衛星によるリモートセンシングは、広域の地球環境を同時に、かつ繰り返して観測できるため、地球環境のモニタリングにおいて必須の技術となっています。環境リモートセンシング研究センター(Center for Environmental Remote Sensing, CEReS) は1995年に設立され、次の三つのミッションを持って研究活動を行っています。
CEReSは国内の関連コミュニティ機関と積極的に連携して共同研究を行い、データの観測・解析・公開・共有を通じて診断的な地球環境科学研究の発展に貢献しています。また、アジア諸国等との国際共同研究や大学院教育等を通じたリモートセンシング研究者の育成にも力を注いでいます。
毎年我が国に膨大な被害をもたらしている線状降水帯、豪雨、台風のような気象災害の予測、監視、制御をするために、当センターでは音波やマイクロ波などによる減災サスティナブル気象制御システムとシミュレーターを開発しています。また、昼夜を問わず、また、雲や霧があってもそれを透過して被災地の観測をできる、航空機や無人航空機や成層圏プラットフォームシステム(HAPS)や小型衛星のマルチプラットフォームに搭載できる独自の円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)とノイズレーダを開発しました。今後はHAPSなど搭載SARとAIによる被災地をはじめ、植生変化、豪雨時の地表面状態、精密農業、地区分析管理等の準リアルタイムモニタリングなどへの応用が期待できます。
最大の地球環境問題のひとつとして人類の持続可能性までも脅かしている気候変動の影響が「気候危機」として世界各地で顕在化してきています。気候危機の原因が人間活動にあることは疑う余地はなく、その緩和および適応に向けた対策が急務となっています。地球大気環境変動研究において、リモートセンシング技術は地球規模で長期にわたって均質なデータをもたらす唯一の方法であり特に重要です。当センターは独自の世界最先端のリモートセンシング技術・データなどを基盤に、国際地上リモートセンシング観測網を主導して広く国内外の研究機関と国際共同研究を進めています。衛星リモートセンシングも組み合わせ、ローカルだけでなくグローバルにも顕在化している様々な予測困難な現象に特に着目して、地球大気環境変動研究を推進しています。
図. CEReSが主導している2つの国際地上観測網(SKYNET、A-SKY)。
ひまわりでよく知られている静止気象衛星は、10分に1回といった従来の衛星観測に比較して非常に高い頻度で地球表層を観測します。さらに最新の静止気象衛星では、観測性能が向上し、1km解像度のカラー画像を取得でき、陸域モニタリングへの応用が可能になっています。世界の静止気象衛星を国際共同研究によりネットワーク化し、植生変化など陸域のモニタリングを推進しています(https://ceres.chiba-u.jp/geoland/)。地表面反射率や地表面温度など陸域モニタリングに利用できるデータセットを提供しています(https://ichiilab.weebly.com/datasets.html)。
2022年度から開始したムーンショット目標8おいて、海上豪雨生成によって陸域集中豪雨被害を緩和させるためのコア研究課題を推進しています。気象や防災に加え、数理・情報・哲学・法学研究者や、損害保険・気象予報業務会社など、産学・異分野横断研究グループで推進しています。これまでに数値計算に基づき、実現可能な大気への介入により、集中豪雨の緩和により経済被害を低減させる可能性が示されつつあります。2025年度以降は、制御数理手法を含めた介入の最適化を図ると共に、屋外での小規模実験への準備を進めていく方針です (https://beyond-predictions.com)。
気候変動の適応策として期待される農業保険は食料安全保障のための重要な社会インフラとして運用されていますが、運用後間もないインドネシアでは多くの課題があり、最大の課題は、農業保険の中核である損害評価の迅速化と評価結果の客観性にありました。JST/JICA-SATREPSプロジェクトでは水稲を対象とし、迅速で客観性の高い損害評価手法の構築と社会実装を行いました。従来の損害評価は評価員が目視で行っていましたが、プロジェクトではUAVや衛星データ等の空間情報を駆使した評価プロセスを創りました。検証の結果、評価時間の短縮、労力削減、客観性が確認され農業保険における損害評価手法としての有効性が示され、インドネシア農業省作物保護局から高い評価を得ることができました。
https://www.jst.go.jp/global/kadai/hyouka/pdf/h2804_indonesia_terminal-evaluation-report.pdf
2022年以降、GoogleやNVIDIAといった世界的IT企業も含め、AI天気予報が急速に進みつつあります。AI天気予報モデルは、データ駆動型アプローチに基づいて将来を予測する強力なツールになりつつあります。CEReSでは、静止気象衛星ひまわり等、研究センターの保有する大規模地球観測データに基づいたAI天気予報システムの開発に取り組んでいます。これまでの成果の発展として、2025年から日本気象協会と共同研究契約を締結し、AI天気予報モデルの開発と実運用に向けた研究を開始しました。この活動により、CEReSの開発した予報システムの社会実装に向けて取り組んでいます。
CEReSでは、ひまわり8/9号データをリアルタイムで処理し、精密な位置補正を行い、ユーザが使いやすい座標系に変換したデータを公開しています。データはどなたでも利用可能であり、4大学連携VL講習会での演習課題等を通じ利用促進に努めています。リアルタイム動画は次のサイトでご覧いただけます。http://quicklooks.cr.chiba-u.ac.jp/~himawari_movie/index.html
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