遺伝子病制御研究所は,免疫科学研究所と医学部附属癌研究施設が統合され,「遺伝子の異常が関わるヒト疾患の病因,病態解明およびその予防・治療法の開発」を目標として2000年に設置されました。病因,病態,疾患制御,フロンティア研究ユニットなどの5つの大研究部門に渡る14の研究分野、研究室と附属動物実験施設,感染癌研究センター等から構成されています。2008年には「細菌やウイルスの持続性感染により発生する感染癌の先端的研究拠点」(感染癌拠点)として文部科学省共同利用・共同研究拠点に認定され、2022年度さらに6年間更新されました。感染癌は我が国の癌死亡者の20%以上の原因とされ,感染癌拠点では,新規の革新的な診断法,治療法の開発,より広い研究者のネットワークの形成,さらに新興感染症・新規感染癌への備えが大切で,感染,免疫,癌を含む周辺領域研究からそれらを解決することも研究所の研究目的です。また,国際的に活躍できる若手研究者の育成に取り組み,北海道大学独自のフロンティア精神をもって,独創的な切り口で,基礎医学,生命科学に新しいコンセプトを国際的に切り拓きます。
感染癌誘導のプロセスには,少なくとも感染,癌化,免疫反応,感染癌形成,炎症反応があります。そのプロセスの中で,感染癌になる細胞では,染色体構造と転写,細胞分裂,細胞膜性質,オートファジーなどの変容も見られます。遺伝子病制御研究所では,これらの研究課題に対応する第一線の研究者が,基礎研究・応用研究分野で独自のコンセプトを発表し,感染癌の撲滅を目指して日夜研究を実施しています。実際に,これらの研究活動から以下の遠隔炎症誘導機構の成果など国際的にもインパクトのある論文を発表して,令和3年度には,AMEDムーンショット研究の代表者を輩出し,さらに,大学の機能強化事業である「フォトエキサイトニクス研究拠点」,「若手研究支援事業」などを展開しました。また,国内外の研究者と感染癌と周辺領域の共同研究を実施し,感染癌関連の研究者が集まる共同利用・共同研究拠点シンポジウムを主催して研究者のネットワークの形成を推進しています。遺伝子病制御研究所では,北大病院の研究者と実施した感染癌解析データ,炎症の基盤であるIL-6アンプ関連遺伝子データ,siRNAなどの各種ライブラリー,最先端機器を共同研究者に公開するとともに,社会貢献にもつながる新型コロナウイルス関連の研究も研究所プロジェクト研究として実施しています。令和3年度には,更なる感染癌研究力強化のためにピロリ菌,肝炎ウイルスを研究する3名の感染癌研究者を研究所に迎えました。
関節リウマチなどの炎症性疾患では離れた部位で多発性の炎症病変が起こる。その原因の一つとして神経回路の関連が示唆されているが,炎症を誘導する神経回路や炎症に関連する分子機構についてはほとんど解明が進んでいない。今回,私たちは,サイトカイン誘導性およびコラーゲン誘導関節炎モデルマウスを用いて,神経回路の活性化により炎症性疾患で遠隔部位に多発性に炎症病変が生じる分子機構を明らかにし,「遠隔炎症ゲートウェイ反射」と定義した。本成果は令和4年度に Journal of experimental medicine に発表された。
感染癌とその周辺領域である「免疫,癌,感染,炎症など」に主眼を置いた基礎医学や生命科学研究の成果を通じて,関連疾患の予防法や治療法を社会に還元することが大きな目標です。研究活動を学生や市民の皆さんに知っていただくため,大学祭に併せて学内の他の研究所,センターと協働して所内一般公開を実施しています。生命科学の実験,観察体験やサイエンストークなどを行い,例年数百人の来場者があります。さらに,将来研究者を目指す高校生を対象とした所内見学会,職場体験,小学生を対象とした「北大こども研究所」の開催,幼稚園への寸劇を含む出張授業などを通じて,研究所で実施している研究を広く社会に対して発信しています。また,高大連携の新たな取り組みとして本研究所が主催する北海道大学部局横断シンポジウムのノーベル賞受賞者にて実施される特別講演を(令和2年度:梶田隆章先生、令和3年度:本庶佑先生)収録して,北海道内の高校の教材として提供しています。また、令和4年度は東京工業大学の大隅良典先生をお招きして特別講演が実施される予定である。
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