ウイルス・再生医科学研究所は、2022年4月に「医生物学研究所」へ名称を変更しました。
2016年10月、ウイルス研究所と再生医科学研究所は、異分野融合/学際研究を促進し新たな学問領域を開拓するという目的で統合され、ウイルス・再生医科学研究所が発足しました。新研究所名については、当時は両研究所名をそのまま並べるという形を取りましたが、その後も研究所内で議論は続き、今回の改称に至りました。新名称には、「生物学」という原点を大事にしようという思いが込められています。
本研究所は「ウイルス感染症・生命科学先端融合的共同研究拠点」と「再生医学・再生医療の先端融合的共同研究拠点」として研究者の活動支援を行ってきましたが、改称と時を同じくして両拠点を統合し、2022年4月に「ウイルス・幹細胞システム医生物学共同研究拠点」という新拠点を発足させました。
マールブルクウイルスはエボラウイルスと近縁のウイルスで、ヒトに致死的な出⾎熱を引き起こします。しかし、ワクチンも抗ウイルス薬も未だ存在しません。マールブルグウイルスは細胞で増殖する際、ウイルス遺伝⼦とウイルス核タンパク質から構成されるヌクレオカプシドを形成します。ヌクレオカプシドはウイルス遺伝⼦を転写・複製し、ウイルス増殖環の中⼼を担う複合体ですが、その形成機構はこれまでわかっていませんでした。野⽥グループは、マールブルグウイルスのヌクレオカプシドのコア構造であるウイルス核タンパク質-RNA複合体(NP-RNA複合体)の⽴体構造をクライオ電⼦顕微鏡法により原⼦レベルで決定し、その形成に重要な相互作⽤を明らかにしました。また、マールブルグウイルスとエボラウイルスのNP-RNA複合体の構造が保存されていることを明らかにしました。
本研究所では2003年8月に日本で初めてヒトES細胞株の樹立に成功し、2008年までに5株の樹立に成功しましたが、ヒトES細胞を用いた再生医療を進めていくには、臨床用のヒトES細胞株を樹立する必要がありました。臨床基盤分野では長年その基盤となる培養技術の開発(iMatrix-511として商品化)や標準作業手順書の作成など準備を進め、本研究所附属ヒトES細胞研究センター臨床基盤分野に設置されたCell Processing Facility(CPF)(図1)で再生医療新法に従った臨床用ヒトES細胞株(KthES11)の樹立に国内で初めて成功しました。その後、詳細な評価を行い、KthES11はヒトES細胞としての基本的な特性を有し、私達が行った安全性試験も全て合格し、臨床応用可能な特性を有していることを確認し、論文発表しました。多能性幹細胞を用いた細胞移植医療(図2)において、iPS細胞に加え、本研究グループで樹立されたヒト用ES細胞株を新たな選択肢として比較検討を進めることで、再生医療の大きな前進に寄与することが期待されます。
医生物学研究所では、教育・啓発活動にも積極的に取り組んでいます。協力講座として医学、理学、薬学、工学、生命科学、人間・環境学の各研究科の大学院教育及び全学共通教育を行うとともに、学内外に向けた講演会、シンポジウム、研究所見学会を開催し、日々研究室で行われている研究を、中高生や社会一般の方々に分かりやすく紹介しています。
また、産官学連携を積極的に推進し、特許等の知的財産の創出とライセンシングを通じて研究成果の実用化を推進しています。
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