マス・フォア・インダストリ(Mathematics for Industry)とは、純粋・応用数学を流動性・汎用性をもつ形に融合再編しつつ産業界からの要請に応えようとすることで生まれる、未来技術の創出基盤となる数学の新研究領域です。現代社会を牽引する高度テクノロジーのほぼすべてにおいて、その本質的部分は数学を礎石としており、今や、多くの科学技術分野において、数学・数理科学の研究人材はかつてないほど必要とされています。九州大学マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)は、そのような国際社会からの要請に応えるため、多様な数学研究を基礎におくアジア初の産業数学の研究所として、平成23年4月1日に創設されました。また、平成25年4月には文部科学省共同利用・共同研究拠点に認定されています。
IMIは純粋数学から数学の産業応用にまでわたる幅広い分野で、産業界との共同研究や、将来の連携シーズを求めた基礎研究を行っています。主な研究分野として、統計学、機械学習、確率論、最適化、情報セキュリティ、数理モデル、流体力学、数値解析、数式処理、トポロジー、特異点論、微分幾何、可積分系、力学系、表現論、代数学、代数幾何学、離散数学などがあります。ビッグデータ可視化に特異点論、CGに表現論の研究者など、純粋数学研究者も積極的に産業界との共同研究に参画しています。特徴ある産学連携活動として、数理計算インテリジェント社会実装推進部門(平成31年4月設立)では、大型の産学連携を組織的に実施し、先進暗号数理デザイン室(平成27年4月設立)では、産業界と連携しつつ次世代暗号の研究に取り組んでいます。また、九州大学COI「持続的共進化地域創成拠点」(H25〜R3)の産業数学部会に参画するなど、数学の社会実装にも挑戦しています。さらに、令和4年4月から「産業数理統計研究部門」を設立し、統計、データサイエンスに対する社会からの高いニーズに応えられるように体制を整備し、12月から富士通意思決定数理モデリング共同研究部門を設置し、意思決定のための社会モデリングおよび解析に関する研究を開始しています。国際的な活動として、ラ・トローブ大学(メルボルン)に設置(平成27年3月)したIMIオーストラリア分室では、正規教員1名を常駐させ、平成26年創設のアジア・太平洋産業数学コンソーシアムの中核機関として国際産学連携をユニークな形で推進しています。九州大学内においては、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所との共同研究をオーストラリア分室やイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とも連携して実施しています。また、学内の共同利用・共同研究拠点との連携で設立(平成31年4月)された汎オミクス計測・計算科学センターへ参画し、他分野との協働による研究を推進しています。令和2年より文部科学省卓越大学院プログラム「マス・フォア・イノベーション卓越大学院」を九州大学大学院数理学府、システム情報科学府、経済学府と連携してIMIが主導して運営(令和4年より研究科等連係課程「マス・フォア・イノベーション連係学府」として運営)するなど、若手研究人材の育成にも注力しています。R5年度にIMI内に「リエゾン戦略部門」を新設して、R5年10月に全国16の数学研究機関と連携して「マス・フォア・インダストリ・プラットフォーム(MfIP)」を設立し、事務局を当該部門に置いて活動を開始しました。
IMIは数学テクノロジー先端研究部門、応用理論研究部門、基礎理論研究部門の3部門に加え、数理計算インテリジェント社会実装推進部門、産業数理統計研究部門、富士通意思決定数理モデリング共同研究部門、リエゾン戦略部門、先進暗号数理デザイン室、オーストラリア分室を置いています。産学連携の円滑な実施のため連携推進・技術相談窓口も設置し、九州大学数理・データサイエンス教育研究センターの運営にも関与しています。IMIでは産学連携の推進のため、以下の活動を行っています。
さらに、文部科学省共同利用・共同研究拠点として、公募制の研究集会、短期共同研究、短期研究員受入などの事業を行い、数学に関する産学連携の拠点となっています。令和3年度にIMIは創立10周年を迎え、記念行事においてIMI宣言2021を発表して新たなビジョンと使命を社会に向けて宣言するとともに、産業数学人材育成プロジェクトを立ち上げ、社会と連携しながら安定して研究活動と人材育成を行うための新しい体制を構築しています。
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