北極圏とその周辺域(北極域と呼びます)は、地球温暖化の影響をもっとも顕著に受ける地域の一つと言われています。事実、過去35年間で夏季の海氷面積が3分の2程度に減少する海氷後退が観察されています。こういった現象は、北極域の気候や生態系に影響を及ぼすだけではなく、水や大気の循環を通じて地球規模の変異を起こす可能性があります。一方で、資源開発の活発化や北極海の航路としての活用など、北極域の環境変動は、新たな利権を生み出す側面も持っています。したがって、北極域は、環境問題にとどまらず、政治や経済面での数多くの問題に直面している地域と言えます。
センターのビジョンは、北極域の持続可能な開発・利用・保全の推進に寄与することで、次の3つのミッションを掲げています。
①北大の特色を生かした北極域のフィールド研究の推進と国際ネットワークの拡大
②異分野連携による超学際的北極域研究の創出
③社会・産業構造変革を創造するための産学官プラットフォームの構築
本センターを中心とする研究グループは、2000年から2019年にかけての26種の海洋生態系における上位捕食者群と43種の中間捕食者群の分布パターン・種構成・潜在的な種間関係に関する資料を分析した結果、近年の北極圏における生物多様性と群集の変化が広範囲に生息する上位捕食者群による生息域の極域への拡大によって特徴づけられることを明らかにしました。
さらに研究グループは、北極海を8つの海域に分けて夏季の海氷の影響を解析し、生物多様性への影響は海域によって対照的であり、また、海氷の変化に特に脆弱な海域を同定することに成功しました。特に、夏季に海氷が少ない海域では、北極海の入り口海域で種数は増加傾向を示し出口で減少傾向を示していたことを明らかにしました。この発見は、北極海で悪化する気候変動の下、生物多様性の保全と生物資源管理を強化する必要を強調しています。
本研究成果は、国際共著論文 ”Pan-Arctic marine biodiversity and species co-occurrence patterns under recent climate” としてScientific Reportsに発表されました。
本センターでは、北極海および北太平洋海域をフィールドとした持続可能な観光クルーズ産業の可能性や、海氷状況が長期的に緩和している北極海の安全で持続可能な産業利用の可能性と課題解決について、産業界、公的セクター及び自治体と連携して、研究を実施しています。その経過や成果は、公開セミナー等のイベントならびに、自治体や経済・産業団体による研究会などの活動の場を通じて共有しています。また、関係分野の国際的な機関や経済団体と国内事業者とのネットワークづくりを行い、経済的・実務的分野を主体とする国際セミナーや実証試験の実現にも協力してきました。
北海道大学
帯広畜産大学
東北大学
弘前大学
筑波大学
群馬大学
千葉大学
東京大学
東京医科歯科大学
東京外国語大学
東京工業大学
一橋大学
新潟大学
富山大学
金沢大学
静岡大学
名古屋大学
京都大学
大阪大学
神戸大学
鳥取大学
岡山大学
広島大学
徳島大学
愛媛大学
高知大学
九州大学
佐賀大学
長崎大学
熊本大学
琉球大学