研究所・研究センター一覧

名古屋大学宇宙地球環境研究所

Institute for Space–Earth Environmental Research, Nagoya University
  • 第1部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
草野 完也
Kusano, Kanya
キーワード
太陽地球系科学、宇宙線、太陽、太陽風、電磁気圏、超高層大気、気象学、海洋学、水循環、地球表層、鉱物学、考古学、年代測定
住所
〒464-8601
愛知県名古屋市千種区不老町
地球・太陽・宇宙をつなぐ国際拠点

本研究所は、名古屋大学に所属していた3つの研究組織(太陽地球環境研究所、地球水循環研究センター、年代測定総合研究センター)を統合して、2015年10月に創設された附置研究所です。全国でただ一つ、宇宙科学と地球科学を結び付ける共同利用・共同研究拠点として活動しています。宇宙地球環境研究所では、地球・太陽・宇宙を一体としたシステムとしてとらえ、そこに生起する多様な現象のメカニズムや相互関係の解明を通して、地球環境問題の解決と宇宙に広がる人類社会の発展に貢献することをミッションに掲げ、室内実験や地上/海洋/人工衛星観測、さらに、これらのデータ解析と理論/モデリングを組み合わせた研究を多角的に展開しています。7つの研究部(総合解析、宇宙線、太陽圏、電磁気圏、気象大気、陸域海洋圏生態、年代測定)からなる基盤研究部門と、国際連携研究センター、統合データサイエンスセンター、飛翔体観測推進センターで構成される体制のもと、全国に附属観測所を配備し、世界の研究機関と学術協定を結んで、国際的な拠点活動を展開しています。

令和3年度の研究活動内容及び成果


オーストリアの修道院の歴史的観測から明かされるダルトン極小期の太陽活動

太陽活動の示標でもある太陽表面に現れる黒点の数は約11年ごとに変動することが知られています。さらに、極端に黒点数が少ない時期が長期に亘って続くこともあり、そうした太陽黒点の極端な極小期(グランド・ミニマム)の発生メカニズムは未だ解明されていません。また、黒点活動の極小化が地球の環境変動にも影響を与える可能性も示唆されています。
宇宙地球環境研究所の早川尚志特任助教らの研究グループは、オーストリアのウィルテン修道院に所蔵されるシュテファン・プラントナーの黒点観測記録を分析し、1790年ごろから数十年継続したダルトン極小期の中盤の太陽活動を黒点群数と黒点座標の観点から復元しました。この結果は、同チームによるクレムスミュンスター観測所の黒点観測データや当時の太陽コロナの図像記録の検討結果と整合的で、ダルトン極小期の太陽活動が17世紀半ばから18世紀初頭にかけて現れたマウンダー極小期のものと大きく異なっていたことを裏付ける結果になります。この研究成果は、太陽活動の長期変動やその地球環境への影響が明らかにしていくうえで重要な知見を与えるものです。

論文情報:
Hayakawa et al.
Stephan Prantner’s Sunspot Observations during the Dalton Minimum
The Astrophysical Journal, 919, 1, id.1, 8 pp., 2021.
https://doi.org/10.3847/1538-4357/abee1b

シュルテン修道院に所蔵されるシュテファン・プラントナーの黒点観測記録<br>MS A07 03 07, f. 27b; ©Archive Premonstratensian Canons monastery Wilten

シュルテン修道院に所蔵されるシュテファン・プラントナーの黒点観測記録
MS A07 03 07, f. 27b; ©Archive Premonstratensian Canons monastery Wilten

 

社会との連携


森林火災が北極大気を加熱する黒色炭素粒子の重要な発生源であることを実証〜北極温暖化の将来予測に貢献〜

化石燃料の燃焼や森林火災などにより大気に放出される黒色炭素エアロゾル(BC)は、太陽放射を吸収し大気を加熱する効果を持ちます。北極域に存在するBCの多くは北極圏外から輸送され、北極域の温暖化や雪氷の融解促進に寄与していると考えられていますが、観測は限られており、さまざまな発生源の寄与や気候影響の推定には大きな不確実性が残っています。
宇宙地球環境研究所の大畑祥助教の研究グループは、東京大学・気象庁気象研究所・国立極地研究所との共同研究で、春季の北極大気中のBC濃度の年々変動が、中緯度の森林火災の発生規模の年々変動により強く支配されていることを新たに解明しました。本研究では、航空機を用いた国際共同観測により、北極域の春季のBCの鉛直積算量の年々変動が、中緯度の森林火災の発生数の変動とおおむね一致することを明らかにしました。また、数値モデルによるシミュレーションと観測の比較から、これまで想定されていた森林火災によるBCの排出量は、大幅に過小評価されている可能性が示されました。本研究で得られた観測結果は、BCの気候影響を評価するさまざまな数値モデルの検証と改良に役立てられ、より正確な気候影響の推定に結びつくことが期待されます。

論文情報:
Ohata et al.,
Arctic black carbon during PAMARCMiP 2018 and previous aircraft experiments in spring Atmospheric Chemistry and Physics, 21, 15861–15881, 2021.
https://doi.org/10.5194/acp-21-15861-2021

2018年の航空機観測(PAMARCMiP)時に機内から撮影された写真。汚染大気の層が見られた。模式図は中緯度から北極域に輸送されるBCを表す。

2018年の航空機観測(PAMARCMiP)時に機内から撮影された写真。汚染大気の層が見られた。模式図は中緯度から北極域に輸送されるBCを表す。

 

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