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北海道大学北極域研究センター

Arctic Research Center, Hokkaido University
  • 第1部会

研究所・センターの概要


センター長
杉山 慎
Sugiyama, Shin
キーワード
北極域、大気圏・水圏、陸圏、雪氷圏、環境工学、衛星観測・モデリング、北極ガバナンス、北極域の人と社会
住所
〒001-0021
北海道札幌市北区北21条西11丁目
北極域の持続可能な開発・利用・保全の推進

北極域は地球で最も急速な温暖化が進む地域です。その影響を受けて、海氷面積が著しく減少し、氷河氷床の融解が海水準の上昇に大きな影響を与えています。また北極に起因する大気循環の変化が、日本を含む中緯度に異常気象をもたらしています。その一方で、北極海航路の活用、資源開発、観光活動など、自然環境の変化が新たな可能性と利権を生じています。その結果、北極域は、気候変動だけでなく、社会、経済、政治を巻き込んだ複雑な問題に直面しているのです。北海道大学・北極域研究センターでは、以下3つのビジョンを掲げ、自然環境と社会にまたがる総合的な研究を行い、持続可能な北極域の将来に貢献します。
①北大の特色を生かした北極域のフィールド研究の推進と国際ネットワークの拡大
②異分野連携による超学際的北極域研究の創出
③社会・産業構造変革を創造するための産学官プラットフォームの構築

令和6年度の研究活動内容及び成果


北極域先住民族が利用する野生食品に気候変動と土地利用の変化が与えるインパクト

野生食物に依存する伝統的な食糧システムは、先住民族が暮らす北極域の農村で重要な役割を果たしています。野生食物の多様性が世界的に減少する中、気候と環境の変化がこの食糧システムに与える影響を理解するために、ロシア・サハ共和国の先住民集落において学際的研究を実施しました。調査対象となった集落では、野生食物への依存度は地域的なばらつきを示しています(図1A)。その一方で数値モデル予測では、気候変動と土地利用の変化によって、食料種の分布が変化することが示されました(図1B)。つまり一部の種が消滅する一方で新しい種が定着するため、各地域で利用できる野生食物が変化して地域社会に大きなインパクトが予想されます。したがって、伝統的な食糧システムを保全し持続的に利用するために、より強固で包括的な管理体制と政策的取り組みが必要といえます。北極圏研究センターのホルヘ・ガルシア・モリノス准教授による本研究は学術誌『PNAS Nexus』に掲載されました(https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae523)。

サハ共和国における、(A)各地域の食品消費に野生食品が占める割合、 および(B)現代(1991~2010年;左)と将来(2041~2060年 SSP 1.26;右)における野生食物種の豊かさ。(C)左:サハ共和国・エヴェンク人居住区の伝統食品(写真:Varvara Parilova)、右:北海道大学で開催された国際研究プロジェクト年次総会。

サハ共和国における、(A)各地域の食品消費に野生食品が占める割合、 および(B)現代(1991~2010年;左)と将来(2041~2060年 SSP 1.26;右)における野生食物種の豊かさ。(C)左:サハ共和国・エヴェンク人居住区の伝統食品(写真:Varvara Parilova)、右:北海道大学で開催された国際研究プロジェクト年次総会。

社会との連携


北極域実践コミュニティの構築 ―超学際的対話の積み重ねで日本社会の北極との向き合い方を提案―

北極域研究加速プロジェクト(ArCS II, 2020-2024年度)の研究課題のひとつである国際政治課題の社会実装の試みとして、北極域で研究やビジネスに従事する専門家や関心を持つ学生や市民からなる超学際的なコミュニティを立ち上げ、北極域との向き合い方をテーマに会員同士が互いに学びあう場を提供してきました。対話を重ねる度に、「北極は遠い」という意識が日本人にとって北極の問題を考える上での大きな課題であることがみえてきました。コミュニティの最終年度には、北極の近未来シナリオから私たちの暮らしがどう変わるかを考えるワークショップを行い、4つのシナリオにまとめて「Access to the ARCTIC」として公表しました。本冊子はワークブックとしても活用できるようになっています。北極域との物理的距離は縮められませんが、関心や興味を持つことで精神的な距離が縮まります。そのきっかけ作りとして本冊子が広く活用されることが期待されます。冊子は北極域研究センターのHPにて公開しています(https://tdcop.arc.hokudai.ac.jp/3753/)。

(A)冊子「Access to the ARCTIC」、(B)ワークショップの様子、(C)近未来の北極域からみた4つのシナリオ。

(A)冊子「Access to the ARCTIC」、(B)ワークショップの様子、(C)近未来の北極域からみた4つのシナリオ。

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