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広島大学放射光科学研究所

Research Institute for Synchrotron Radiation Science, Hiroshima University
  • 第1部会
  • 共同利用・共同研究拠点

研究所・センターの概要


所長
島田 賢也
Shimada, Kenya
キーワード
放射光、超伝導、スピン、物性・生命異分野融合、高輝度小型放射光源、人材育成
住所
〒739-0046
広島県東広島市鏡山2−313
放射光を用いた物質科学研究の推進と人材育成

放射光科学研究所では、小型放射光源(HiSOR)が発生する紫外線~軟X線域の放射光を利用し、世界最先端の計測技術を用いて超伝導や電子スピンに由来する量子現象を研究する固体物理学および溶液中の生体高分子の立体構造を研究する物性・生命異分野融合領域の研究、ならびに高輝度小型放射光源や挿入型光源に関する研究を行っています。
また大学の中に置かれた研究拠点として、多様な文化や背景を持つ国内外の大学・研究機関の第一線の研究グループとともに研究課題に取り組み、互いに学ぶことのできる環境を活用した、学部・大学院生および若手研究者の育成を進めています。

令和6年度の研究活動内容及び成果


⽣理的環境下におけるパーキンソン病誘発物質の形成メカニズムの解明
―たんぱく質が原因となる神経変性疾患 抑制の応⽤に期待―

αシヌクレインは、パーキンソン病を誘発する“アミロイド線維”を形成するたんぱく質です。αシヌクレインが神経細胞のシナプス小胞膜と結合すると、らせん状のヘリックス構造をとります。しかし、パーキンソン病を発症する時は、αシヌクレインはシート状のストランド構造に変化してアミロイド線維となり、それがシナプス小胞膜表面に蓄積していきます(図1)。シナプス小胞膜表面のαシヌクレインの構造変化に、パーキンソン病の発症の秘密が隠されていると考えられますが、これまで生体環境下で細胞膜と結合したたんぱく質の構造を調べる方法がありませんでした。そこで本研究では、放射光を用いた真空紫外円二色性分光測定および直線二色性分光測定を行い、この謎の解明に挑みました。
本研究では、生理的環境に近い条件下で、シナプス模倣膜に結合したαシヌクレインの構造を、放射光実験と理論的な分子動力学シミュレーションを組み合わせることにより初めて明らかにしました(図2)。その結果、溶液中に塩がある場合には、膜と結合したαシヌクレインの構造が変化し、アミロイド線維を形成することがわかりました(図3)。今後、アミロイド線維の蓄積が原因と考えられるパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患の抑制や治療への応用が期待できます。

(図1)アミロイド線維が神経細胞のシナプス小胞膜表面で異常に蓄積し、パーキンソン病を誘発する。

(図1)アミロイド線維が神経細胞のシナプス小胞膜表面で異常に蓄積し、パーキンソン病を誘発する。

(図2)放射光を用いた真空紫外円二色性分光測定および直線二色性分光測定と理論計算を組み合わせて、生理的環境に近い条件でシナプス模倣膜と結合したαシヌクレインの構造を解明する。

(図2)放射光を用いた真空紫外円二色性分光測定および直線二色性分光測定と理論計算を組み合わせて、生理的環境に近い条件でシナプス模倣膜と結合したαシヌクレインの構造を解明する。

(図3)溶液中の塩の有無により、シナプス模倣膜に結合したαシヌクレイン(αS)の構造が変化する。

(図3)溶液中の塩の有無により、シナプス模倣膜に結合したαシヌクレイン(αS)の構造が変化する。

社会との連携


地域と連携したSDGs活動と人材育成への貢献

本研究所は、中国地域の小・中・高校の体験学習、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)研修などで多くの児童・生徒を受け入れ、VRによる施設見学を含む「VR先端科学体験セミナー」を提供しています(図1、2)。また加速器科学国際育成事業(KEK)による加速器科学分野の人材育成を進めています。さらに社会人向けの公開講座を広島駅前「広島大学きてみんさいラボ」で開催しています。研究と教育の社会連携が共感を呼び、地域と社会の好循環へと発展しています(図3)。

(図1)小学生、中学生、高校生の施設見学

(図1)小学生、中学生、高校生の施設見学

(図2)一般向公開講座、VR先端科学体験セミナー、SSH研修(発表の様子)

(図2)一般向公開講座、VR先端科学体験セミナー、SSH研修(発表の様子)

(図3)SDGs活動 地域からの学生支援コーナーと地域連携

(図3)SDGs活動 地域からの学生支援コーナーと地域連携

※1 : http://www.hsrc.hiroshima-u.ac.jp/outreach/activity.html#2024

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