本研究センターの前身である理学部附属原子核理学研究施設(核理研)は、大型電子加速器の学内共同利用施設として原子核理学および関連分野の研究を推進し、また研究者育成に資する目的をもって1966年に発足しました。2009年には独立部局として電子光理学研究センターに改組し、3つの研究部(核物理研究部、光量子反応研究部、ビーム物理研究部)が教育研究活動を展開しており、原子核物理、ハドロン物理のみならず放射性同位元素製造とその応用やコヒーレント光源開発などの電子加速器の様々な利用分野の研究を推進しています。また民間企業の出資による共同研究部門(凝縮系核反応研究部)が2014年に設置され、物質中での原子核反応の基礎研究と新エネルギー開発の可能性を探っています。2011年度からは共同利用・共同研究拠点(電子光理学研究拠点)として電子・光子ビームを提供しており、国内外の関連分野研究者と連携して未踏領域研究課題の発見・開拓を目指すとともに、次世代を担う人材育成に邁進しています。
本センターは、機能と特徴が異なる複数の大型電子加速器が稼働しており、広いエネルギー領域を覆う電子光ビームを共同利用に供するとともに他研究機関と連携した共同研究を推進しています。
1) 核物理研究部は、大阪大学国際サブアトミック科学研究拠点(核物理研究センター)とSPring-8のレーザー電子光ビームラインLEPS2におけるハドロン物理研究を拠点間連携によって進めています。特にセンターが建設した世界最高エネルギー分解能を誇る電磁カロリーメータBGO-eggを用いたハドロン光生成の実験データを蓄積しています。センターにおいては、1.3GeV電子シンクロトロン(BSTリング)で生成した高エネルギーγ線を重水素に照射して得られた中性π中間子の崩壊データから6クォーク共鳴状態であるダイバリオンの存在を確認し、ダイバリオン分光研究を開拓しました。また、中性中間子ー核子間相互作用研究を展開しています。
2) 光量子反応研究部は、陽子半径の謎への挑戦を目指した史上最低エネルギーでの電子散乱実験のために、60MeV高強度電子リナックの整備と新しいスペクトロメータ及びビーム輸送系を建設し、研究を開始しました(下の写真をご覧ください)。また、理化学研究所仁科加速器研究センターと連携して開発したSCRITと呼ぶ新しいアイディアの蓄積リングを用いた電子散乱実験装置で、世界初の電子散乱による不安定核の内部構造解明に取り組んでいます。
大強度電子ビームにより生成する多種多様な放射性同位元素を幅広い分野の学術研究や産学連携研究で活用している。
3) ビーム物理研究部は、タイ・チェンマイ大学プラズマビーム物理研究施設およびタイ国立電子コンピューター技術研究センターとコヒーレントテラヘルツ放射源の開発と応用の共同研究を進めています。センターの50MeV試験加速器(t-ACTS)を用いて髪の毛の太さより短い80フェムト秒の超短パルス電子ビームの生成技術を確立し、3THzまでの超放射とよぶコヒーレントアンジュレータ放射の発生に成功し、現在はテラヘルツ超放射の偏光を制御する交叉型アンジュレータシステムを開発しています。また、電子から放たれる様々な放射を利用するビーム診断手法を理論的・実験的に研究しています。
基礎科学の面白さを広く知って頂くための広報活動を進めています。教員が中学や高校に出向き出前授業を実施しているほか、小中高校生や一般の方々の見学会(と希望により特別講義)を随時受け付けています。ここ数年はコロナ禍のため、例年に比べ見学申し込みは少ない状況が続いていますが、それでも昨年度は個人見学のほか10前後の高校や企業の見学(200人前後)があります。また、センター加速器施設の一般公開は隔年で開催していましたが、これもコロナ禍のため中止せざるを得ず、代わりにドローン技術と AI 技術を利用した「バーチャル施設見学」のホームページを整備しました。いつでも加速器や実験装置見学の疑似体験ができます。このような工夫により今後も社会との連携を図る工夫をしてゆきます。
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