接合科学研究所は、「ものづくり」に欠かせない溶接・接合技術のイノベーション創出を通して、人類社会に貢献することを目指す、我が国で唯一、世界屈指の溶接・接合科学に関する総合研究所です。その原点は1944年発足の工学部熔接工学科にあり、我が国の高度経済成長期に溶接工学関連の研究者・技術者の強い要望に応えた日本学術会議の勧告に基づき、1972年に大阪大学の独立した部局として「溶接工学研究所」が設立されました。これは、工学系で我が国初の全国共同利用研究所として、溶接工学に関する総合研究を目的とするものでした。そして、科学技術の着実な進歩と発展、ものづくりの変革とグローバル化の大きな潮流の中で、「つなぐ」ことへの産業界の要望と期待がより高度に多様化された結果、1996年に「接合科学研究所」に改組・改称されました。また、2009年には文部科学省から「接合科学共同利用・共同研究拠点」として認定され、国内外の大学・中立機関と共同研究ならびに拠点間連携研究を推進するとともに、大阪大学憲章にも掲げられている「実学の伝統」を生かして産学共創事業を展開しています。このような強みを生かし、関連分野の研究者コミュニティに開かれた世界の中核拠点としての役割を果たしつつ、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成を図っています。
拠点間連携では、6大学6研究所が参画する「国際・産学連携インヴァースイノベーション材料創出プロジェクト-DEJI2MAプロジェクト-」事業が令和3年度にスタートしました。本事業は、多様な社会的要望や地球規模課題を「コア出島」で課題設計し、6大学6研究所の専門性の垣根を越えた「マルチ出島」を通じて人と知の好循環により課題解決を図ることでイノベーション創出を加速し、社会実装を迅速化するものです。共同利用・共同研究拠点を含む全国的な拠点間のネットワーク連携による異分野横断的新学術分野の構築を目標にしています。他方、国際的な拠点活動の観点では、接合科学共同利用・共同研究拠点の国際共同研究員制度(JIJReC)、および文部科学省特別経費による「広域アジアものづくり技術・人材高度化拠点形成事業」を活用し、国際共同研究を展開するとともに、「カップリング・インターンシップ(CIS)による実践型グローバル人材育成」プロジェクトを推進しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響を大きく受けつつも、タイ、ベトナム、インドネシア及び日本の4カ国の日系企業・海外連携大学学生とそれぞれオンラインで結び、創意工夫の下で全工程を無事に完遂し、グローバル人材育成を国内外で継続しました。国際産学共同研究では、ベトナムのハノイ工科大学に設置したJWRIオフィス(本研究所ASEANハブ拠点)が核となり、また「大阪大学接合科学研究所ベトナム溶接研究会」(2018年11月発足)を活用しながら、ハノイ工科大学、本研究所と民間企業による国際産学連携の基盤を整備しました。現在では、在ベトナム日系企業を中心に民間企業40社が当研究会に参画しています。この基盤を活用して2021年度に1件の国際産学共同研究の締結を実現し、合計4件になりました。今後、国際協力機構(JICA)と研究者コミュニティの一つである(一社)日本溶接協会と協力し、ベトナム現地の産業界も巻き込んで、溶接管理技術者資格認証制度を利用した高度溶接技術者育成のための教育システムの構築にも展開したいと考えています。
■オープンイノベーションの展開
「ものづくり」の基盤となる溶接・接合技術の学理を極める世界屈指の国際研究拠点としての強みを生かし、共同研究および拠点間連携研究から生まれる革新的な技術シーズの産業展開を図るため、産官学等の戦略的連携・共創を強化し、新たな価値創出に繋がるイノベーションを展開しています。とりわけ、「産」と「学」が組織的に連携して共に「新たな知」を創造する産学共創の場として、3協働研究所および2共同研究部門の体制を整え、基礎研究から社会実装まで切れ目なくスピーディに実行できる、溶接・接合に関わる「産学共創のイノベーティブ拠点」の役割も果たしています。
■研究成果等の公開・社会への発信
共同研究成果は、産学連携シンポジウムや、接合科学共同利用・共同研究拠点で取り上げた課題(先導的重点課題)をメインテーマとした東京セミナーを開催して、社会に発信・公開しています。特に、産学連携シンポジウムは、地域コミュニティとの連携を促進するため、大阪商工会議所および生産技術振興協会との共催で実施し、研究シーズを発信するとともに、産業界のニーズを捉えた実社会とのマッチングを図っています。また、技術者向けの教材として、デジタル・コミック「浪速博士の溶接がってん!R」を本研究所が企画、制作に協力し、(一社)日本溶接協会が配信しています。スマートフォンやタブレット端末でも閲覧可能なため、溶接に関わる技術者・研究者の初学者向け教材として好評を博しています。
また、一般市民を対象とした新しい情報発信として、大阪大学21世紀懐徳堂とのコラボレーションによる「接合科学カフェ」を企画・開催するとともに、大阪モノレールの駅で本研究所PRポスターを掲示しています。日常生活の中に隠れていた数々の「接合」を市民の皆さんに紹介し、「つなぐ」技術が安心・安全な社会を実現する上で重要な役割を果たしていることを社会に認知してもらえるよう努めています。
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