本研究所は「高速力学に関する学理およびその応用の研究」を目的として1943年に高速力学研究所として設立され、1989年に改組転換して「流体科学研究所」となり今日に至っています。2010年度からは、共同利用・共同研究拠点「流体科学研究拠点」としての機能を併せ持った研究教育活動を組織的に展開。2022年10月の改組では、新たに附属統合流動科学国際研究教育センターを発足し、流体科学研究の確固たる学術基盤を基に、多様な応用分野における社会課題解決までを包含した新概念「統合流動科学」を提唱しています。
流体科学の基礎研究を基盤とした先端学術領域との融合、および重点科学技術分野への応用に関する世界最高水準の研究を推進すること、また研究を通じて社会の諸問題解決に貢献すること、さらに国際水準の次世代研究者および技術者を育成することを使命と目標に掲げています。
現代のエネルギー社会基盤を支えている燃焼は、化学反応、流動、熱物性変化が複合的に生じる複雑な物理現象です。本研究では、高温、高圧、超音速といった環境や、極めて燃焼性が低い物質の燃焼等、極限環境条件における燃焼現象の解明に取り組んでいます。さらに、低炭素社会の早期実現を目指し、低燃焼性でありながら温室効果ガスを排出しないCO2フリーアンモニア燃焼の研究を基礎および応用の両面から推進し、産業技術総合研究所と共同でアンモニアガスタービン発電の実証に成功するなど、燃焼科学の進歩と環境負荷低減エネルギー技術の創出に貢献しました。
火星探査用航空機は、火星の大気を利用して飛行し、低高度から広範囲な観測を可能にする新しい探査プラットフォームです。火星の大気密度は地球の1/100ほどしかないため、翼の超高性能化や機体・搭載機器の超軽量化が必要であり、また自律飛行技術を行うための航法誘導制御システムの効率化・高信頼性化も重要です。このため、JAXA宇宙科学研究所と東北大が中心となり、火星探査航空機の研究開発を進めています。地上での高度36kmでの飛行試験により、検討した機体の実証が行われ、その有効性が確認されました。これらの知見を元に、火星探査航空機の実現に向けた研究開発が加速されています。
新型コロナウイルスに代表されるパンデミック型の感染には、早期探知手法の確立が求められています。このために、ウイルスの空間浮遊の把握と生体内のエアロゾル生成機序の解明が必須です。流体科学研究所は、2020年のいわゆるコロナ禍に「社会課題解決タスクフォース」を結成しました。そして内閣官房の事業の下、空間浮遊ウイルス量の定点観測と同定が可能なシステムを本学医学研究科と共同で開発(特許出願中)。また、生体内の微粒子生成をシミュレーションする手法を開発しました。現在Meiji Seikaファルマ株式会社と共同で、ウイルス捕集・計数に関する共同実証試験を行っています。
本研究所は、2015年に策定したVISION2030のもと、これまで蓄積してきた研究や技術、国際研究ネットワークを礎として、様々な社会課題の解決に向けて世界の研究者が集う流体科学分野の世界拠点形成を目指し活動してきました。
2021年9月、近年の社会情勢の急激な変化を踏まえ、研究所が目指す方向を今一度見つめ直し、VISION2030を改定しました。新たなビジョンにおいて、社会・産業界への貢献を組織的に行うために、研究所独自の分野横断型研究グループ「環境・エネルギー」、「ナノ・マイクロ」、「健康・福祉・医療(ライフサイエンス)」、「宇宙航空」の4研究クラスターおよび緊急性の高い社会課題に取り組むための研究チーム「社会課題解決タスクフォース」を組織しています。
今後、これらクラスター等の活動を通して、快適で豊かな社会構築に貢献する新しい学術基盤「統合流動科学」を創成、展開してまいります。
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