資源植物科学研究所は、基礎科学的な知識の活用による農業生産の改善を目的に1914年に創立された財団法人大原奨農会農業研究所を起源とし、第二次世界大戦後に岡山大学に移管された以降、幾たびかの改組を経ながら農学に関連する教育研究を実施してきました。2010年より「植物遺伝資源・ストレス科学研究」に関する研究を推進する共同利用・共同研究拠点として、植物のストレス応答の基礎研究を進め得られた知見を基盤に遺伝資源を活用し、将来予想される気候に適応できる作物の育種をめざした研究活動を推進しています。地球温暖化による環境の変化がもたらす作物生産の低下と世界人口増加による食糧需要の増加が重なり、近い将来の食糧不足が危ぶまれるなか、当研究所の役割はますます重要性を増していると認識しています。
麦芽として利用されるオオムギは、その品質の均一化のため種子休眠が短く一斉に発芽する品種が好まれます。一方、日本などの収穫期に雨の多い地域では、収穫する前に種子が発芽する「穂発芽」がしばしば発生します。本研究では、ゲノム編集技術を利用し、オオムギの種子休眠を支配するQsd1およびQsd2遺伝子の一部を改変し、休眠を長引かせることに成功しました。人工的な穂発芽処理においても、単独または二重変異体は、発芽が認められませんでした(図1)。本研究の成果は、穂発芽に強く醸造利用にも適したオオムギの品種の改良に大きく貢献します。
植物は土壌からケイ素を吸収し体表にシリカとして沈着することで害虫や病原菌などの生物学ストレスや高温、乾燥、倒伏などの非生物学ストレスへの耐性を獲得しています。2006年に当研究所の馬建鋒教授らが発見したイネの根で働くケイ酸チャネルタンパク質Lsi1の立体構造を、X線結晶構造解析で決定し(図2a)Lsi1が選択的にケイ酸を取り込む仕組みを明らかにしました。Lsi1と進化上共通の祖先をもつ水チャネルでは4つのアミノ酸がチャンネルを構成していますが(図2c)、Lsi1では5つ目のアミノ酸(65番目のThr)が水分子と結合してケイ酸の透過に最適なチャンネルを構成していることがわかりました(図2b)。このような知見により、作物の生産安定性、さらには栄養や安全性の向上がはかられると期待されます。
新型コロナ感染症への対策を行いながら、以下の様な取り組みを実施しました。グローバルに活躍できる若手人材育成のための植物科学に関する国際ウェブフォーラムを、令和3年9月6、7日に開催しました。オンラインツールを使用して22か国229名が参加し、国内外の著名な研究者による招待講演、国内外の若手研究者の口頭発表、ポスター発表と、活発な意見交換等が行われた。さらに、共同研究の推進と研究者交流のための植物ストレス科学研究シンポジウム「夢が広がる新植物の作出へ」をオンラインにて開催しました。その他、地元高校生を対象に植物科学を紹介する「サマーサイエンススクール」は、今年も夏休みを利用した実験体験はできませんでしたが、オンラインで最新研究や実験方法について紹介することで幅広い交流の場を提供しました。また、岡山大学文明動態学研究所と共に、人文知応援フォーラム代表の大原謙一郎氏をお招きし、フォーラム「文明と植物」を開催し、人文社会学と植物科学の接点に関して活発な議論が交わされました。
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