異分野基礎科学研究所は、岡山大学においてこれまで活発に展開されてきた量子宇宙研究、光合成・構造生物学研究ならびに超伝導・機能材料研究を、統一的かつ組織的に遂行するために2016年(平成28年)に岡山大学に設置された新しい研究所です。上記の研究テーマは、素粒子物理学、生物科学、固体物理・材料科学の研究者によって、それぞれ独立に取り組まれてきましたが、本研究所では異なる分野の研究者の視点を融合して新たな学問体系を構築することを目指しています。令和3年3月には異分野基礎科学研究所の研究棟新営工事が竣工し、これまで学内に点在していた研究室を棟内に集約したことで、それぞれの研究分野の深化発展だけでなく、さらなる異分野融合研究の発展・推進を図っていきます。
光合成は,植物や藻類が太陽の光エネルギーを利用して水と二酸化炭素から有機物を作り,酸素を放出する過程です。この過程で,水を分解し,酸素を作る反応は光化学系II(PSII)という膜タンパク質複合体が触媒しています。この反応の機構を解明するため,異分野基礎科学研究所の沈 建仁教授のグループは,大阪市立大学と共同でX線結晶構造解析によってPSIIの構造を1.9 Å分解能で解析し(図1),さらに理化学研究所,京都大学等のグループと共同でX線自由電子レーザー(XFEL)を用いてその無損傷構造を解析しました。これらの構造解析によって,水分解の直接の触媒はMn4CaO5クラスターであり,このクラスターは歪んだイス型の構造をしていることを突き止めました(図2)。さらにポンプープローブ実験手法を用いて,XFELの極短パルスレーザーを利用することによって,水分解反応の中間状態,S2, S3状態の構造を解析し,2閃光照射によって作られるS3状態で新たな酸素原子O6が挿入され,それがMn4CaO5クラスター中の酸素原子の一つO5の近傍に位置することが分かり(図2),O5とO6の間で酸素-酸素結合が作られ,酸素分子として放出されることが明らかになりました。
天然光合成における水分解触媒の構造と反応機構の解明により,太陽光エネルギーを利用した水分解・水素生産のための人工触媒の製作にも重要な指針を与え,人工光合成の実現が期待される。
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