研究所・研究センター一覧

東京大学大気海洋研究所

Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo
  • 第2部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
津田 敦
Tsuda, Atsushi
キーワード
海洋、大気、気候変動、海洋生物資源、地球生命圏
住所
〒277-8564
千葉県柏市柏の葉5-1-5

大気海洋研究所は、地球表層の環境、気候変動、生命の進化に重要な役割を有する海洋と大気の基礎的研究を推進するとともに、先端的なフィールド観測と実験的検証、地球表層システムの数値モデリング、生命圏変動解析などを通して、人類と生命圏の存続にとって重要な課題の解決につながる研究を展開しています。

また、世界の大気海洋科学を先導する拠点として、国内外における共同利用・共同研究を強力に推し進めるとともに、これらの先端的研究活動を基礎に大学院教育に積極的に取り組み、次世代の大気海洋科学を担う研究者ならびに海洋・大気・気候・地球生命圏についての豊かな科学的知識を身につけた人材の育成を行っています。

平成28年度の研究活動内容及び成果


滑空する海鳥の飛行から海上の風向・風速を観測

佐藤克文教授(行動生態計測分野)らは、オオミズナギドリ、コアホウドリ、ワタリアホウドリといった海鳥に小型のGPS記録計を装着し、飛行経路を記録した。これらの海鳥の飛行速度が追い風に押されて加速し、向かい風に押し戻されて減速する効果を利用して、海鳥が経験した海上風の風向・風速を5分間・約5kmという詳細な時空間スケールで推定することができた。海鳥の飛行から推定した風向・風速は気象衛星で推定した風情報と強い相関を示し、海上風は気象衛星による風観測の時空間的な空白を補間するように得られた。また、この海鳥を用いた海上風データでは1日数回の気象衛星による風観測では捉えられない風向・風速の時間変化を捉えることができた。これらの結果から、従来の気象衛星による風観測を補間する手法として、滑空する海鳥が新たな海洋観測プラットフォームになることが期待される。 

オオミズナギドリに装着したGPS記録計から得られた経路のうち5分間の経路を示す(A)。飛行経路を見るとオオミズナギドリの飛行速度が増加するところと減少するところがあることがわかる(B)。この5分間の飛行での飛行速度と進行方向の関係から、風向・風速を推定した(C)。ミズナギドリやアホウドリは一見直線的に飛んでいるような場合でも(D)、風からエネルギーを得るために蛇行しているため(E)、進行方向にばらつきができ、風向・風速を推定することができる(F)。

 

熊本地震に伴う地下水中のヘリウム異常と地殻の歪み変化

佐野有司教授(大気海洋分析化学分野)らは、多大な人的被害をもたらした2016年熊本地震の震源域近くで、地震後すぐに深さ1000mの地下水を採取し溶存する気体成分を分析した。その中でヘリウムの同位体比が地震の前後で変化し、帯水層を構成する岩石が地震により破壊されることで、岩石中の放射性起源ヘリウムが地下水に付加されたと推定された。そして地震による地殻の体積歪み変化量が大きいほど、ヘリウムの付加量が多いことを明らかにした。これまでにも大地震の前後で地下水のラドンなど化学成分が変化することは知られていたが、本研究では世界で初めてヘリウムの変化量を地殻の歪み量と関連づけて定量的に評価した。地震が多発する日本において大地震のメカニズムを解明することは防災面からも重要であり、深層地下水や深海堆積物間隙水を利用することで、ヘリウム同位体から観測の難しい地殻の歪み変化を評価できる可能性がある。

地下水中のヘリウム同位体比の変化と地震を起こした断層からの距離の関係。(a)地震前(青)と地震後(赤)のヘリウム同位体比の変化。(b)地震前後のヘリウム同位体比の変化量。負の値は地震後に比が下がったことを示す。(c)岩石から地下水に付加された放射壊変起源のヘリウムの量。断層に近いほど同位体比の変化が大きく、地下水に付加されたヘリウムが多い。

社会との連携


東北復興研究への取り組み

本研究所の附属国際沿岸海洋研究センター(岩手県大槌町)は、東日本大震災で壊滅的被害を受けたものの、復旧・復興に向けての取り組みを継続しています。文部科学省「東北マリンサイエンス拠点形成事業」ではこの国際沿岸海洋研究センターを拠点とし、東北の海洋生態系再生へ向けて海洋生態系遷移のプロセスとメカニズムを総合的に明らかにしていきます。

国際的取り組みへの貢献

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第5次評価報告書」執筆に多数の教員が参加しているほか、ユネスコ政府間海洋学委員会関連事業、北太平洋海洋科学機構、Future Earthやアジア研究教育拠点事業などに参画し、大気海洋科学に関して国際的な協力が必要となる問題の解決に貢献しています。

東京大学海洋アライアンス

東京大学の13の部局、250名以上が参加し、社会から要請される海洋関連課題の解決に向けて、関係する学問分野を統合して新たな学問領域を拓いていく東京大学海洋アライアンスに中核的部局として参加し、海洋リテラシーの普及やシンクタンク機能を果たしています。

広く一般へ向けた研究活動の紹介

「さいえんす寿司BAR」や講演会の開催、一般向け書籍・小冊子の刊行など、大気海洋科学に親しみ研究内容について楽しみながら広く知っていただく活動を行っています。7月の海の日前後に国際沿岸海洋研究センター(岩手県大槌町)、10月に柏キャンパスで一般公開を行っており、柏キャンパスの一般公開は8,000人以上が来場する一大イベントになっています。

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