当研究所の目的は、海洋エネルギーに関する研究教育とその科学技術を戦略的に推進する国際的な先導的中核研究拠点として、海洋エネルギーに関する研究教育を総合的かつ学術的に行い、その研究基盤を確立するとともに、その利用促進に貢献することにより、21世紀の地球規模でのエネルギー問題と環境問題の解決に寄与することです。
特に新しい概念を導入した海洋温度差発電システム、波力発電システム、潮流発電システム、洋上風力発電システムを中心に、「海洋に賦存する膨大な種々のエネルギー及びエネルギー物質の回収とその複合的高度利用法」「海洋エネルギー利用に関連する海洋環境への影響の解明」などに関して、基礎と応用、実証を目指した研究を行う全国で唯一の研究教育拠点です。
令和4年度から「海洋エネルギー研究センター」を「海洋エネルギー研究所」に名称変更しました。
当研究所は、海洋熱エネルギー(海洋温度差)、海洋流体(波力、潮流・海流、洋上風力)など全ての海洋エネルギーを包括的で、かつ横断的・総合的に研究する組織とし、基礎的・応用的研究から、実証的研究を学際的に取り組むことを特徴としています。
本研究所は、海洋エネルギーに関する総合的な研究所として、4つの基幹研究分野である海洋温度差発電、波力発電、潮流発電、洋上風力発電において、海洋再生可能エネルギーに関する研究を行っています。令和6年度の4つ基幹研究分野の主な研究活動および成果は、以下の通りです。
海洋温度差発電分野は、JST/JICAによるマレーシア工科大学との地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)事業において開発した世界初のハイブリッド海洋温度差発電プラントをマレーシアに移設し、令和6年10月、マレーシア政府が建設した海洋温度差発電研究所「UPM/UTM OTEC CENTRE」に設置し、共同研究を実施しています(写真)。
また、海洋温度差発電分野では、沖縄県・久米島における海洋温度差発電の1000kW社会実装を加速化させるために、産学官で200kWに対応した熱交換器の研究開発を実施しました。
波力発電分野は、佐賀大学で開発した衝動タービンを搭載した浮体式波力発電装置の波浪中発電シミュレーションを行い、その有効性を確認しました。また、セイル型タービンの動力変換計算プログラムを作成しました。さらに、スパーブイ型波力発電装置の動力変換におよぼす船体形状の影響評価プログラムを作成しました。
潮流発電分野は、往復流対応ダクト付き潮流発電用タービンのダクト効率およびタービン効率について、ダクト付きタービンに特化した理論解析手法を提案しました。本手法により、ダクト付きタービン性能の理論限界を示しました。また、タービンの高出力化、高強度化・長寿命化に向けた、潮流発電用タービンの開発や、主流の変動と水平軸タービンに生じるキャビテーションの発生限界との関係のシミュレーションによる調査を行っています。
洋上風力発電分野は、超大型風車の全体システムの研究開発に貢献できる国内唯一の研究グループとして、国内外の研究活動をリードしてきました。特に、超大型風車の多分野統合最適化手法、また、アドバンストアクチュエータラインモデルによる空力解析法、機械学習/深層学習の風力発電への応用、新しい概念の浮体式洋上風力発電システムの開発(NEDO一点係留式セミサブ型、NEDO懸垂式スパー型)などの研究開発に取り組んできました。
社会との連携(人材育成)
国際的な人材育成を推進するため、以下の事業を実施しました。
『第11回若手研究者のための海洋エネルギーに関する国際プラットフォーム人材育成事業』は11カ国から21名が参加し、研究発表と活発な議論が実施されました。
また、『2024 International Ocean Energy Symposium&21st Joint Young Researcher Forum Details』を福岡市のTKP博多駅筑紫口ビジネスセンターで実施しました。韓国海洋大学校、木浦大学校(韓国)、水産大学校(日本)、佐賀大学から計45名が参加し、研究発表と活発な議論が行われました。
『若手研究者のための国際インターンシップ・共同利用支援事業』では、共同利用・共同研究拠点施設を利用して博士・修士号の取得を目指す海外の研究者を支援しています。今年度は、フランスEPF大学の若手研究者2名(海洋温度差発電、熱エネルギー分野)、カナダETS大学の若手研究者1名(洋上風力分野)のインターンを受け入れる予定です。
佐賀県再生可能エネルギー等イノベーション共創プラットフォーム(略称 CIREn)
佐賀県と協力し、オープンイノベーションを基軸に様々な分野の英知を結集させ、再生可能エネルギー等の研究開発や市場開拓を進め、県内の関連産業創出を加速させる取り組みを実施中です。海洋温度差発電分野、洋上風力発電分野、波力発電分野をはじめ、遠隔監視、電気化学など再生可能エネルギーに関連する産学官が一体化した分科会活動を行いました。
各研究分野の国際貢献・社会貢献
国連で認証された約40ヶ国からなる小島嶼開発途上国(SIDS:Small Island Developing States)が、COP28において、海洋温度差発電を核とした「久米島モデル」に注目したプレスリリースを行うなど、当研究所の社会実装モデルが国際的に注目され、海外からの要人や研究者の視察が、増加しています。令和6年度は、トンガ大使など大洋州の在京大使グループなど政府関係者も含め、34ヶ国の方々が視察されました。
(参考) https://sidsdock.org/sids-dock-press-release-a7apr0032023/
また、令和6年11月11日~24日にアゼルバイジャン共和国で開催された国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)の「COP29 JAPAN PAVILION VIRTUAL SHOWCASE」オンライン出展において、独立行政法人国際協力機構(JICA)ブース「気候変動への取り組み」として、佐賀大学海洋エネルギー研究所「海洋温度差発電の久米島モデルへの貢献」が紹介されました。
(参考)https://www.youtube.com/watch?v=_yikwT7gINY
波力発電分野は、IEC(国際電気標準会議)TC114委員会に参加しました。同委員会は海洋エネルギー変換器の標準化委員会であり、当研究所が日本の代表を務めています。国内委員会を年2回開催し、委員に標準化の進行状況を報告しました。
潮流発電分野では、日本では最大規模の潮流エネルギーのポテンシャルを有する早崎瀬戸において、潮流発電システムの設置を目指して、一般社団法人の早崎潮流発電推進研究会と継続して連携しており、潮流タービンの実証試験の実施を目指しています。また、小規模実証試験場として、河川での実施可能性の調査のための取り組みを開始しました。
洋上風力発電分野では、また、IEAの国際的な共同研究プラットフォームであるIEA Windにおいて、非欧米圏唯一の議長(Task 40 Downwind Turbine Technologies)を務めるなど、当該分野を国際的にリードしてきました。また、九州大学、北九州市立大学と共同で、資源エネルギー庁の洋上風力人材育成事業に採択されました(当該カテゴリーで唯一)。令和5年度からの新講義「洋上風車工学特論」を継続して実施し、企業ならびに他大学(教員・ポスドク)から多くの聴講がありました。さらに、風力発電に関して世界的に著名な図書である”Wind Energy Handbook (Wiley, 2021)”を編訳し、「風力エネルギーハンドブック(森北出版, 2025, B5×848ページ)」を発刊しました。
「知の世界展開」の成果を紹介する「国際展示ルーム」を開設
本学が、本研究所の研究成果による国際貢献「知の世界展開」を中心に紹介する「国際展示ルーム」を開設し、令和7年3月27日(木)に開所式と講演会を開催しました。この国際展示ルームは、国内外からの来賓を迎える応接間であり、「佐賀」から生み出した日本や世界に誇れる研究を広く地域の皆様のご理解を高めていただき、地域の国際化を牽引する知的拠点です。開所式には、文部科学省、佐賀県、伊万里市、嬉野市、沖縄県久米島町、マレーシア工科大学の関係者が出席しました。国際展示ルームには、佐賀大学の国際交流を示す世界唯一の、佐賀を中心とする壁面世界地図を常設展示し、海洋温度差発電(OTEC)の仕組みの理解促進に向けた装置、発電に利用した海洋深層水の複合利用によって生み出された商品、研究成果や国際交流状況紹介パネルなどが展示されています。
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