 電気・情報 産学官フォーラム 2021 の開催

東北大学 電気・情報 産学官フォーラム2021を、「これからの半導体・デジタル産業戦略を考える」という基調テーマのもとで、10月8日にオンライン形式で開催しました。リアルタイムの講演とオンデマンド動画の技術セミナーで、参加登録者数は388名と過去最高を記録することができました。

 

2021年度共同プロジェクト研究発表会の開催

東北大学電気通信研究所では、情報通信分野に関連するテーマに関して国内外の多数の優れた研究者とともに共同プロジェクト研究を企画・実施しています。2021年度の本共同プロジェクト研究の成果発表会を2022年2月17日(木)にオンラインで開催し、184名の参加者とともに活発な議論が行われました。また、電気情報通信分野の学術研究の発展に顕著な貢献があり、将来にわたり、当該分野の発展に寄与することが期待される優秀な若手研究者に贈られるRIEC Award の授賞式も、併せてハイブリッド形式で開催しました。

 

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