糖鎖は我々の全ての細胞の表面を覆っています。そして、個々の細胞の個性を決め、細胞のコミュニケーションを制御することで、様々な生命現象や疾患に密接に関わっています。糖鎖は膨大な構造多様性ゆえその解析は困難でした。本研究所は、名古屋大学と岐阜大学における世界トップレベルの糖鎖生物・糖鎖医学、糖鎖化学・イメージング分野の研究者が集結し、統合的な糖鎖研究をすることで生命の本質を理解する国際研究所として組織されました。糖鎖の情報を読み解くことで、生命科学の革新につながる基礎研究を推進します。また、国際的な視野と研究能力を備えた次世代の糖鎖研究リーダーの育成を目指しています。さらに、本研究所は、共同利用・共同研究拠点:糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点(J-GlycoNet)と、生命科学領域において初の文部科学省大規模学術フロンティア促進事業の「ヒューマングライコームプロジェクト(英語名:Human Glycome Atlas Project:HGA)」において中心的な役割を担っています。
生命科学領域において初の文部科学省大規模学術フロンティア促進事業の「ヒューマングライコームプロジェクト(英語名:Human Glycome Atlas Project:HGA)」を自然科学研究機構、創価大学と共同して開始しました。プロジェクトでは糖鎖情報の基盤整備として、ヒトの身体に存在する糖鎖構造情報の網羅的取得、疾患と糖鎖の関係性解明、糖鎖の作られる仕組みの解明とそれらの情報を活用できる糖鎖ナレッジベース(TOHSA)の構築を行っています。
令和4年度から、東海国立大学機構 糖鎖生命コア研究所、自然科学研究機構 生命創成探究センター、創価大学 糖鎖生命システム融合研究所は、文部科学省の「共同利用・共同研究拠点:糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点(J-GlycoNet)」として活動を開始しました。「課題融合型研究」3件と「支援型糖鎖共同研究」として探索型:21件、加速型:16件の糖鎖融合研究を実施しました。
上記の2つの活動を主軸に活発に研究を進めており、様々な糖鎖新知見を見出しています。Morten Thaysen-Andersen特任教授とRebeca Kawahara特任准教授らの国際共同研究チームは、免疫を担う好中球の成熟過程における糖タンパク質の網羅的解析を行い、非常に珍しい糖鎖構造変化を見出しました(DOI:10.1073/pnas.230386712)。この成果は、免疫応答における糖鎖機能の解明と糖鎖の応用利用につながると期待されます。
一般向けに「iGCORE サイエンスカフェ」を開催し、糖鎖に関する基礎からヒューマングライコ―ムプロジェクトを題材に分かりやすく説明し、参加された市民と対話を行い、社会連携を推進しています。また、「糖鎖技術研究セミナー」を年2回開催し、産業界と連携して、糖鎖研究の拡大とイノベーション創出を図っています。さらに、本研究所で創出された研究シーズ、J-GlycoNet 、HGAを紹介する場として展示会(BioJapan2023や各種学会)に出展し、社会実装や共同研究創出の機会の増大に貢献しています。
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