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岡山大学異分野基礎科学研究所

Research Institute for Interdisciplinary Science, Okayama University
  • 第1部会

研究所・センターの概要


所長
沈 建 仁
Shen Jian-Ren
キーワード
数理科学、量子宇宙、光合成、進化、構造生物学、錯体化学、超伝導、有機エレクトロニクス材料、理論科学
住所
〒700-8530
岡山市北区津島中三丁目1番1号
従来の研究分野間の壁を乗り越える新しい学問体系の構築を目指す

異分野基礎科学研究所は、岡山大学においてこれまで活発に展開されてきた量子宇宙研究、光合成・構造生物学研究ならびに超伝導・機能材料研究を、統一的かつ組織的に遂行するために2016年(平成28年)に設置された新しい研究所です。上記の研究テーマは、素粒子物理学、生物科学、固体物理・材料科学の研究者によって、それぞれ独立に取り組まれてきましたが、本研究所では異なる分野の研究者の視点を融合して新たな学問体系を構築することを目指しています。2021年(令和3年)3月には異分野基礎科学研究所の研究棟新営工事が竣工し、これまで学内に点在していた研究室を棟内に集約したことで、それぞれの研究分野の深化発展だけでなく、さらなる異分野融合研究の発展・推進を図っていきます。また、2023年(令和5年)4月1日に、研究所附属の「国際構造生物学研究センター」が設置され、岡山大学独自に導入するクライオ電子顕微鏡を中心に、大学全体の構造生物学関連研究者を結集して、同分野の研究を展開・進化していきます。

令和4年度の研究活動内容及び成果


クライオ電子顕微鏡を用いたタンパク質複合体の構造解析

クライオ電子顕微鏡を利用して、光合成における大麦のサイクリック電子伝達系を担っている光化学系I (PSI-LHCI)-NDH複合体(PSI-LHCI-NDH)の構造(図1)(Nature、601、649-654、2022)、灰色藻由来独特のPSI四量体の構造 (Nat. Commun. 13、1679、2022)、珪藻光化学系II (PSII)-光捕集アンテナ(PSII-FCPII)の複合体の構造 (Nat. Commun. 13、1764、2022)、等を解析し、それぞれの複合体が担う光エネルギーの吸収、伝達や電子伝達の機能について新しい知見を得た。

図1. 大麦由来PSI-LHCI-NDH複合体のクライオ電顕構造

図1. 大麦由来PSI-LHCI-NDH複合体のクライオ電顕構造

古細菌由来チューブリン、アクチンの構造解析

X線結晶構造解析及びクライオ電子顕微鏡構造解析により、古細菌の一種Odinarchaeonからのチューブリンの構造を決定し(図2)、真核生物と極めて似たサブユニット構造とGTB加水分解メカニズムを有していることが明らかになり、真核生物のマイクロチューブの進化について重要な知見を得た (Sci. Adv.、8、10.1126/sciadv.abm2225、2022)。

図2. 古細菌の1種由来チューブとマイクロチューブのアセンブリ機構

図2. 古細菌の1種由来チューブとマイクロチューブのアセンブリ機構

社会との連携


岡山大学公開講座『理論化学から見た身近な現象』

2022年(令和4年)11月12日に公開講座「理論化学から見た身近な現象」を実施した。対象は高校生、大学生、一般の方で、講座の前半では、水と水溶液の物性に関する基礎的事実を紹介し、分子間力に基づいて液体の物性が如何に理解されてきたのかを具体例を交えながら解説した。後半では、水中でのタンパク質構造形成に関して、60年代から現在まで信じられてきた疎水性相互作用に基づく古典的考え方と、当研究所が開発した理論計算に基づく新たな理解について紹介した。その中で、水は疎水基の会合に不利に働き、タンパク質の天然構造安定性は、疎水基を含む各残基間の直接相互作用に起因することを説明した。

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