本研究所は、「がんに関する学理及びその応用の研究」を目的として、1967年にがん研究所として設立されました。以来、がんの基礎研究とその臨床応用を通して、がんに関わる広範な先端的学問領域での研究の先鋭化と、卓越した研究力や創造性を備えた研究者の養成に努めています。とりわけ、「がん幹細胞」と「がん微小環境」に焦点を当てて、転移・薬剤耐性の制御を目指した研究を推進し、その研究成果を臨床へ応用することに取り組んでいます。2011年には、転移・薬剤耐性に代表される「がんの悪性進展過程」の制御という研究所の使命を明確にするために、「がん進展制御研究所」へと名称を変更いたしました。2015年には、これまでの活動を基盤として次世代のがん研究を展開する目的で、「先進がんモデル共同研究センター」を発足させ、国内外の共同研究を推進する中核的研究拠点として活動しています。
インスリンなどの細胞成長因子は、微量で優れた生理活性を発揮するタンパク質であり、医薬品として利用されています。しかし、一般に血中半減期が短く脳内に到達できないため、慢性疾患や中枢神経疾患の治療に利用することは困難です。本研究所研究グループは、特殊環状ペプチドライブラリーからmRNAディスプレイ法を用いて肝細胞成長因子受容体(MET)に結合する人工ペプチドを同定しました。さらに、血中に長期に維持される抗体Fc分子内や脳内移行性をもつ抗体分子内に、ペプチド活性配列を内挿することによって、有効濃度が長期に維持され脳内移行性を持つ受容体作動薬を開発しました (Nat Biomed Eng. 7, 164–176, 2023)。このような薬物動態を強化した人工細胞成長因子は、肝がんの主要な原因である肝硬変などの慢性疾患の治療や、パーキンソン病などの中枢神経疾患の治療に活用されることが期待されます。
がんは、日本人の死亡原因の1位であり、3人に1人ががんで亡くなっています。特に、遠隔臓器への転移や薬剤耐性による再発に代表される「がんの悪性進展」が、生存率の低下と深く関係しています。したがって、これらを制御することが、がんの克服にはとても重要な課題です。本研究所では、悪性進展に焦点を当てた基礎研究の成果を基に、創薬研究や臨床研究(治験)などのトランスレーショナルリサーチを推進し、研究成果を社会に還元することを目指しています。また、最先端の研究を紹介する市民公開講座や高校生を対象とする「がん研究早期体験プログラム」の開催を通して、がんに関する正しい知識を伝えるがん教育と将来のがん研究を担う人材育成にも力を入れています。今後も、新たな研究シーズの発掘、産学連携によるがん創薬の推進など一連の活動を加速化させ、国民の健康維持・増進や福祉の向上に寄与したいと考えています。
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