研究所・研究センター一覧

東北大学加齢医学研究所

Institute of Development , Aging and Cancer , Tohoku University
  • 第2部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
川島 隆太
Kawashima, Ryuta
キーワード
加齢制御、腫瘍制御、脳科学、環境ストレス⽼化、スマート・エイジング、医療機器開発
住所
〒980-8575
宮城県仙台市青葉区星陵町4-1

研究所では、「加齢に伴って増加する認知症などの脳加齢疾患および難治がんの克服」を具体的な⽬標として、「加齢制御」、「腫瘍制御」、「脳科学」の三つの研究部⾨、附属施設である環境ストレス⽼化研究センター、医⽤細胞資源センター、⾮臨床試験推進センター、脳MRIセンター、学内共同教育研究施設であるスマート・エイジング学際重点拠点研究センターで研究を推進しています。加齢制御部⾨では、加齢の分⼦メカニズムや、ゲノム損傷修復機構、⽣体防御機構の解明を⾏います。腫瘍制御部⾨では、腫瘍増殖制御のメカニズムを解明しています。脳科学部⾨では、脳の発達と加齢の基礎研究を⾏うとともに、認知症など脳加齢疾患の最先端の診断・治療法の開発を⾏います。以上により、個⼈や社会のスマート・エイジング達成に貢献することを、理念に掲げております。なお研究所は「加齢医学研究拠点」として、全国共同利⽤・共同研究を積極的に推進しています。

令和3年度の研究活動内容及び成果


金属アレルギーにおけるアレルギー抗原の発現機構

金属アレルギーは、かゆみや発赤、腫脹など比較的軽微な皮膚炎症ではあるものの、かぶれなどで皮膚科を受診する患者の3割程度が、金属パッチテストが陽性であるとの報告もあり、潜在的患者は多数を占める。また、歯科金属アレルギーはパラジウムが一因であるとされてきたが、パラジウムは材料学的に安定的な貴金属のため、なぜ病気の原因となるのかが不明であった。
そこで、我々は、パラジウムアレルギーの分子機構について追究した。抗原提示細胞はパラジウム溶液の添加により、MHC(Major Histocompatibility Complex:主要組織適合性複合体)で一過性の細胞内在化が起こり、それに伴う抗原ペプチドの置換がおこること、その結果、アレルギー抗原が発現することで病原性T細胞が活性化し金属アレルギーが発症することが判明した。 免疫機構の根幹は、自己と非自己を区別できることにあり、この機構がうまく働かないと自己免疫疾患やアレルギーを引き起こすとされている。この発見により、パラジウムによる抗原置換による自己反応の誘導が明らかになった。

(生体防御学分野:小笠原康悦)

 

 

がんによって身体に不調が生じるしくみにせまる

我が国では年間37万人以上が根治不能ながんによって亡くなっています。この数は、年間の総死者数の25%以上に相当する数です。医療の目覚ましい進歩をもってしても、がんが今なお主要な死因であり続けていることがわかります。

がんが根治不能となってしまった場合には、がんによる身体への悪影響をできるかぎり抑制することが重要となります。生活の質を保ち、それまでどおりの社会生活を営めるようにすることは、生きる希望につながります。心身の状態が良いほうが抗がん治療の効果が高まる可能性もあります。

一方、がんによる身体の不調を強力に抑制する方法は現時点では存在しません。やせ細っているなど、不調が目に見えてわかるような状態では、全身のさまざまな臓器にさまざまな異常が生じていると考えられます。このような場合、どの異常を抑えれば良いのかを判断することがそもそも難しいのです。私たちは、(1) がんをもつ動物個体の宿主臓器に生じる変容を多階層オミクス解析によって整理し、(2) 各々の変容に重要な宿主側の因子を同定する、という戦略でこの問題に取り組んでいます。

最近、がんが遠隔にある肝臓に作用し、さまざまな代謝異常を誘発していることを見出しました。一例として、がんをもつ個体の肝臓では、尿素回路が抑制されていました。尿素回路はタンパク質分解などによって生じた有毒なアンモニアを無毒な尿素として排出するために必須の代謝回路です。興味深いことに、がん依存的な尿素回路の抑制に肝臓に発現するニコチンアミド代謝酵素が関わっていることを発見しました。ニコチンアミド代謝と尿素回路は一見まったく異なる代謝経路です。これらの二つの代謝経路の連関によってがん依存的な肝臓の代謝異常の一部を説明できる、という新しい発見でした。

上記の研究では、ニコチンアミド代謝酵素や尿素回路では説明できない異常も見つけています。これらの異常には全く別の因子群が関わっているようです。以上から、がんによって生じる身体の不調をひとつひとつ丁寧に整理できるという手応えを得ています。がんが根治不能であっても心身の不調を抑制でき、生活の質を保てる、そのような世の中に貢献できるよう、本研究を推進していきます。

(生体情報解析分野:河岡慎平)

社会との連携


加齢によって増加する大動脈弁狭窄症や人工心臓・ECMO等の機械的補助循環治療時には、血流中に非生理的に高度のずり応力が生じます。この高ずり応力がフォンウィルブランド因子という重要な止血因子を分解することで、止血異常症を呈し、特に消化管出血を来たします。この病態は高頻度に生ずるにもかかわらず、臨床実態や適切な対処法が不明でありました。そこで、2016-2017年度には厚労省難治性執権政策研究事業、2018-2023年度にはAMEDのサポートを得て、研究代表者として多施設共同前向き臨床研究を推進しています。また、加齢医学研究所心臓病電子医学分野(山家智之教授)と共同で、人工心臓・ECMOの大型動物実験を行い、高ずり応力による止血異常症に対する新規の診断・治療法開発を行っています。本研究によって、本疾患の病態や適切な対処法を広く診療現場で知って頂き、適切な対応がなされるようになればと願っております。

(基礎加齢研究分野:堀内久德)

研究所・研究センター一覧

Links

文部科学省日本学術会議国立大学共同利用・共同研究拠点協議会janulogo300-80