地震研究所は、1925年に設立されて以来、地震・火山現象の科学的解明とそれらに起因する災害軽減の研究を使命としてきました。プレートの沈み込み帯に位置する日本では、地震・火山活動が世界的に見ても非常に活発です。我々の使命を果たすためには、地震・火山の根源としての地球内部ダイナミクスまで包括的に理解することが必要であり、固体地球科学分野における諸課題に対して観測・実験・理論的アプローチを総合した多面的かつ先端的研究を推進しています。国内では、全国規模の「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」(第2次)等の様々な研究プロジェクトを企画立案し、多数の大学や研究機関と共同研究を行なっています。2022年1月15日のトンガ海底火山噴火による津波の解明と被害調査のため、科学研究費助成事業(特別研究促進費)として「トンガ海底火山噴火とそれに伴う津波の予測と災害に関する総合調査」を国内18機関と共同で2022年2月に開始しました。また、国際地震・火山研究推進室を中心として、外国人研究者の招聘や国際共同研究も積極的に進めています。
地球内部構造は、主に地震波の伝わり方、特に地震波速度に基づいて推定されています。地殻や最上部マントル(日本列島の下では、深さおよそ 60 ㎞程度まで)の領域とその構造は、地震発生場およびマグマ活動の場として、とても重要です。しかし、この領域は多様な岩石(様々な組成をもつ堆積岩、火成岩、変成岩)および液体(組成や物性の異なる水溶液、超臨界流体、マグマなど)からなるため、地震波の伝わり方を解析するだけでは、それらの物質を区別することが難しいのです。地球内部の構造を推定するための地震波以外の指標として、電気伝導度があります。電気伝導度はイオンを多く含む水溶液やマグマなどの液体の存在と連結度に敏感です。しかし、地震波と同じく、岩石や液体の種類や性質を区別することは難しいのです。このため、地震波速度と電気伝導度を個別に解析・解釈するだけでは、地震の発生にどのように流体がかかわっているのか、またどこにどれだけのマグマが潜在しているのかなど、変動現象の理解と予測の基礎となる物質構造のイメージングに大きな不確実性があります。この問題を改善するため、地震波速度と電気伝導度を統合解析する手法を開発しました(図)。
この統合解析においては、地震波速度と電気伝導度のそれぞれが敏感なパラメターに加えて、両者が関与するパラメターが整合的に説明される必要があります。このため、系の自由度が下がり、より確からしい推定が可能になります。また、地表での熱流量観測値に基づく地下温度構造、および地表に流出したマグマや深部流体の化学組成を観測量として加えることで、推定の確からしさを高めることができます。この解析手法を適用することにより、地殻とマントル最上部の構造イメージングが大きく進み、災害要因としての地震・火山活動のしくみの理解に資すると期待されます。
地震研究所の研究活動や教育活動に関する情報をホームページ・パンフレット・広報誌等を通じて紹介しています。広報誌(図1)等はホームページからもダウンロードできます。重要な調査観測や研究成果については、ホームページに掲載するほか、プレスリリースを行うなど一般の方へ広く伝わるよう情報発信をしています。また、地震・火山に関する研究を理解してもらうための動画を作成・公開してYouTubeで公開しています(図2)。地震・火山に関する取材や一般からの問合せへの対応も広報アウトリーチ室で行っています。地震・火山防災の担当者や報道関係者に、地震・火山に関する研究の動向等を紹介するとともに、関係者との意思疎通の促進を図るため、記者との交流を進めています。令和3年度は広報誌で取り上げた内容を紹介する「懇談の場」を2回と、地震・火山噴火予知研究協議会に参加している機関での研究を紹介する「地震・火山噴火予測研究のサイエンスカフェ」を6回開催しました。
地震・火山に関する研究の最先端やその魅力を伝えるため、公開講義や一般公開、施設見学会などを開催しています。また、自治体や教育機関等からの講演依頼、地震研究所の見学 ・ 講演依頼等についても状況に応じて適宜対応しています。国内外の学会においてブースを出展し、地震研究所の研究について国内外の研究者・学生に紹介しています。令和3年度は、新型コロナ感染拡大に配慮し、一般公開は学生実験と講演をライブ配信し、360度カメラを用いた映像「バーチャル地震研」での施設見学としました。感染状況をみつつ、令和3年10月から対面での所内見学、講義などを再開しています。
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