iPS 細胞研究所(CiRA =サイラ)は、平成22年4月にiPS 細胞の基礎研究から臨床研究までをシームレスに推進するために設立されました。現在、未来生命科学開拓部門、増殖分化機構研究部門、臨床応用研究部門、基盤技術研究部門、上廣倫理研究部門の5つの研究部門に分かれ、iPS 細胞技術を創薬や再生医療に応用することを目指した研究に取り組んでいます。また、iPS 細胞に関連する倫理的、社会的、法的課題の解決に向けた研究および対処法の実践を進めています。世界最高水準のiPS 細胞研究拠点として機能し、幹細胞分野をはじめとする学理の探求に貢献するとともに、若手研究者の育成にも努めます。
CiRAは、下記の2030年までの長期目標を掲げ、iPS細胞技術の医療応用を実現すべく研究活動に取り組んでいます。
<CiRA 2030年までの目標>
主な研究成果として、井上治久教授らの研究グループは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんを対象としたボスチニブ第2相試験の結果として、治験に参加したALS患者さん26人中、少なくとも13人で進行の抑制を確認し、ボスチニブの有効性が示唆されたと発表しました。井上教授らは、ALS患者さんのiPS細胞を用いて創薬研究を行い、運動ニューロンの細胞死を抑える化合物としてボスチニブを見出し、第1相試験を経て、2022年より7つの医療機関で第2相試験を実施してきました。今後、この結果に基づいて、次の計画を検討していきます。
江藤浩之教授らの研究グループは、iPS細胞から輸血用の血小板を作製する培養装置を大型化するために、新たな装置を設計しました。この設計により、従来8Lまでだった培養装置を、高い血小板の製造効率を維持しながら5倍以上に大きくすることが可能となります。本研究の知見が、医療用iPS細胞由来血小板の産業化を加速させることにつながると期待されます。
高山和雄講師らの研究グループは、ヒトiPS/ES細胞から、小腸の複雑な多層構造を再現した「マイクロ小腸システム」の開発に成功しました。これは、マイクロ流体デバイスを用いて、実際の体内環境に近い間質流を再現することで実現しました。このシステムが腸疾患研究やそれらに対する新薬開発に貢献すると期待されています。
また、京都大学医学部附属病院は、2025年1月から1型糖尿病患者を対象にiPS細胞由来膵島細胞シートの医師主導治験を開始することを発表しました。この治験に使用されるiPS細胞由来膵島細胞は、CiRAと武田薬品工業株式会社の共同研究プログラムにより、CiRAの豊田太郎講師が主任研究者を務めたプロジェクトの一環として開発されました。
今後も、患者さんに一日でも早くiPS細胞技術を届けるという強い信念を持って、研究活動に邁進してまいります。
iPS細胞は、今後の医療に大きな影響を与え、誰もがその恩恵をうける可能性のある新しい技術です。そのため、より多くの方々に研究活動について理解していただけるように、ニュースレター、シンポジウム、サイエンス・カフェ、ウェブサイト、SNS等、各種媒体を活用したコミュニケーションに努めています。研究者に向けては、国内外から研究者を招聘し、セミナーを開き研究促進のための意見交換を積極的に行なっています。
2024年度には、7月に大阪で一般の方対象シンポジウム「すごいぞiPS細胞!〜脳・肺・RNAの研究者は語りたい〜」を開催し、377名の方々にご参加いただきました。当日は、高橋淳所長、齊藤博英教授、後藤慎平教授が、iPS細胞研究の最新の成果や、日々の研究活動の様子について話しました。また、研究・活動内容やiPS細胞に関する教材を紹介するコーナーを設け、多くの方にお立ち寄りいただきました。
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