1926年設立の京都大学で最初の附置研究所である化学研究所は、30研究領域(専任教員約90名、大学院学生約190名、研究員約50名、別に5客員研究領域)からなる5研究系・3附属センター体制をとっており、化学を中心に物理・生物・情報学に及ぶ先進・横断的研究を展開しています。各々の研究領域は、理、工、農、薬、医、情報学の本学大学院研究科の協力講座として次代を担う研究者の育成に努め、全学の教育にも積極的に貢献しています。最近では、「国際共同利用・共同研究拠点」(平成30年度文部科学省認定)、「上海オンサイトラボラトリー」(令和元年度京都大学認定)などの活動を通して国際的な学際分野の開拓も進めています。基礎から応用にいたる幅広い領域で、常に多様で新規な先駆的・先端的な研究を推進し、新たな知への挑戦を続けています。
陽イオン交換反応は、イオン性ナノ結晶中の陽イオンを別の陽イオンと交換する反応で、温和な条件で進行します。そのため、サイズや形を制御したイオン性ナノ結晶を陽イオン交換することで、ナノ結晶の種類を大きく拡充できます。イオン性ナノ結晶では、小さくて動きやすい陽イオンとは対照的に、大きくて動きにくい陰イオンが頑丈な骨格を形成しているため、陰イオン交換による大きな結晶構造変化は容易に起こりますが、陽イオン交換では元の結晶構造はほとんど変化しません。そのため陽イオン交換反応の生成物の結晶構造は、母体の結晶構造で決まってしまうと考えられてきました。
本研究所の猿山特定助教(現特定准教授)、寺西教授らのグループは、16種類の幅と高さをもつ六角柱型の六方晶系Cu1.8Sナノ結晶をCo2+と陽イオン交換を行い、高さが約10 nmを境に、生成物の結晶構造が六方晶系CoSと立方晶系Co9S8に分かれることを発見しました(Science, 2021, doi: 10.1126/science.abh2741)。第一原理計算によって、六角柱型の六方晶系CoSは底面よりも側面の表面エネルギーが大きく、高さが大きくなると側面の広い露出を避けようとして安定な立方晶系Co9S8へ構造変化することが示唆されました。Co2+以外の陽イオンでは異なる傾向が見られ、物質固有の構造安定性がこの現象に重要な役割をもつことも分かりました。これらの知見は、温和な条件でのイオン結晶の結晶構造制御を可能とし、新しい物質群の合成につながると期待されます。
科学技術の高度化・専門分化が加速される中、産業界との研究連携は一層重要となってきています。本研究所では、多くの受託研究、共同研究などを通じて産官学連携研究の推進に注力しています。また、広く社会との連携も積極的に進めており、所外研究者や一般の人々に向けて、キャンパス公開(令和3年度はバーチャル宇治キャンパス公開で動画配信)、化学研究所研究発表会(2021年12月に第121回を開催)、中・高校生向け出前授業などを行い、最新の研究成果の発信を行っています。広報誌「黄檗」やAnnual Reportなどの刊行物の発行、ホームページ公開による広報活動も重要な情報発信です。令和3年度は日本語のTwitterを開始しました。
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