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北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所

International Institute for Zoonosis Control, Hokkaido University
  • 第2部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
髙田 礼人
Takada, Ayato
キーワード
人獣共通感染症、予防・診断・治療法の開発、グローバルサーベイランス、アジア・アフリカ、One Health
住所
〒001-0020
北海道札幌市北区北20条西10丁目

平成17年4月に人獣共通感染症リサーチセンターとして活動を開始し、人獣共通感染症病原体の自然宿主と伝播経路の解明、宿主域と病原性の分子基盤の解明、出現予測、診断・予防・治療法の開発を目指して、地球規模で疫学研究活動を展開すると共に、基礎・応用研究を推進しています。また、人獣共通感染症の制圧に向けて、科学的見地に基づき、人獣共通感染症対策のための提言を国際機関、政府および関連機関に向けて発信しています。教育面では、北海道大学One Healthフロンティア卓越大学院プログラムと連携して、人獣共通感染症対策専門家の育成に取り組んでいます。令和3年4月から、人獣共通感染症リサーチセンターを基盤として組織を充実させた3ユニットから成る人獣共通感染症国際共同研究所となりました。

令和6年度の研究活動内容及び成果


本研究所では、人獣共通感染症制圧に向けた基礎研究および予防・診断・治療薬の開発を推進しています。令和6年度の成果の一部を以下に記します。

病原体探索
  • コンゴ民主共和国におけるヒトティブロウイルス感染状況を解明(Lancet Microbe. doi: 10.1016/S2666-5247(24)00021-1)
  • バンコクの運河における薬剤耐性サルモネラ菌の常在化を証明(Microbiology Spectrum, doi: 10.1128/spectrum.04216-23)
  • インドネシアのコウモリから哺乳類オルソレオウイルスを単離し性状およびマウスにおける病原性を解析(J Gen Virol. doi: 10.1099/jgv.0.002029)
  • ザンビア国内のワニからウエストナイルウイルスを分離し動物モデルを用いて病原性を解析(J Gen Virol. doi: 10.1099/jgv.0.002051)
  • ヒトに致死性疾患を起こす可能性のあるベイジナイロウイルスを保有するIxodes属マダニが日本全国に分布していることを発見(Ticks Tick Borne Dis. doi: 10.1016/j.ttbdis.2024.102380)
  • ザンビアで初の報告となるC群ロタウイルスをブタから検出(Virology. doi: 10.1016/j.virol.2024.110385)
治療法・ワクチン開発
  • マールブルグウイルスとラブンウイルスの感染性を中和するモノクローナル抗体の特許を出願
  • 新規抗菌薬WQ-3334がキノロン耐性キャンピロバクターに有効であることを証明(J Infect Chemother. doi: 10.1016/j.jiac.2024.04.002)
  • 新規キノロン系抗菌薬がキノロン耐性キャンピロバクターに高い効果を有する可能性を発見(Microbiol Spectr. doi: 10.1128/spectrum.04322-23)
  • 抗コロナウイルス薬molnupiravirの狂犬病ウイルスに対する薬効を検証(Antiviral Res. doi: 10.1016/j.antiviral.2024.105977)
  • ワクチン抗原等を大量に生産するための宿主ベクター系を開発し、ヨーロッパユニオン、オーストラリアならびに香港において特許権を取得
  • Th1型新規核酸アジュバントARNAXが安全で細胞性免疫誘導能に優れたアジュバントであることを証明(J Virol. doi.org/10.1128/jvi.02290-24)
診断法開発
  • PMDA承認を得たエボラ出血熱迅速診断キット(QuickNavi-Ebola)がコンゴ民主共和国でも承認
  • フィロウイルス感染症のイムノクロマト法による診断キットの開発法を公開(Methods Mol Biol. doi: 10.1007/978-1-0716-4256-6_29)
  • ポータブルNGSを用いた汎用寄生虫検査手法を開発し基礎技術となる病原体核酸の濃縮手法について特許を出願
  • 炭疽菌を特異的に検出できる遺伝子マーカーを見出し新たな炭疽菌検出法を開発(BMC Infectious Diseases. doi: 10.1186/s12879-024-09817-9)
疫学的研究
  • バンコクの運河で分離したサルモネラ菌の主たるキノロン耐性獲得機構が可移動性プラスミド上に存在していることを解明(J Appl Microbiol. doi: 10.1093/jambio/lxae134)
  • タイにおいてヒト尿路感染症患者とブタから分離した大腸菌株の遺伝学的性状を解析し相互伝播の可能性を提示(PLoS One. doi: 10.1371/journal.pone.0307544)
  • 時々刻々と変動するネットワーク上の性感染症流行シミュレーターを構築し感染経路を共有する性感染症の流行の関連性を解明(Front. Public Health. doi: 10.3389/fpubh.2024.1335693)
  • 豚熱再感染に対するイノシシの免疫は減衰することを疫学データから統計的に明らかにしその減衰速度を推定(Prev Vet Med. doi: 10.1016/j.prevetmed.2025.106440)
  • 基質特異性拡張型βラクタマーゼ遺伝子検出法を利用しザンビア国内の下痢症患者の検体を対象とした耐性菌感染ならびに拡散状況を調査(PLoS One. doi: 10.1371/journal.pone.0302053)
  • 北海道のアライグマにマダニが付着する環境要因を解明(Ticks Tick Borne Dis. doi: 10.1016/j.ttbdis.2024.102389)
その他基礎研究
  • ヒトティブロウイルスの表面糖蛋白質の性状および機能を解析(J Virol. doi: 10.1128/jvi.00499-24. Epub 2024 Jul 2)
  • リバースジェネティクス法により組換え狂犬病ウイルス野外株(街上毒)を作出しウイルス増殖機構やイメージング解析を実施(Sci Rep. doi: 10.1038/s41598-024-69613-y)
  • フラビウイルスの一回感染性粒子(SRIPs)の効率的な作出方法を確立(J Virol Methods. doi: 10.1016/j.jviromet.2024.115007)
  • 変異株の検出頻度の変化から相対実効再生産数を推定し今後の変異株の割合の変化を予測するプログラムを公開
  • セレウス菌のVII型分泌装置エフェクタータンパク質が同菌の発芽に寄与していることを発見(BMC Microbiology. doi: 10.1186/s12866-024-03492-1)
  • 新型コロナウイルスの祖先株に最も近縁な分離株であるBANAL-236の基礎的性状を解析(EBioMedicine. doi: 10.1016/j.ebiom.2024.105181)
  • SARS-CoV-2スパイクタンパク質と中和抗体NT-108の複合体について構造決定しクラス2抗体の認識から逃れる機構を解明(Commun Biol. doi: 10.1038/s42003-025-07827-0)

社会との連携


感染症制御に向けた次世代人材育成

東京大学医科学研究所、大阪大学微生物病研究所、長崎大学熱帯医学研究所および長崎大学高度感染症研究センターと共同で提案し文部科学省より採択された「連携基盤を活用した感染症制御に向けた最先端研究・次世代人材育成事業」(令和4−9年度)、JICA「健康危機対応能力強化に向けた感染症対策グローバルリーダー育成プログラム」との連携および国際感染症学院での大学院教育等を通して、感染症制御に向けた次世代人材育成および社会への情報発信等に取り組んでいます。

国際連携の推進

世界保健機関(WHO)、国際獣疫事務局(OIE)および国連食糧農業機関(FAO)等の国際機関との連携に加え、ウイルス、細菌および原虫感染症の基礎研究および診断・予防・治療法の開発において海外の30以上の機関と様々な共同研究を展開するなど、人獣共通感染症研究の世界的拠点としての機能を果たしています。

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