研究所・研究センター一覧

東北大学電気通信研究所

Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University
  • 第1部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
塩入 諭
Shioiri, Satoshi
キーワード
情報デバイス、ブロードバンド通信、人間情報システム、システム・ソフトウェア工学、ナノエレクトロニクス・スピントロニクス、ブレインウェア
住所
〒980-8577
宮城県仙台市青葉区片平2-1-1

本研究所は、八木・宇田アンテナやマグネトロンなど、1930年前後の本学工学部電気工学科における電気通信の先駆的研究の高まりを背景に、1935年、附属電気通信研究所として設置されました。現在、20余の研究分野から構成され20年のホライズンの研究を行う4研究部門、10年のホライズンで活動する 2研究施設、5年のホライズンを特化して行う研究開発センターの3体制を整えております。本研究所は、情報通信分野唯一の共同利用・共同研究拠点として研究者コミュニティに開かれた共同研究を推進し、国内外の研究者と連携して「人間性豊かなコミュニケーションを実現する総合的科学技術」の研究を行い、先導的役割を果してまいります。

令和元年度の研究活動内容及び成果


ブレインモルフィックコンピューティングの研究

本研究では、脳型計算の新しいパラダイムとして、脳神経系の解剖学的、生理学的な構造や仕組みを模倣し、物理的な「プロセス」によって情報処理を行うブレインモルフィックコンピューティングを提案した。これは、これまでの神経細胞の応答特性を半導体回路技術で模倣するニューロモルフィックシステムを、脳のネットワーク構造や大域的なダイナミクスにまで発展させ、意識などの脳に特異的に発現する機能を工学的に実現する枠組みである。
これを脳に匹敵するエネルギー効率でハードウェアとして実現するためには、デバイスや回路の物理的・動力学的な性質を「直接的に」活用して、生物物理をデバイス物理で模倣・再現することが必要である。同時に、最新の脳科学の知見、特に高次機能に関する知見を反映させ、更には、進化的な構造や機能、あるいは、身体性を考慮することも重要である。
このような目的で、まず脳の重要な構成要素であるニューロンやシナプスの特性やダイナミクスを、デバイス物理を直接用いて再現可能するスピントロニクスニューロンやスピントロニクスシナプス素子を提案した。中でも世界で初めてアナログスピントロニクスメモリを学習・記憶デバイスとして用いた成果は注目を集め、応用物理学会で講演賞、論文賞を受賞した他、日経産業新聞、日刊工業新聞や雑誌、ウェブで広く取り上げられた。更に、生体ニューロンの入力パルス列のリーク付き時空間積分特性と、生体シナプスのパルス列の時間構造に依存した学習特性であるSTDP学習の両方を、素子のスイッチングダイナミクスと温度ダイナミクスを活用して、同一材料で再現することに世界で初めて成功した。
一方、脳の高次機能については、その重要な要素の一つである自己の工学的実現に必要な、一貫性と多様性や、安定性と鋭敏性などの相反する機能を同時に実現するカオスニューラルネットワークリザバーを提案し、シミュレーションと回路実験により高次元複雑ダイナミクスの有効性を示した。
これらの成果は、脳に特異的な機能を人工的に作り出すための大きな一歩を踏み出したものであり、将来のEdge AIデバイスへの応用も有望視されており、多くの学会で招待講演を依頼されるなど注目を集めている。

ブレインモルフィックコンピューティングハードウェアパラダイムの概要

ブレインモルフィックコンピューティングハードウェアパラダイムの概要

生体の神経回路網の模式図(左上)と、スピントロニクス素子で再現したニューロンの入力スパイク列に対する応答特性(下)と、シナプスの2つの入力スパイクの時間間隔に対する学習特性(右)の測定結果

生体の神経回路網の模式図(左上)と、スピントロニクス素子で再現したニューロンの入力スパイク列に対する応答特性(下)と、シナプスの2つの入力スパイクの時間間隔に対する学習特性(右)の測定結果

作製したアナログスピントロニクス素子を学習・記憶デバイスとして用いた人工神経回路網システムの写真

作製したアナログスピントロニクス素子を学習・記憶デバイスとして用いた人工神経回路網システムの写真

カオスニューラルネットワークリザバーの基本的な構成

カオスニューラルネットワークリザバーの基本的な構成

3次元LSI技術での集積回路化を可能とするサイクリック型スイッチト・キャパシタカオスニューラルネットワークリザバー回路の評価基板

3次元LSI技術での集積回路化を可能とするサイクリック型スイッチト・キャパシタカオスニューラルネットワークリザバー回路の評価基板

人工細胞膜に基づく薬物副作用センサの開発

近年、薬物副作用による致死性の不整脈が問題となっており、その作用点となる心臓のイオンチャネルタンパク質に対する副作用リスクの評価が重要となっている。
平野グループでは、微細加工したシリコンチップ中に心臓の細胞膜構造を人工的に形成した薬物副作用センサの開発を行っている。本研究では、このセンサに、DNAから無細胞合成したイオンチャネルタンパク質を埋め込み、薬物副作用による阻害作用を観測し、その阻害作用の程度を定量することに成功した。この現象を遺伝子情報に基づいて観測したのは世界初であり、医薬品の作用・副作用を詳細に解明するためのツールとして、オーダーメイド医療への道筋を切り拓くものである。
本成果は、JST-CRESTプログラムによる支援の元、電気通信研究所ナノ・スピン実験施設が有する微細加工技術とバイオ材料との高度な融合により実現された。
M. Komiya, M. Kato, D. Tadaki, Te. Ma, H. Yamamoto, R. Tero, Y. Tozawa, M. Niwano, and A. Hirano-Iwata, “Advances in Artificial Cell Membrane Systems as a Platform for Reconstituting Ion Channels”, Chemical Record, 20, 1-14 (2020).

社会との連携


東北大学 電気・情報 東京フォーラム 2019の開催

東北大学 電気・情報 東京フォーラム 2019 を2019年11月26日(火)に東京にて開催しました。「Society5.0 を支える IoT 技術」をテーマにして、学内外の研究者が議論を行いました。

2019年度共同プロジェクト研究発表会の開催

本所の共同プロジェクト研究は、情報通信分野の各種の研究を国内外の優れた研究者の協力のもとに企画・コーディネートして実施しています。2020年2月20日に開催された2019年度研究発表会では、国内外の第一線の研究者から次世代ICTの羅針盤となる研究が発表され、180名におよぶ参加者と発表者の間で活発な議論が行われました。

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