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京都大学エネルギー理工学研究所

Institute of Advanced Energy, Kyoto University
  • 第1部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
片平 正人
Katahira, Masato
キーワード
ゼロエミッションエネルギー、プラズマ・量子エネルギー、 ソフトエネルギー、核融合エネルギー利用、 高効率太陽光エネルギー利用、バイオリファイナリー、 カーボンネガティブエネルギー
住所
〒611-0011
京都府宇治市五ケ庄
カーボンニュートラル社会を支えるエネルギー融合科学の構築を目指して

エネルギー理工学研究所は、1996年にエネルギーの基本要素であるエネルギーの生成・変換・利用の高度化に関する研究を行うために設立されました。エネルギーの散逸や有用物質の損失、有害物質の放出を最小限に抑え、高い環境調和性と社会受容性を持つ安全性に優れた、ソフトエネルギーからプラズマ・量子エネルギーまでの幅広いエネルギーを開発・研究することを目的にしています。このようなエネルギーを「ゼロエミッションエネルギー」と位置付け、共同利用・共同研究拠点事業「ゼロエミッションエネルギー研究拠点」の活動を展開しています。研究所には、生成・変換・利用をそれぞれ冠した3部門に属する14研究分野、研究所内外の共同研究や産官学連携を推進する附属エネルギー複合機構研究センターと二酸化炭素を機能性材料に変換する附属カーボンネガティブ・エネルギー研究センターを設置して、特色ある最先端の研究施設を活用しながら、多彩なエネルギーに関わる先端研究に取り組んでいます。カーボンニュートラル社会を支えるエネルギーを、自然の摂理や原理に立ち返って探究し、新しいエネルギーの創出と学理の構築を目指すとともに、次世代を担う研究者の育成に努めています。

令和6年度の研究活動内容及び成果


2050年カーボンニュートラル社会の実現とそれに伴うグリーン成長戦略を見据えて、2022年にスタートさせた附属カーボンネガティブ・エネルギー研究センターの活動を推進しました。「ソフトエネルギー研究」では、これまで研究所が培ってきたナノ炭素材料、光電子デバイスや人工代謝経路の新しい原理、電気化学、バイオリファイナリー、中赤外自由電子レーザーの技術を深化させ、太陽光エネルギーを効率的に利用する革新的原理・技術の研究成果をさらに発展させました。「プラズマ・量子エネルギー研究」では、Heliotron J装置によるプラズマ閉じ込めの高性能化、核融合中性子源の応用、原型炉プラズマ対向材料の中性子照射効果、国内研究拠点形成を目指したイオン加速器を用いた材料照射基礎研究を行いました。また、それらを支える機能材料、構造材料の開発および核融合炉工学に関する先導的な研究を展開しました。

2024年度の成果例
炭素磁石の合成に成功:二面顔“ヤヌス型”グラフェンナノリボン

現代エレクトロニクスに不可欠な磁石は、従来は金属製で重く、希少金属使用による供給リスクも抱えています。これに対し、軽量・安価な“炭素磁石”が注目されており、特にグラフェンナノリボン(GNR)は端構造の設計により磁気特性を制御できる可能性があります。従来合成されたGNRは対称ジグザグ端を持ち反強磁性であるため磁石にはなりませんでしたが、非対称ジグザグ端構造は強磁性を示すと理論的に予測されていました。しかしその合成は極めて困難でした。そこで坂口浩司 教授と小島崇寛 准教授らの国際研究グループは、非対称Z型構造の前駆体分子を設計・合成し、金属基板上で一方向に連結させる新手法を開発。世界で初めて非対称ジグザグ端型GNRの合成に成功し、予測通りスピンが端に局在し、“炭素磁石”としての特性を持つことを世界で初めて実証しました(Nature, 637, 580-586, 2025)。このGNRは、ギリシャ神話の二面顔ヤヌスにちなみ「Janus GNR(JGNR)」と命名され、今後、電子工学、機械工学への応用が期待されます。

2本のカーボンナノチューブを融合して1本のナノチューブを作る

炭素の円筒状ナノ物質であるカーボンナノチューブ(CNT)は、未来の機能材料兼CO2固定先として期待されています。その優れた物性はCNTの構造(直径や炭素の並び方)に強く依存しますが、特に直径約1.3 nmを超える太いCNTでは、類似構造が多く存在するため、狙った構造を作り分けることや分離が困難でした。本研究所の宮内雄平教授らは、構造を精密に制御した細いCNTの集合体に熱処理を加えるという簡便な手法で、元のCNTの炭素の並び(カイラル角)を維持したまま融合させ、直径が倍の太いCNTへと効率的に変換できる「カイラル角保存融合現象」を発見しました(Nature Communications, 16, 1093, 2025)。この発見により、高純度な細いCNTを原料として、これまで困難であった太いCNTの構造選択的な合成が可能になります。さらに、この融合反応を応用すれば、CNT集積体の後処理によってCNT間に共有結合を形成し、集積体全体の電気伝導性や熱伝導性といったマクロな物性を改変することもできることから、今後のCNTの多様な応用展開に貢献すると期待されます。

社会との連携


■ 産学連携・広報・アウトリーチ

エネルギー研究の応用には産業界との連携が欠かせません。研究所の多様な研究施設を供用することで研究の幅を広げ、社会への貢献を行っています。具体的には、ダイセル社及びコスモ石油社等との産学共同研究を包括連携協定の下に実施しています。また、研究所活動を社会に発信する機能を高めるとともに、将来を担う中高生に対して見学会や大学院生との交流会を行うなど、社会貢献を行っています。

NMR装置群

NMR装置群

KU-FEL

KU-FEL

Heliotron J

Heliotron J

高校生対象見学会

高校生対象見学会

■国際交流

本研究所では、18か国38機関と交流協定を締結し、国際連携を積極的に推進しています。これまでに著名研究者を招聘した国際シンポジウムを継続的に開催し、情報発信と学術交流に努めてきました。アジア地域との連携では、JSPSの「拠点大学交流事業」や「アジア研究教育拠点事業」により、15年にわたりエネルギー科学分野で国際交流を牽引してきました。また、「研究拠点形成事業」やJASTIPへの参画などを通じて、国際的な研究ネットワークを築いてきました。

JASTIPでの国際共同研究

JASTIPでの国際共同研究

16th Eco-Energy and Materials Science and Engineering Symposium

16th Eco-Energy and Materials Science and Engineering Symposium

 

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Links

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