ヒト行動進化研究センターは、霊長類研究所の改編に伴い、脳科学研究を主たる内容とし、ヒトの行動特性とその進化の生物学的基盤の究明を目的とする新組織として、令和4(2022)年4月1日に設置されました。進化的にヒトに近縁なサル類を対象とした実験的研究により、ヒトの行動特性とその進化の生物学的基盤を究明することで、世界的に卓越した知の創造を行い、それをもとにヒトの健康や生活様式、さらには人間社会のあり方に対して様々な提言を行うことを目的としています。サル類を対象とした研究の豊富な経験や知識、そして蓄積された多くの研究リソースに立脚した共同研究の場を提供することにより、広く国内外の研究コミュニティに貢献します。また、理学研究科生物科学専攻において、この目的に則した活動を推進し発展させることのできる高度専門性を持つ人材の育成を行います。
霊長類の脳内におけるドーパミンの働きを調べるため、蛍光ドーパミンセンサーを用いたドーパミン計測技術をサルで確立しました。この技術を用いて、確率的に報酬が得られる課題に取り組んでいるサルでドーパミンを測定したところ、尾状核では「報酬の期待値」に応じたドーパミンの放出が、被殻では「予測と実際の報酬の差(報酬予測誤差)」に応じた放出が観察されました。この結果から、ドーパミンは脳の部位ごとに異なる報酬関連情報を伝えている可能性が示されました。
ニホンザル5集団の全ゲノムシーケンスを行い、集団間の遺伝的差異と機能的変異を明らかにしました。ニホンザルは他のマカク類に比べ遺伝的多様性が低く、多くの共有・特有の遺伝子欠失を持っており、これが集団特有の表現型に影響していると考えられました。また、ニホンザル各集団の個体数動態を推定した結果、各集団は分岐と統合を繰り返しており、これは氷期サイクル中の生息域の断片化と統合に影響されていることが示唆されました。本研究で得られたゲノムデータの利活用によって、ニホンザルバイオリソースの質向上が期待できます。
研究成果を社会へ還元する目的の一環として、犬山キャンパス一般公開、オープンキャンパス等を通して、講演・実習・演習による研究成果の公表や霊長類学の啓発を毎年実施しています。また、年報を作成し、研究成果や実施した事業の報告を自己点検評価として公開します。
平成22年に国際共同先端研究センターを設置し、外国人教員を採用するとともに大学院国際コースを実施しています。海外派遣事業等とも連携を図り、国際化を強化し国際共同研究拠点の形成を推進することで、より新しい視点を社会へ還元することを目指します。
「京都大学理学研究科霊長類学・野生動物系」の大学院生の定員を持っており、その一部をつかって国際コースを設置しています。それによって大学院生の外国人比率を50%前後に維持しています。リーディング大学院プログラム・オンリーワン型「霊長類学・ワイルドライフサイエンス」が平成25年度から採択されました。それを基盤にして従来の研究者養成に加えて、新たなグローバルな視点を持った博士を輩出することを目指しています。
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