研究所・研究センター一覧

東北大学多元物質科学研究所

Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials, Tohoku University
  • 第1部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
寺内 正己
Terauchi,Masami
キーワード
多元物質科学、有機・無機ハイブリッド材料、プロセスシステム・デバイス工学、先端計測技術開発、ネットワーク型共同研究拠点
住所
〒980-8577
宮城県仙台市青葉区片平2-1-1

多元物質科学研究所(略称:多元研)は、70年の歴史を持つ旧3研究所(選研・素材研、科研、非水研・反応研)を融合させ、多元物質科学に関する基礎と応用の先端的研究を推進し、本学4研究科(工学研究科、理学研究科、環境科学研究科、生命科学研究科)と協力し、次世代を担う若者の教育研究活動を行い、世界的視点から思考できる指導的人材を育成し、地域と世界に貢献することを使命としております。さらに、北海道大学電子科学研究所、東京工業大学科学技術創成研究院生命科学研究所、大阪大学産業科学研究所、九州大学先導物質化学研究所と共に、大学の枠を越えた日本を縦断するネットワ-ク「物質・デバイス領域共同研究拠点」を形成し、新しいタイプの共同利用研究所としての活動をしています。

令和3年度の研究活動内容及び成果


電池材料の酸素脱離現象を解明 次世代型蓄電池への応用に期待

蓄電池内部でのガス発生や異常発熱を回避することは、電池の安全性を左右する重要な課題です。これらの現象は電池を構成する酸化物正極材料から酸素が抜けて電解液等と反応することが原因であると考えられています。
東北大学多元物質科学研究所 雨澤浩史教授、中村崇司准教授、木村勇太助教、高輝度光科学研究センター 為則雄祐主席研究員、鶴田一樹研究員らの共同研究グループは、リチウムイオン電池に用いられる酸化物正極材料をターゲットとして、酸化物正極材料からの酸素脱離現象を詳細に評価し、材料中の酸素を不安定化する要因を明らかにしました。
本研究で用いた評価手法や得られた知見は次世代蓄電池に利用される酸化物蓄電材料にも適用できるものであり、次世代型エネルギー貯蔵技術の発展を支える基礎学理になることが期待されます。

図1. (a)クーロン滴定法の実験装置模式図。(b) クーロン滴定により評価したLiNi<sub>1/3</sub>Co<sub>1/3</sub>Mn<sub>1/3</sub>O<sub>2</sub> の酸素脱離挙動。<br />  約5 mol%もの酸素が格子から脱離しても、LiNi<sub>1/3</sub>Co<sub>1/3</sub>Mn<sub>1/3</sub>O<sub>2</sub>は分解しないことを実験的に示した。

図1. (a)クーロン滴定法の実験装置模式図。(b) クーロン滴定により評価したLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2 の酸素脱離挙動。
約5 mol%もの酸素が格子から脱離しても、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2は分解しないことを実験的に示した。

図2. (a) 軟X線吸収分光測定による酸素脱離時の還元挙動の評価。(b) Ni L吸収端スペクトル。酸素脱離初期では、Niが選択的に還元する様子を確認することができた。これはつまり「Niが還元することで酸素脱離が進行する」ということを示しており、Ni<sup>3+</sup>の存在が酸素の安定性を低下させることが予想される。(c) Ni<sup>3+</sup>増加による酸素脱離の促進。

図2. (a) 軟X線吸収分光測定による酸素脱離時の還元挙動の評価。(b) Ni L吸収端スペクトル。酸素脱離初期では、Niが選択的に還元する様子を確認することができた。これはつまり「Niが還元することで酸素脱離が進行する」ということを示しており、Ni3+の存在が酸素の安定性を低下させることが予想される。(c) Ni3+増加による酸素脱離の促進。

 

髪の毛の太さより薄い油水分離膜 ミクロな多孔膜の濡れ性を制御して水と油を効率的に分離

船舶事故などによる重油流出など、油による環境汚染が問題となっています。また特に近年、SDGsの観点から、安全な水を確保するために、廃水などからの油分の除去が重要な課題の一つです。
東北大学材料科学高等研究所の藪浩准教授(ジュニアPI・東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー)、東北大学多元物質科学研究所の和田健彦教授らの研究グループは、ミクロンサイズの孔が蜂の巣(ハニカム)状に空いた厚さ数ミクロンの「ハニカムフィルム」の濡れ性を精密に制御することにより、水と油を効率的に分離できる分離膜の作製に成功しました(図1)。
今回実現した油水分離膜は、厚みが髪の毛の1/10程度しかないにもかかわらず、大量の油水混合廃水を効率的に油水分離することが可能です。また、孔のサイズもミクロンスケールなので、目に見えない小さな油滴まで分離することが可能であると期待されます。本成果は効率的かつ安価で簡便な水質浄化の手法を提供するものであり、清浄な水資源の確保を通してSDGsへの貢献が期待されます。

図1. 作製した油水分離膜の顕微鏡写真と油水分離のしくみ

図1. 作製した油水分離膜の顕微鏡写真と油水分離のしくみ

図2.上下に孔が貫通したハニカムフィルムの走査型電子顕微鏡像

図2.上下に孔が貫通したハニカムフィルムの走査型電子顕微鏡像

社会との連携


産学連携活動(イノベーション・エクスチェンジ)

東北大学多元物質科学研究所の最先端研究シーズと地元企業との出会いの場を設け、社会に開かれ、親しみやすい科学・技術の交流の場の提供と、多元研の研究への理解醸成を目的とした産学連携イベント「多元物質科学研究所イノベーション・エクスチェンジ」を平成 25 年より継続的に開催し、材料(ナノ材料など)をはじめとした、ものづくりに関する情報交換を実施しています。2021 年12 月には、「次世代放射光からつながる広がる可視化ツール」をテーマに、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オンラインで開催し、地元企業だけでなく全国から117名が参加しました。次世代放射光をテーマに、東北大学の研究者による施設に関する解説、研究に関する講演、自治体や企業からは取組について報告がありました。パネルディスカッションでは、「次世代放射光と電子顕微鏡」と題し、講演者本人が参加者からの質問、疑問に答え、企業と自治体、東北大学の研究者間で活発な情報交換を行いました。

産学連携活動

産学連携活動

地域連携活動(学都「仙台・宮城」サイエンスデイ、宮城県民大学開放講座等)

地域社会との連携や交流の促進を目的として、学都「仙台・宮城」サイエンスデイや宮城県民大学開放講座、夏休み大学探検等の教育イベントに継続的に参画し、学都仙台コンソーシアムサテライトキャンパス公開講座での講演や出前授業なども積極的に実施しています。技術室機械工場では、仙台市教育委員会が「自分づくり教育」の一環として推進する職場体験活動を継続して受け入れています。(令和3年度は、新型コロナウイルスの関係で実施できませんでしたが、新型コロナウイルスが終息した後は、実施する予定です。)

地域連携活動

地域連携活動

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