本研究所は、2016年度に疾患酵素学研究センター・疾患プロテオゲノム研究センター・藤井節郎記念医科学センター・糖尿病臨床・研究開発センターを発展的に統合し、発足しました。2020年度には、酵素学研究拠点としての先導的成果を基盤に病態解明と医療応用を目指す「基幹研究部門」、糖尿病・がん・免疫疾患等を“慢性炎症”という共通基盤病態で捉え新たな学術領域の創出と牽引を目指す「重点研究部門」、個々の研究活動と拠点形成を強力にサポートする「技術開発支援部門」の3部門に編成し、次世代人材育成と健康長寿社会の実現を目指す最先端の医科学研究を展開しています。2022年度からは、九州大学、東京科学大学、熊本大学との4拠点ネットワークによる「高深度オミクス医学研究拠点整備事業」を進め、2023年には国内の優れた若手研究者の育成をめざし独立准教授を3名配置しました。
膜タンパク質は多彩な役割を果たしており、市販薬の約60%が膜タンパク質を標的としています。従って膜タンパク質の細胞外領域での相互作用の解析は重要であると考えられます。私たちは愛媛大学との共同研究により、近接ビオチン化酵素AirIDを膜タンパク質認識抗体の一部に融合した分子FabIDを作製し、細胞外でビオチン化されたタンパク質をプロテオーム解析することによって膜タンパク質の細胞外相互作用を解析できる技術を開発しました。
熱ショック因子HSF1は、細胞が熱や酸化などのストレスを受けた際の応答や生死の決定に重要な役割を果たしますが、生死の決定を調節する分子機構は不明でした。本研究では、SEC-MALSなどの分析手法を用いて、HSF1の会合状態の「質」が酸化環境により変化し、細胞運命の調節に関与することを見出しました。この発見は、ストレス応答を標的とした創薬や関連疾患研究への応用が期待されます。
慢性炎症の病態解明と治療創出をめざした研究活動を通じて蓄積された多くの知見を地域に役立てようとしています。具体的には、徳島県が克服すべき最重要課題である糖尿病や社会的解決要請の大きいがん・免疫疾患に関する研究成果について、一般市民や若手研究者に向けてセミナーや公開講座を開催するなど、人材育成・普及啓発に貢献しています。特に、「小学5・6年生 夏休み 科学実験体験プログラム(ひらめき☆ときめきサイエンス)」や「高校生向け遺伝子組換え実験講習会」は参加申し込みが殺到する好評企画です。
研究所では実用化が見込める研究に対して集中的支援を行うため、「リエゾンオフィス」を配置しています。藤井節郎記念医科学センター内には、基盤機器・消耗品利用システムを完備した「オープンラボ」を設置し、ベンチャー企業や若手研究者がいつでも研究を開始できるように充実させています。また多くの研究室が産学連携の共同研究を展開しており、その成果として研究所関連大学発ベンチャー企業が4社となり、精力的な活動を続けています。
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