多元物質科学研究所(略称:多元研)は、70年の歴史を持つ旧3研究所(選研・素材研、科研、非水研・反応研)を融合させ、多元物質科学に関する基礎と応用の先端的研究を推進し、本学4研究科(工学研究科、理学研究科、環境科学研究科、生命科学研究科)と協力し、次世代を担う若者の教育研究活動を行い、世界的視点から思考できる指導的人材を育成し、地域と世界に貢献することを使命としております。さらに、北海道大学電子科学研究所、東京工業大学科学技術創成研究院生命科学研究所、大阪大学産業科学研究所、九州大学先導物質化学研究所と共に、大学の枠を越えた日本を縦断するネットワ-ク「物質・デバイス領域共同研究拠点」を形成し、新しいタイプの共同利用研究所としての活動をしています。
東北大学青葉山新キャンパスに建設中の次世代放射光施設。この「巨大な顕微鏡」でも、タンパク質、有機薄膜、ポリマー、ハイブリッド材料等の中の原子配列を明確に分析・測定するには、ミクロンサイズ程度の大きさの結晶が必要となります。この点を補完するため、本研究所では今年度、「クライオ電子顕微鏡」を導入し、学内外向けに共用を開始しました。今回導入した顕微鏡は、理化学研究所で開発した、AI制御による自動測定ソフトウェア「yoneoLocr」を実装した世界で初めての共用装置です。タンパク質のみならず、有機材料、有機・無機ハイブリッド材料への応用を目指した生命系・材料系二刀流の装置であり、これにより東北大学では、硬い材料から柔らかい材料まで測定・可視化することが可能となりました。
地球上に豊富に存在するマグネシウムを用いた「マグネシウム蓄電池」は、リチウムイオン電池に代わる安全・安価な蓄電池として近年注目を浴びていますが、現行のリチウムイオン電池のエネルギー密度を超える正極材料の開発が、成功の鍵となります。本研究所の小林弘明講師は、オールジャパンの研究チームの一員として、慶應義塾大学 今井宏明教授らの研究チームとともに、マグネシウム蓄電池の正極材料として有望視されている、スピネル型のマグネシウムマンガン系酸化物の開発に成功し、その成果が米国化学会のナノテクノロジー専門誌ACS Nano誌にオンライン掲載されました。このスピネル材料を正極に用いることで、マグネシウム蓄電池の室温での高エネルギー動作が可能となりました。
本研究所の最先端研究シーズと地元企業との出会いの場を設け、社会に開かれ、親しみやすい科学・技術の交流の場の提供と、多元研の研究への理解醸成を目的とした産学連携イベント「多元物質科学研究所イノベーション・エクスチェンジ」を平成 25 年より継続的に開催し、材料(ナノ材料など)をはじめとした、ものづくりに関する情報交換を実施しています。令和5年1月には、「Industry meets science /生産性に効く!最先端ナノ計測評価技術」と題し、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてきた為、3年ぶりにハイブリッド形式での開催となりました。地元企業だけでなく、全国から、現地36名、Zoom参加83名の計119名が参加しました。
今回は、いよいよ令和6年に運用開始となる次世代放射光、および昨年本研究所に設置され、運用開始となった「クライオ電子顕微鏡」の相補的利用をテーマとし、ナノテラスの活用、フィジビリティスタディの事例、クライオ電子顕微鏡を使用した実例等を紹介しました。
地域社会との連携や交流の促進を目的として、学都「仙台・宮城」サイエンス・デイやみやぎ県民大学開放講座、夏休み大学探検等の教育イベントに継続的に参画し、学都仙台コンソーシアムサテライトキャンパス公開講座での講演や出前授業なども積極的に実施しています。技術室機械工場では、仙台市教育委員会が「自分づくり教育」の一環として推進する職場体験活動を継続して受け入れています。(令和4年度は、新型コロナウイルスの関係で実施できませんでしたが、新型コロナウイルスが終息した後は、実施する予定です。)
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